「中世の戦場のど真ん中に、巨大スピーカーを積んだ戦車ごと放り込まれた。目の前の軍勢は、録音された音というものを人生で一度も聞いたことがない。さあ、何を大音量で流す?」——r/AskReddit に立ったこの質問に、2000件を超える答えが集まった。好きな曲を挙げて終わりのスレかと思いきや、途中から「そもそも音楽である必要がない」「歌詞は一言も通じないんだから意味で怖がらせるのは無理だ」と、妙に本気の作戦会議が始まっていた。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
ミック・ゴードンが手がけた『DOOM』のサントラなら何でもいい。特に「The Only Thing They Fear Is You」だ。あれは音楽というより、地面の下から何かが這い上がってくる音だよ。歪んだギターと合唱が同時に襲ってくるから、初めて聞いた人間は音の出どころを探す前に腰が抜ける。
※ ミック・ゴードン=ゲーム音楽の作曲家。重機の駆動音のような重低音と極端に歪ませたギターを重ねる作風で知られ、『DOOM』(2016年)とその続編『DOOM Eternal』(2020年)を担当した。「The Only Thing They Fear Is You」は後者を代表する一曲。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
ギターの歪みって、一度も聞いたことがない耳には「鋼鉄が悲鳴を上げてる音」にしか聞こえないと思うんだよな。中世の人間が知ってる一番でかい音って、たぶん雷と鐘だろ。そのどちらにも当てはまらない爆音が延々鳴り続けるって、相当おかしい体験のはずだ。
3. 名無しのReddit住民
みんな変わった曲を挙げすぎ。相手は録音された音そのものを一度も聞いたことがないんだぞ。だったら小細工はいらない。とんでもない残響をかけた人間の声と、ラッパのファンファーレを流せばいい。世界観がまるごと信仰でできている相手には、神への恐怖をぶつけるのが一番効く。神を名乗って、ついでに遠くから大砲を数発撃ってみせろ。それだけで勝てる。
4. 名無しのReddit住民(>>3への返信)
いや、ラッパは逆効果だと思う。中世の戦場なんて角笛もラッパも鳴りっぱなしだから、あの音自体には慣れてるはずだ。俺なら曲は流さない。黒板を爪で引っ掻く音だけを延々ループさせる。性格が悪いのは自覚してるけど、あれで正気を保てるやつはそんなにいないだろ。
5. 名無しのReddit住民(>>3への返信)
方向性としては同意する。大聖堂で録音した聖歌隊のレクイエムを、地鳴りみたいな低音と一緒に流したい。歌詞の意味なんて分からなくていいんだ。裁きの日が来て自分たちを迎えに来た、とさえ思わせられたら、その時点で戦意なんて残らない。
6. 名無しのReddit住民
曲じゃなくていい。ただひたすら長い一音を鳴らし続けるだけでいい。低くて、途切れなくて、いつ終わるのか分からない音。長く伸ばせば伸ばすほど、その場の空気が耐えられなくなっていく。人間は終わりの見えない音に一番弱いんだよ。
7. 名無しのReddit住民
「ワルキューレの騎行」だろ。巨大な鉄の塊からあれが流れてくるところを想像してみてくれ。何が起きているのか理解する手がかりが一つもないまま、やたら勇壮な音楽だけが空から降ってくるわけだ。あの状況に放り込まれた側は、もう笑うしかない。
※「ワルキューレの騎行」=ワーグナーの楽劇『ワルキューレ』第3幕への前奏曲。映画『地獄の黙示録』(1979年)で、ヘリコプター部隊が村を襲撃する場面に大音量で流れたことから、空からの攻撃を象徴する曲として定着した。
8. 名無しのReddit住民(>>7への返信)
それ、相手より先にこっちの気分が上がりすぎるやつだ。しかもあの曲は荘厳といえば荘厳だから、下手をすると天使のラッパだと受け取られて敵の士気まで上がりかねない。怖がらせたいなら、美しい方向に振っちゃだめだと思う。
9. 名無しのReddit住民
サバトンの「Winged Hussars」一択だ。サビの「そして翼の騎兵たちが到着した」のところで、丘を越えて戦車が姿を現す。相手からすれば、歌われている内容そのままの光景が目の前で起きることになる。言葉が分からなくても、とんでもないものが来たことだけは確実に伝わる。
※ サバトン=実在の戦史ばかりを題材にするスウェーデンのメタルバンド。「Winged Hussars」は1683年のウィーン包囲戦で、ポーランドの重装騎兵が救援に駆けつけた場面を歌ったもの。ライブでは観客が例のサビを合唱するのが恒例になっている。
10. 名無しのReddit住民(>>9への返信)
サバトンで行くなら「Steel Commanders」のほうが皮肉が効いてる。戦車に乗って戦車の歌を流すわけだからな。中世の連中には何の曲かも伝わらないのに、こっちだけがそのおかしさを噛みしめてる状況、けっこう好きだよ。※「Steel Commanders」=同じくサバトンの曲で、戦車部隊を正面から歌い上げた内容。
11. 名無しのReddit住民
俺が持っていくのは音楽ですらない。アステカの死の笛の音を、何時間もループさせただけの音源だ。あれは人間の悲鳴をそのまま増幅したような音で、何の音なのかを知らなくても背骨が冷える。旋律も歌詞もいらない。音の質だけで人は怯える。
※ アステカの死の笛=メソアメリカの遺跡から出土している土製の笛。吹くと人間の叫び声そっくりの音が出る。儀式に使われたと考えられているが、本来の用途には今も定説がない。
12. 名無しのReddit住民
歌詞の内容が怖い曲を挙げてる人が多すぎる。あの時代の人間に現代英語は一言も届かないんだから、歌詞なんて全部ただの呪文として処理されて終わりだぞ。向こうに残るのは音量と音色だけだ。だったら最初から言葉の乗ってない音を選んだほうが早い。
13. 名無しのReddit住民
ラムシュタインの「Du Hast」。ドイツ語の巻き舌が延々続くうえに、リズムが機械みたいに正確なんだ。人の声のはずなのに人間味がまったくない。あれを聞かされたら、鉄の箱の中に何か別の生き物が入っていると思われても仕方がない。
※ ラムシュタイン=ドイツのメタルバンド。低く唸るようなドイツ語のボーカルと、工業機械を思わせる重いリズムが特徴。「Du Hast」(1997年)は代表曲で、炎を大量に使うライブ演出でも知られる。
14. 名無しのReddit住民
「Hell March」。行進曲のかたちをしているのに、鳴っている音は全部が金属と機械なんだよ。軍勢の行進として認識できるぎりぎりの形を保ったまま、中身だけが異物になってる。だから相手は「軍隊が来た」と理解した上で怖がることになる。理解できてしまうぶん、たちが悪い。
※「Hell March」=1996年のリアルタイム戦略ゲーム『コマンド&コンカー レッドアラート』の主題曲。フランク・クレパッキ作曲で、重いギターに行進の足音を重ねた構成で、シリーズの顔として続編でも繰り返し使われている。
15. 名無しのReddit住民
チャイコフスキーの序曲『1812年』。ただし本物の大砲を実際に撃つ演奏に限る。録音で代用したやつじゃだめだ。終盤で砲声と鐘が重なって畳みかけてくるあの数十秒は、慣れている現代人が聞いても身体が跳ねる。中世の野原でやったら、神が空から砲撃してきたとしか思われないだろ。
※ 序曲『1812年』=ナポレオン軍の敗走を題材にしたチャイコフスキーの管弦楽曲(1880年作曲)。楽譜に大砲が指定されており、屋外での公演では実際に空砲を撃って演奏されることがある。
16. 名無しのReddit住民(>>15への返信)
自分も同じ曲を書こうとして途中でやめた。あれ、後半から完全に勝利の音楽になるんだよな。撃たれてる側じゃなくて撃ってる側が気持ちよくなる曲だから、下手すると敵味方まとめて士気が上がって、余計に激しい戦いになる気がする。
17. 名無しのReddit住民
ブラック・サバスの「Black Sabbath」。バンド名と同じ曲名のやつだ。あの冒頭で鳴っているのは、西洋の教会音楽が何百年も不吉な響きとして避けてきた音の組み合わせそのものなんだよ。つまりあの時代の耳には、理屈抜きで「近づいてはいけない音だ」と刻まれている。狙って当てにいくなら、これ以上の一曲はない。
※ ブラック・サバス=1970年にデビューしたイギリスのバンドで、ヘヴィメタルの原型を作ったとされる。同名のデビュー曲の冒頭は、西洋音楽で長く不吉な響きとして避けられ、のちに「音楽における悪魔」と呼ばれるようになった三全音(トライトーン)を軸に組み立てられている。
18. 名無しのReddit住民(>>17への返信)
同じバンドなら「War Pigs」も捨てがたい。空襲警報みたいなうねりのあとで、いきなり「将軍たちが群れをなして集まる」という絶叫が来るやつ。歌詞の中身は通じなくても、あの叫び方だけで誰かを名指しで責めていることは伝わると思う。※「War Pigs」=ブラック・サバスの1970年の曲。戦争を起こす側の人間を糾弾する内容で、冒頭のこの一節は英語圏では合唱の定番になっている。
19. 名無しのReddit住民
スレイヤーの「Raining Blood」。曲の入りが雨の音なんだけど、その雨がだんだん近づいてきて、限界まで溜めたところで全部が一気に崩れ落ちる。血の雨が降るという歌詞の意味を知らなくても、空から何かが降ってくる音だということは全員が理解するはずだ。
※ スレイヤー=1981年結成のアメリカのスラッシュメタルバンド。「Raining Blood」(1986年)は雨音から始まり、猛烈な速さの演奏に雪崩れ込む構成で、この分野を代表する一曲とされる。
20. 名無しのReddit住民
レッド・ツェッペリンの「移民の歌」。冒頭の雄叫びだけで用は足りる。歌っている中身も北の海から攻めてくる話だから、時代考証としてもそれほど間違ってない。鉄の塊から突然あの叫びが降ってきたら、自分たちが何者かを説明する必要すらなくなる。
※「移民の歌」=レッド・ツェッペリンが1970年に発表した曲。原題は “Immigrant Song”。アイスランド公演での体験から生まれた曲で、ヴァイキングの襲来を歌っている。冒頭の「アー、アアー」という雄叫びが特に有名。
21. 名無しのReddit住民(>>20への返信)
それ、相手が北欧側だったら軍歌として喜ばれるやつでは。丘の上から自分たちの武勇伝が大音量で流れてきたら、怖がるどころか隊列を整えて突っ込んでくると思う。誰と戦うのかを先に確認したほうがいい。
22. 名無しのReddit住民
AC/DCの「Hells Bells」。あれは冒頭が鐘の音から始まる。中世で鐘が鳴るといえば、教会の合図か、誰かが死んだ知らせのどちらかだ。その鐘が地平線の彼方から一定の間隔で延々と鳴り続けて、そこにギターが被さってくる。こっちが何も説明しなくていいのが強い。
※「Hells Bells」=AC/DCが1980年に発表した曲。前任ボーカルの死後に作られたアルバムの1曲目で、重い鐘の音が数十秒続いたあとに演奏が始まる。
23. 名無しのReddit住民(>>22への返信)
AC/DCなら「Thunderstruck」のほうだと思う。出だしのギターが同じ音形をひたすら刻み続けて、そこに「サンダー」の掛け声が重なるだろ。雷は当時の人にとって神の怒りそのものなんだから、その一語だけ覚えて帰ってもらえばいい。
24. 名無しのReddit住民
メタリカの「For Whom the Bell Tolls」。ただし普通の音源じゃなくて、オーケストラと共演したライブ版がいい。鐘と弦楽器と、地面を這うように鳴るベースが同時に来る。あの重さは、生の楽器の音しか知らない耳にとっては単純に説明がつかないと思う。
※「For Whom the Bell Tolls」=メタリカの1984年の曲。曲名はヘミングウェイの小説『誰がために鐘は鳴る』から取られている。ここで挙がっているのは、サンフランシスコ交響楽団と共演した1999年のライブ盤『S&M』に収録された版。
25. 名無しのReddit住民
ペンデレツキの『広島の犠牲者に捧げる哀歌』。52台の弦楽器がばらばらの高さで軋み続けるだけで、旋律らしい旋律が一つも出てこない曲だ。ホラー映画がよく真似する音の原型がこれなんだよ。中世どころか、現代人でも途中で部屋を出たくなる。
※『広島の犠牲者に捧げる哀歌』=ポーランドの作曲家クシシュトフ・ペンデレツキが1960年に発表した弦楽曲。多数の弦楽器を極端に近い音程で同時に鳴らす手法が使われ、後のホラー映画音楽に大きな影響を与えた。
26. 名無しのReddit住民
ここまで読んだけど、みんな激しいメタルとかゲームのサントラばかり挙げてるな。実戦を経験したことがないのが丸わかりだよ。自分が派遣されていたころ、部隊が一番盛り上がったのは、とことん甘くて明るい女性ボーカルのポップスだった。「Call Me Maybe」とか「TiK ToK」とか、ああいうやつ。人間の神経は、怖い音より場違いな明るさのほうに持っていかれる。
※「Call Me Maybe」=カーリー・レイ・ジェプセンが2012年に世界的に流行させたポップス。「TiK ToK」はケシャの2009年のデビュー曲。どちらも徹底して軽快で明るい曲調で知られる。
27. 名無しのReddit住民(>>26への返信)
それはそれで正しいと思う。というか中世の相手にこそ効くんじゃないか。荘厳な音楽なら神か悪魔かのどちらかに当てはめて処理できるけど、脈絡なく陽気な女性の歌声が鉄の箱から流れてきたら、当てはめる枠がどこにもない。理解できないもののほうが人は怖い。
28. 名無しのReddit住民
ダルードの「Sandstorm」。あの繰り返しを初めて聞かされたら、大気そのものが自分の生き方について怒鳴ってきていると思うはずだ。音が上がりきるところで全員が空を見上げて、何も見つからないまま逃げ出す。
※「Sandstorm」=フィンランドのDJダルードが1999年に発表したトランス曲。同じ電子音を高速で刻み続ける構成。動画サイトでは「この曲名は?」と聞かれたら必ずこの曲名で答える、という定番のいたずらでも有名。
29. 名無しのReddit住民(>>28への返信)
ネタ寄りでいくなら「Baby Shark」を止めずに流し続けるのが最強だと思う。あれは音量も音圧も関係なく、三日目には全員が自分の意思を放棄する。Nyan Cat でも結果は同じだ。武器としては死の笛より現実的かもしれない。※「Baby Shark」=サメの家族を短い節でひたすら繰り返す子ども向けの歌。動画の再生回数が世界最多級になったことで知られる。Nyan Cat は、虹の軌跡を引く猫が同じ電子音のループに乗って飛び続けるネット動画。
30. 名無しのReddit住民
ブルー・オイスター・カルトの「Godzilla」。ギターの重い刻みが、完全に巨大な何かが歩いてくる足音なんだよ。丘の向こうからあれが聞こえてきたら、鉄の塊が姿を現す前に「そういうものが来る」と全員が悟る。名前の意味を知らなくても、こっちが何を連れてきたかだけはきっちり伝わる。
※「Godzilla」=アメリカのロックバンド、ブルー・オイスター・カルトが1977年に発表した曲。日本の怪獣映画のゴジラをそのまま題材にしており、重く単純なリフの繰り返しで巨体の歩みを表現している。
まとめ
スレッドは途中からきれいに二つに割れていた。片方は「とにかく一番激しい曲をぶつける」派。もう片方は「相手は録音された音そのものを知らないんだから、そもそも音楽である必要がない」派で、票を集めていたのは後者だった。歌詞が一言も通じないという前提に立った瞬間、選ぶ基準が曲の意味から音の質感へ移る。だから最後まで残ったのは、死の笛、終わらない一音、教会が避けてきた不協和音、鐘、雷鳴、砲声といった、言葉を経由せずに直接届く音ばかりだった。
面白いのは、その正反対にあるはずの「Baby Shark」や能天気なポップスが、同じくらい支持されていたことだ。荘厳な音なら神か悪魔かのどちらかに当てはめて処理できるけれど、場違いに明るい音には当てはめる枠がない。恐怖と意味不明さは、思っているよりずっと近い場所にある。皆さんなら、丘の上の戦車から何を流しますか?

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