外から見ればまだ普通に営業しているのに、中にいる人間だけが「これ、もう長くないぞ」と気づいている業界はどこか。そんな質問がRedditに投げられ、翻訳、Web制作、街の薬局、プログラマと、次々に現場の人が出てきて内情を語り出した。面白いのは、業界名が挙がるたびに「それ10年前から死ぬ死ぬ言われてるよね」というツッコミが必ず飛んでくること。悲観と冷静さが入り混じった、妙に生々しいスレッドになっていた。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
翻訳と通訳。外から見ると「AIで便利になったね」で終わる話なんだけど、中にいると単価の底が抜けてるのがわかる。値段を下げないと声がかからないし、下げたら生活が回らない。その板挟みのままみんな静かに廃業していってる。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
それってAIに全部持っていかれるってこと?いつかはそうなるとは思ってたけど、想像してたより十年くらい早くない?3. 名無しのReddit住民(>>2への返信)
法律絡みの案件や国際交渉で、そのまま任せられる精度かと言われたらまだ全然。誤訳ひとつで契約がひっくり返る場面に機械を置く度胸のある会社、そんなに多くないと思うよ。4. 名無しのReddit住民(>>2への返信)
リアルタイム翻訳の機械はもう普通に出回ってる。スマホでもできるし、補聴器にその機能が乗ってるやつもある。お互いのイヤホン同士が通信して会話できるものまである。今いちばん足を引っ張ってるのはソフトじゃなくてマイクの性能のほうだよ。5. 名無しのReddit住民(>>2への返信)
音声起こしを仕事にしてる立場から言うと、置き換わりはもう始まってる。ただ訛りの強い人や複数人が同時に喋る音声はいまだにボロボロ。最近うちに回ってくるのは、機械が処理しきれなかったファイルか、音声データを外の会社に渡したくない案件くらいになった。誰でも文字起こしを使えるようになったのは素晴らしいと思う。自分の収入にとって素晴らしいかは別の話だけど。6. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
数百人規模の倉庫で働いてたころ、社内でよく使われる4言語ぶんの通訳を24時間常駐させてた。費用はとんでもなかったけど、労災の場面で訳を間違えて訴えられるほうが高くつく、という判断だったらしい。それが翻訳デバイスと自動翻訳に置き換わって、今は法的な書類にサインしてもらうときだけ人を呼んでる。
7. 名無しのReddit住民
翻訳の見積もりを一度でも見たことがあれば納得すると思う。単語いくらの世界で、しかも最低受注額がある。経理の側から見たら真っ先に赤ペンを入れたくなる行なんだよ、あそこは。
※ 英語圏の翻訳料金は「1単語あたり◯セント」に最低受注額を足す組み立てが一般的。日本の「原稿用紙◯枚でいくら」に近い感覚。
8. 名無しのReddit住民
うちの翻訳チームは断固としてAIを使いたがらない。自分たちの食い扶持がかかってるんだから気持ちはよくわかる。ただその横で、社内で回しきれないぶんを外に出して莫大な金を払ってるのは、さすがに筋が通ってないと思うんだよな。社内の仕事は守ったうえで、どうせ外注に出す予定だったところだけ機械に回せばいいのに。
9. 名無しのReddit住民
手話通訳まで機械に置き換わるのかは、正直まだ想像がつかない。こっちだと通訳を用意しないこと自体が法律違反になる場面があるから、そこは単価が落ちにくい領域として残る気がしてる。
※ ASL(アメリカ手話)は英語とは文法体系の異なる独立した言語。障害者への差別を禁じるADA(障害を持つアメリカ人法)のもと、公的機関や一定規模の事業者には手話通訳などの配慮が求められる。
10. 名無しのReddit住民
扱う中身にもよる。国外のデータセンターに投げた瞬間に契約違反になる資料なんて普通にあるからね。そこはどれだけ機械が賢くなっても、最後まで人間が抱え続けるしかない領域だと思う。
11. 名無しのReddit住民
翻訳が消えるって話、機械翻訳が実用化されたときも同じ勢いで言われてなかった?あのときも「10年で通訳という職業はなくなる」って散々聞かされて、結局まだいる。今回は本当に違うのかもしれないけど、その「今回は違う」を人生で何回か聞いてる気もするんだよね。
12. 名無しのReddit住民
Web制作。グラフィックデザインもすぐ後ろに並んでる。派手に倒れるんじゃなくて、単価がじりじり下がって、気づいたときには誰も食えなくなってるタイプの終わり方だと思う。
13. 名無しのReddit住民(>>12への返信)
グラフィックデザインは10年前にはもう席を立ちかけてたよ。素材サイトとテンプレートが出回った時点で、街の看板屋が請けてた仕事の半分は消えてる。今さらAIのせいにされてるのは、むしろ気づかれるのが遅すぎたって感じ。
14. 名無しのReddit住民
近所の個人経営のレストランが、そろって妙な広告を出すようになった。指が6本あったり、湯気の立ち方が物理的におかしかったり。おかげで、どの店に金を落とさないかの判断だけはやたら簡単になった。
15. 名無しのReddit住民
イラストも同じ流れ。きついのは腕を抜かれたことじゃなくて、発注する側が「別にそこまでの質はいらなかったんだな」と気づいてしまったこと。プロが不要になったというより、そもそもプロに頼む必要のない仕事だったと言われてるようで、地味に効く。
16. 名無しのReddit住民
プログラマと開発者。職場で新しい仕組みを導入したとき、担当者が改善案を募ってたから気づいた点をいくつか挙げたんだ。そうしたら「コードはほとんどAIが書いてます」と返ってきて言葉に詰まった。数学と情報系をやってきた人間としては、これはまずいことになる予感しかしない。
17. 名無しのReddit住民(>>16への返信)
でも結局どこかの時点で、人間が呼び戻されて直す羽目になるんじゃないの。中身を誰も説明できないコードが本番で動いてる状態って、長い目で見たらいちばん高くつくやつだと思う。18. 名無しのReddit住民(>>16への返信)
20年前に「開発なんて全部海外に出せば済む」って言われてたときと空気がそっくりなんだよな。あのときも一回まとめて外に出して、痛い目を見て、半分くらい戻ってきた。今回も似た道を通る気がしてる。
19. 名無しのReddit住民
街の薬局。処方箋の償還額が低すぎて、薬を出せば出すほど赤字が積み上がる構造になってる。大手チェーンの閉店が続いてるのも、客が減ったからというより単純に算数が合わなくなったからだと思うよ。
※ アメリカでは保険会社と薬局の間に立つPBM(薬剤給付管理会社)が薬の価格と薬局への支払額を決めており、薬局側の取り分が圧迫されていると長く問題視されている。大手ドラッグストアチェーンの相次ぐ閉店も、この文脈で語られることが多い。
20. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
田舎だと薬局が一軒閉まるだけで、次に近い店まで車で小一時間ということになる。処方箋を受け取りに行くだけで半日つぶれる生活、都市部の人には想像しにくいと思うけど普通に現実として起きてる。
21. 名無しのReddit住民
こっちの医療そのもの。関係者全員が「これは持続可能じゃない」と言い続けてるのに、それでも毎年ちゃんと回ってるのが逆に不気味なんだよ。
22. 名無しのReddit住民(>>21への返信)
でもあそこ、雇用も利益も伸び続けてる数少ない業界のひとつじゃない?崩壊寸前の業界って、普通は人も金も減っていくものだと思うんだけど。※ アメリカの医療は公的保険が高齢者や低所得者向けに限られ、大半を民間保険が担う。費用の高さは常に批判される一方で、産業としての規模と雇用は伸び続けている、という指摘。
23. 名無しのReddit住民
オフィスビルを持ってる側はかなりきついはず。うちも契約更新のタイミングで3フロアから1フロアに減らして、それでもまだ席が余ってる。あの空いた面積は、誰かが家賃を払い続ける前提で値段がついてるわけで、その前提のほうが静かに崩れてる。
※ 在宅勤務の定着でオフィス需要が縮み、アメリカでは商業用不動産の空室と、それを担保にした融資の行方が継続的な懸念材料として語られている。
24. 名無しのReddit住民
コールセンター。一次対応はほぼ自動になって、人間に繋がる頃には客がすでに怒り狂ってる。残った担当者はひたすら怒鳴られる係をやらされてるから、仕事がなくなるより先に人がいなくなるほうが早いと思う。
25. 名無しのReddit住民
馬車用の鞭を作ってる業界。外の人はまだ気づいてないかもしれないけど、あそこはもう相当まずいことになってるらしいよ。
※「buggy whip(馬車の鞭)」は英語圏で「時代に取り残された産業」の代名詞。自動車の普及で消えた商売の代表例として引き合いに出される、定番の言い回し。
26. 名無しのReddit住民(>>25への返信)
その断言は、世の中のいろんな寝室を一通り見て回ってから言ったほうがいい。あの業界の需要は形を変えて、なかなかしぶとく生き残ってるから。
27. 名無しのReddit住民
キヌアの市場が崩壊寸前だ。確かな筋から聞いた話だと、来期の供給網のショックで一気に来るらしい。農家は畑を手放すことになるが、流通に噛んでる連中だけはしこたま儲ける流れになる。
※ キヌアは南米アンデス原産の雑穀で、健康志向の高まりとともに欧米のスーパーに並ぶようになった食材。深刻な業界話が続いたところに投下された、それらしい口調のネタ書き込み。
28. 名無しのReddit住民(>>27への返信)
うちに500グラムの袋がひとつある。供給が枯れるまで寝かせておけば、俺は一儲けできるという理解でいいのか?29. 名無しのReddit住民(>>28への返信)
読み飛ばして500ポンド持ってるのかと思って、それはさすがにキヌアが多すぎるだろって本気で心配してしまった。そういえば先週スーパーで見つからなかったんだけど、まさかもう始まってる?※ 500ポンドは約227キロ。
30. 名無しのReddit住民
この質問、3日に一度は立ってない?しかも返ってくる答えも毎回だいたい同じ顔ぶれ。そのうち誰かが予測市場のアルゴリズムを育てるためにデータを集めてるんじゃないかと、本気で疑い始めてる。
※ r/AskReddit では似た質問が何度も立つことへの自虐が定番ネタ。近年は「AIの学習データを集めてるだけでは」と茶化す流れも多い。
まとめ
挙がった業界を並べてみると、ひとつの共通点が浮かぶ。どれも需要そのものが消えた業界ではなく、その仕事にお金を払う理由が消えかけている業界だということ。翻訳もWeb制作もイラストもコードも、必要とされなくなったわけじゃない。ただ「七割の出来で足りる場面が想像以上に多かった」という事実を、発注する側に気づかれてしまった。
一方で、街の薬局やアメリカの医療のように、需要は増える一方なのに現場の取り分だけが削られていくタイプの危うさもある。前者は仕事が安くなる話で、後者は仕事の対価が中間で消える話。同じ「崩壊寸前」でも、痛みの出方はまるで違う。
そして、この手のスレッドが必ず面白くなるのは「その業界、10年前から死ぬと言われてるよね」というツッコミが混ざるからだと思う。実際、翻訳もグラフィックデザインも何度も葬式を出されては生き延びてきた。今回だけは違うのか、それともまた同じ台詞を繰り返しているだけなのか、答えが出るのはもう少し先だろう。皆さんの周りに、外からはまだ元気に見えるのに、中の人だけが静かに息を止めている業界はありますか?

コメント
いまの『AI』は「ものすごくそれらしいもの」を乱数で出してくる仕組みなので
上にその出来を確認する(できる)人が必要なんだよ。
それがわからない、欠陥品が出てきたときに見抜けない人が
「こりゃ便利だ!」って使うと絶対事故る。そういうもの