「金はあるんだろ? 60を過ぎてるのに、なんでまだ働いてるの?」——アメリカの掲示板に、なかなか失礼な質問が投げ込まれた。ところが返ってきた答えは「働くのが好きだから」だけでは終わらない。会社を辞めた瞬間に医療保険が消えるという、アメリカならではの事情が次々と出てくる。
元スレッド:r/AskRedditより
※ アメリカの公的医療保険「メディケア」は原則65歳から。それまでは勤務先の団体保険に入るのが一般的で、退職すると自費で民間保険を買うことになる。日本のように全員がどこかの公的保険に入る仕組みではないため、「保険のために働く」という発想が普通に出てくる。
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
自分の知ってる範囲だと、みんな単純に働くのが好きなだけだよ。金があるから辞めるっていう発想がそもそも無い。仕事を取り上げたら、あの人たち三日で退屈して死にそうな顔になると思う。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
わかる。うちの父は連休が三日続いただけで、家中の電球を勝手に交換しはじめる。やることが無いんじゃなくて、頼まれごとが無い状態に耐えられないタイプなんだよね。3. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
自分も本人たちから同じことを言われた。理由を聞いても「暇だから」の一言で終わる。もっと深い事情があるのかと思って粘ってみたけど、本当にそれだけらしい。
4. 名無しのReddit住民
多くの人にとっては、民間の医療保険が高すぎるからだよ。メディケアの対象年齢に届くまでは、勤務先の団体保険に入っているのが一番安い。健康のためじゃなくて、保険証のために出勤してる。
5. 名無しのReddit住民(>>4への返信)
職場の年配の人はほぼ全員それ。民間の保険は目玉が飛び出る値段だし、かといって公的保険が始まる歳にはまだ届いてない。その数年をどう埋めるかっていう話なんだよ。
6. 名無しのReddit住民
家族全員分の医療保険に年6万ドル払うのが嫌だから働いてる。それだけの理由。会社が保険料の一部を負担してくれるうちは会社に残ったほうが安く済むんだから、そりゃ誰も辞めないよ。
※ 6万ドルは日本円でおよそ900万円(1ドル150円換算)。アメリカの民間医療保険は勤務先が保険料の一部を負担する形が主流で、退職して自分で全額を払うと家族分ではかなりの額になる。金額は本人の申告で、加入内容や州によって大きく変わる。
7. 名無しのReddit住民
73歳のうちの父の場合。仕事を辞めたら、朝から晩までYouTubeとFOXニュースを見て過ごすことになる。それが目に見えてるから、家族の誰も引退を勧めない。本人も薄々気づいてると思う。
※ FOXニュースはアメリカの保守系ケーブルニュース局。「一日中つけっぱなしにしている高齢の親」の象徴として、ネット上でよくネタにされる。
8. 名無しのReddit住民
父はとっくに引退できるだけの蓄えがあるけど、車をいじるのが本当に好きで、体もまだ全然動く。だから週3日だけ整備工場に出て、残りの2日はうちの子どもたちと遊んでる。理想的な配分だと思ってるよ。
9. 名無しのReddit住民
引退したブーマー本人じゃないけど、生きる目的って想像以上に大事だと思う。自分が何者かをずっとキャリアで説明してきた人ほど、名刺を手放した日に、自分を説明する言葉が一つも残らない。
10. 名無しのReddit住民
自分はX世代。これまで一緒に働いてきた人で、65歳できっぱり引退してソファ暮らしになった人は、だいたい5年以内に亡くなるか大きな病気をしてる。
仕事って想像以上に人を支えてるんだよ。上の世代は会社の外に趣味も友達も作ってこなかった人が多い。掃除係から入って同じ会社で上がっていって、一番の親友は隣の席の同僚、みたいな時代を生きてる。だから仕事が無くなると、日頃ネタにしてる家族しか手元に残らない。旅行や海外を見て回ることに、下の世代ほど価値を置かない人が多いのもあると思う。
もちろん例外はいくらでもいるし、これがざっくりした一般化なのは自分でも分かってる。
11. 名無しのReddit住民(>>10への返信)
その一般化はさすがに乱暴じゃないかな。うちの母は60で辞めてから語学教室と山歩きの会に入って、今のほうが人付き合いは多い。引退で崩れるのは仕事が無くなるせいじゃなくて、予定表が真っ白になるせいだと思う。
12. 名無しのReddit住民
信じてもらえないかもしれないけど、自分の仕事が普通に好きな人間もいるんだよ。毎朝「行きたくない」と思いながら通ってる前提で質問されると、ちょっと悲しい気持ちになる。
13. 名無しのReddit住民(>>12への返信)
楽しい仕事っていうのが、この世に実在するらしいんだよな。噂には聞く。自分は働きはじめて20年、まだ一度も遭遇したことがないけど。
14. 名無しのReddit住民
年金が満額出るのが67歳からだからだよ。なんでそこを飛ばして「金はあるのに」って話になるんだ。60から67までの数年、みんな何で食えばいいと思ってるんだろう。
※ アメリカの公的年金(ソーシャル・セキュリティ)は、生まれた年によって満額受給の開始年齢が違い、1960年以降生まれは67歳。62歳から早めに受け取ることもできるが、その分だけ一生涯もらえる額が減る。日本の公的年金とは制度も金額の考え方も別物。
15. 名無しのReddit住民(>>14への返信)
国によって全然違うから話が噛み合わないんだよね。ここは書き込んでる人の国がバラバラだから、「年金」の一語で通じると思わないほうがいい。開始年齢も金額も、隣の国と比べただけで別の惑星の話になる。
16. 名無しのReddit住民
57歳、X世代の後ろのほうだ。6月に引退して、その足でパートの仕事を探しはじめた。金じゃなくて、時間割が要るんだよ。何時に家を出るかが決まってないと、一日がまるごと溶ける。
働かなきゃいけないから働くのと、働きたいから働くのは、やってみたらまったく別物だった。
17. 名無しのReddit住民
妻と自分は40代後半で、もう働かなくても暮らせる。残ってる借金は住宅ローンだけ、しかも金利が3%だから繰り上げ返済もしていない。
それでも自分は救急外来に、シフトが空いてる日だけ入る形で通ってる。人を助けられるし、頭も体もちゃんと使うし、チームの一員でいられる。何より勤務日を自分で決められるのが大きい。夏は週12時間くらい、冬は外でやることが無いから週24〜36時間。旅行に行きたい月は、その週にシフトを入れなければいいだけ。
なんで引退してからも働くのかって? 働かなきゃいけない側から、働きたい側に線を越えると、同じ仕事が信じられないくらい楽しくなるからだよ。スケジュールに怯えなくていいし、怒られる心配もしなくていいし、誰にどう思われようが本当にどうでもいい。しかも周りの態度まで変わる。最高だよ。
※ アメリカの医療現場には「PRN」と呼ばれる非常勤の枠がある。決まったシフトを持たず、人手が要る日にだけ入る働き方で、日本の登録制・スポット勤務に近い。この人が言っているのもその形。
18. 名無しのReddit住民(>>17への返信)
「働かなきゃいけない側から働きたい側に線を越える」ってフレーズ、今日いちばん刺さった。同じ職場、同じ業務でも、辞めても困らないと分かってる人の顔つきは本当に違うんだよな。うらやましいというより、単純に眩しい。
19. 名無しのReddit住民
忙しくしてるのが単純に性に合ってる人もいるし、体を動かし続けたいだけの人もいる。ただ、その裏で普通に生活費が足りなくて続けてる人も同じくらいいる。全部まとめて「金はあるのに」で括られるのが一番きつい。
20. 名無しのReddit住民
うちの親は60で辞めるつもりで計画を立ててたけど、相場が落ちた年に401(k)の残高を見て、そのまま計画を三年後ろにずらした。何歳で辞めるかを自分で決めてるようでいて、実際は辞める年の相場に決められてるんだよ。あの感じは若い世代にもそっくり回ってくると思う。
※ 401(k)はアメリカの会社員が老後資金を貯める主流の口座で、自分で運用先を選ぶ点は日本の確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)に近い。受け取れる額が相場に左右されるため、「引退する年の相場」で老後の見通しが変わってしまう。会社が終身で支給する昔ながらの年金は、いまでは一部の職種にしか残っていない。
21. 名無しのReddit住民
働きたいからに決まってるだろ。じっと座って過ごすのなんて、年を取ってからいくらでもできる。こっちはまだ65なんだよ。
22. 名無しのReddit住民
『スポンジ・ボブ』で、カーニさんが大金を手にして引退する回があるだろ。やりたかったことを全部お昼までに終わらせてしまうやつ。あれがうちの父だよ。仕事しか知らないんだ。憎めないんだけどね。
※ 『スポンジ・ボブ』はアメリカの人気アニメで、日本でも放送されている。カーニさん(Mr. Krabs)は主人公が働くハンバーガー店の、金にがめついカニの店長。
23. 名無しのReddit住民(>>22への返信)
お昼までに全部終わる、というのが妙にリアルで笑えない。実際、引退した人に何をして過ごしてるか聞くと、午前中の予定しか出てこないことがけっこうある。午後の話をしてくれる人は、だいたい何か新しく始めた人だ。
24. 名無しのReddit住民
X世代ももう60を超えはじめてるんだけど。それとも、年寄りは全員まとめてブーマー呼ばわりする方式にしたのか。だとしたら、そのうち全員がブーマーになるぞ。
※ ベビーブーマー世代はおおむね1946〜64年生まれ、その次のX世代は1960年代半ば〜80年頃の生まれ。日本の団塊の世代(1947〜49年生まれ)よりずっと幅が広く、人口の層としての性格も違う。ネット上では世代の呼び名というより「話の通じない年長者」を指す言葉として使われることも多い。
25. 名無しのReddit住民(>>24への返信)
もう世代の名前じゃなくて、態度の名前になってるよね。25歳でも駐車場の停め方に文句を言い出した瞬間にブーマー扱いされる。言われた側からすると生年月日は関係ないから、反論のしようもない。
26. 名無しのReddit住民
ブーマーじゃないけど、ここには「若い世代のために道を空ける義務がある」みたいな妙な空気があるよね。何歳だろうと、働きたいなら働いていいはずだ。若い世代は自分たちが無能だのやる気がないだのと一括りにされると本気で怒るのに、働き続けてる年長者のことは平気で一括りにする。
質問への答えとしては、自分の知ってる年配の働き手はみんな何十年も同じ分野にいる人たちだ。休暇もちゃんと取るし、子や孫の学費も出すし、結婚式の費用も出す。実力があるし、頭を使えることと人と関われることが単純に楽しいから続けてる。歳を取るほどこの二つは効いてくるんだよ。
ゴルフにも、家でぼんやり過ごすことにも興味がない。若いうちや、面白いと思える仕事に就けたことがない人には想像しづらいと思う——それ自体は本当にきついことだけど。人生を注いだ分野で頼りにされて、感謝されて、役に立てる。人間が本当に上手くなれることなんて数えるほどしかないから、最後まで手放しがたいんだよ。
27. 名無しのReddit住民(>>26への返信)
言いたいことは分かるし、権利の話としては完全に同意する。ただ、上の役職が十年まるごと空かない現場を実際に見ると、若い側が苛立つ理由もちょっとは汲んでほしい。恨みたいわけじゃなくて、上が詰まると下も全部詰まるってだけの話なんだよ。
28. 名無しのReddit住民
ブーマーはちゃんと出勤してくる。うちの職場は年齢層がバラバラで、自分はミレニアル世代なんだけど、30歳未満の連中に安定して来てもらうのが本当に難しい。55歳以上の人は、30歳未満3人分は働いてるよ。
29. 名無しのReddit住民
祖母は1989年に引退した。それから人付き合いをやめて、一日中ラジオの政治番組を聞くだけの生活になって、何年かかけてはっきり衰えていった。
きっぱり全部辞めるのは、人と関わり続ける算段と、頭を動かし続ける算段の両方が無いと、けっこう怖いことだと思う。
30. 名無しのReddit住民
今は引退してるけど、66まで働いた。2歳下の妻の医療保険を続けるためだった。妻は22か月、がんと闘った。
あの2年、会社を辞めるという選択肢は最初から一つも無かったよ。
まとめ
集まった答えは、ざっくり三つに割れていた。ひとつは「仕事が好きだから」。ひとつは「辞めても何もすることがないから」。そしてもうひとつが、日本の読者にはいちばん見えにくい「医療保険を手放せないから」だ。アメリカでは公的医療保険が65歳から、公的年金が満額出るのはいまの世代で67歳から。その手前の数年を勤務先の保険でしのぐ人が少なくない。外から見ると「金はあるのに働いている」ように映る人の中に、実際は保険証のために出勤している人が確実に混ざっている。
面白いのは、質問の前提そのものに反論する声がかなり多かったことだ。働きたいから働いているだけなのに、なぜ道を空けろと言われるのか——という言い分と、上が詰まれば下も全部詰まるという言い分。どちらも切実で、どちらかが間違っているという話でもない。日本でも定年の延長や再雇用がすっかり当たり前になって、同じ職場に60代・70代がいる光景は珍しくなくなった。制度の中身はまるで違うのに、行き着く議論は驚くほど似ている。
皆さんは、お金の心配が完全に消えたとして、それでも仕事を続けますか?

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