「あれだけ大ヒットしたのに、いま誰も話題にしない映画って何?」。海外の掲示板にそんなスレッドが立ち、1300件を超える返信が集まった。興行成績でも受賞歴でもなく「人の記憶に残ったかどうか」という物差しで並べ直すと、誰もが知っているはずの作品が次々に名前を挙げられていく。日本でもおなじみの、あの一本もしっかり槍玉に挙げられていた。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
『アバター』。興行記録を片っ端から塗り替えて、続編まで作られてるのに、誰かがあの映画のセリフを引用してるのを見たことがない。仮装してる人も見ないし、キャラクターの名前が日常会話に出てきたこともない。あれだけの人数が劇場に足を運んだのに、文化の側には何ひとつ残ってないんだよ。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
文化的な爪痕がゼロだって全員でずっと言い続けてること自体が、唯一の文化的な爪痕になってるの、けっこう笑えると思う。3. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
キャラの名前が出てこない、のところだけは反論させてくれ。ジェイク・サリー。ただし俺がこれを言えるのは映画を観たからじゃなくて、昔ネットのくだらない動画で延々ネタにされてたからなんだよな。つまりポップカルチャーじゃなくて、ごく狭いネット文化にだけ足跡を残したことになる。
※ 『アバター』は2009年公開のジェームズ・キャメロン監督作。異星パンドラを舞台にした3D映画で、世界興行収入の歴代1位を記録した。2022年に続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が公開されている。
4. 名無しのReddit住民
『クラッシュ』。アカデミー作品賞を獲った直後から、誰の口にも上らなくなった。授賞式の翌年にはもう「あれ何だっけ」の枠に片付けられてたと思う。獲った瞬間が人生のピークで、そこから一直線に落ちていったタイプの映画。
5. 名無しのReddit住民(>>4への返信)
そもそも当時から誰もあれが勝つとは思ってなかったのが大きい。『カポーティ』も『ブロークバック・マウンテン』も『グッドナイト&グッドラック』もあった年で、なんなら『ミュンヘン』の方がずっと納得できた。発表された瞬間、うちのリビングが静まり返ったのを今でも覚えてる。あと個人的にはあの映画の会話が本当に苦手で、登場人物全員が人種問題について演説してるみたいな喋り方をするんだよ。
※ 『クラッシュ』は2005年公開のポール・ハギス監督作。ロサンゼルスを舞台に、人種の違う人々が次々に衝突していく群像劇で、アカデミー作品賞を受賞した。デヴィッド・クローネンバーグの同名作(1996年)とは別の映画。
6. 名無しのReddit住民
『ダ・ヴィンチ・コード』。一時期は本当にどこに行ってもこの話をしてる人がいた。書店の平積みも、テレビの特集も、ネットの掲示板もこれ一色。それが今では、誰かが口にするところをまず見かけない。
7. 名無しのReddit住民(>>6への返信)
あれが消えたのは、陰謀論というものの立ち位置が「ちょっと変わった人の趣味」から「危ないもの」に変わっていった時期とちょうど重なってると思う。隠された歴史の謎を追いかけるのが無邪気な娯楽でいられた最後の頃の作品なんだよ。
※ 『ダ・ヴィンチ・コード』は2006年公開、ロン・ハワード監督・トム・ハンクス主演。ダン・ブラウンの同名小説が原作で、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵に隠された暗号をたどる謎解きサスペンス。日本でも原作・映画ともに大ヒットした。
8. 名無しのReddit住民
イギリス目線かもしれないけど、『スラムドッグ$ミリオネア』は当時ものすごく大きな存在だった。それが今では名前を聞くこともほとんどない。
9. 名無しのReddit住民(>>8への返信)
いい答えだ。イギリスではあれ、社会現象と呼んでいいレベルだったよ。とにかくどこでも話題になってたし、サントラの曲をプッシーキャット・ドールズがカバーまでした。それが、ある日ぱたっと消えた。国全体が急に我に返って、あんなに夢中になってた自分たちが少し恥ずかしくなった、みたいな空気だったと思う。10. 名無しのReddit住民(>>8への返信)
あの頃は、インドのポップカルチャーが一気に欧米の本流に流れ込んでくる直前なんだと本気で思ってた。結局そこまでにはならなかったけどね。今それに一番近いのはK-POPだと思う。ただ配信もSNSも当時と全然違うから、比べようがないというのが正直なところ。みんなが同じものを一斉に観る時代がもう終わってるんだよ。
※ 『スラムドッグ$ミリオネア』は2008年公開のダニー・ボイル監督作。インドのスラム出身の青年がクイズ番組で勝ち進んでいく物語で、アカデミー作品賞を受賞した。劇中歌「Jai Ho」は翌年プッシーキャット・ドールズがカバーし、こちらも世界的にヒットしている。
11. 名無しのReddit住民
ディズニーの『南部の唄』。自分が子供だった60年代には本当に有名な映画で、「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」はどの子も歌えた。今この題名を出しても、たいていの人はぽかんとしてる。
12. 名無しのReddit住民(>>11への返信)
90年代生まれの自分でもあの歌だけは知ってる。ただ、覚えてるのはあくまで遊園地のアトラクションのおかげで、映画そのものは一度も観たことがない。そのアトラクションが別の題材に作り替えられたから、これからもっと沈んでいくと思う。歌だけが本体から切り離されて生き残ってる状態って、けっこう不思議だよ。
※ 『南部の唄』は1946年のディズニー作品で、実写とアニメを合成した先駆けとして知られる。人種描写への批判が強く、ディズニーは長年ソフト化も配信も見送っている。劇中歌「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」はスプラッシュ・マウンテンのテーマ曲として使われ続けてきたが、アメリカの同アトラクションは『プリンセスと魔法のキス』を題材にしたものへ作り替えられた。
13. 名無しのReddit住民
待ってくれ、『風と共に去りぬ』とか『タイタニック』とか『フォレスト・ガンプ/一期一会』が文化的に無関係って、どういうことだよ。どれも歴史を動かしたレベルの映画で、今でも普通に話題になるだろ。このスレ、雑な意見が多すぎる。
14. 名無しのReddit住民(>>13への返信)
それな。今はさすがに減ったけど、90年代は道を走ってるだけで通りすがりの誰かに「走れ、フォレスト!」って叫ばれるから、外でジョギングする気が起きなかったもん。生活を実際に変えてきた映画を無関係とは呼べないよ。
※ 「走れ、フォレスト!」は『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年)の台詞。子供時代の主人公に幼なじみが叫ぶ言葉で、脚の装具を壊しながら走り出す名場面につながる。公開当時は街中でのからかい文句としても定着していた。
15. 名無しのReddit住民
ここ10年ちょっとのアカデミー作品賞、受賞作の大半がそうなってる気がする。過去の受賞リストを眺めて、今まったく話題に上らない作品がどれだけあるかを数えるのが趣味みたいになってきた。
16. 名無しのReddit住民(>>15への返信)
雑に仕分けするとこんな感じ。
今も普通に語られてる:『オッペンハイマー』『パラサイト 半地下の家族』
そこそこ語られてる:『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』『ムーンライト』
たまに名前が出る:『ANORA アノーラ』『シェイプ・オブ・ウォーター』
すっかり忘れられた:『コーダ あいのうた』『ノマドランド』『グリーンブック』
下の段、公開時はどれも「今年最重要の一本」扱いだったのがきつい。
17. 名無しのReddit住民
『ウィキッド ふたりの魔女』。もともと熱心なファンがついてる舞台作品を、国民的な大ブームに押し上げようとして、宣伝もずっと「うまくいってます、これは何世代にも愛されるシリーズの誕生です」と言い続けてた。それが二年経った今、作品そのものの話をしてる人がほとんどいない。まだ話題になるのは、公開後に主演二人がやった痛々しいプロモーションの方だけなんだよ。
18. 名無しのReddit住民(>>17への返信)
一作目は本当に好きだったんだけどね。二作目が、やたら長いくせに全部が駆け足という不思議な出来で、登場人物の関係を掘り下げる時間がどこにもなかった。最後に大きな教訓を叩き込むつもりで積み上げてきて、いざその場面で怖じ気づいて「優しさは大事」ってぼそっと言って終わる感じ。あと一作目にあった、大人数で踊る華やかさが消えてたのも痛かった。
※ 『ウィキッド ふたりの魔女』は2024年のアメリカ公開作。『オズの魔法使い』の悪い魔女を主人公にした人気ブロードウェイミュージカルの映画化で、シンシア・エリヴォとアリアナ・グランデが主演。前後編に分けて作られ、後編も公開済み。
19. 名無しのReddit住民
『アーティスト』を過去10年のあいだに観た人間が地球上に一人もいない方に1000ドル賭けてもいい。作品賞を獲った映画で、ここまできれいに視界から消えたのも珍しいと思う。
20. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
それはちょっと不公平じゃないか。あの映画、今観ても普通に面白いし、少しも古びてない。ただ、モノクロで台詞がほとんど無くて、しかもフランス製作という一本が何十年も語り継がれる未来なんて、最初から存在しなかっただけの話だよ。むしろ作品賞を獲れたこと自体が小さな奇跡だった。
※ 『アーティスト』は2011年のフランス映画。サイレントからトーキーへの移行期のハリウッドを、あえてモノクロ・ほぼ無声の形式で描いた作品で、アカデミー作品賞を受賞した。
21. 名無しのReddit住民
飛び抜けて有名というわけじゃないけど、『フォーン・ブース』は前提そのものが世の中から消滅してる。今の若い人に「公衆電話から離れられなくなる話」と説明しても、そもそも何がまずいのかが伝わらない。
22. 名無しのReddit住民(>>21への返信)
いや、それ自体が作中の仕掛けなんだよ。ニューヨークに最後まで残っていた公衆電話の一つ、という設定がちゃんと台詞で説明される。公開時点ですでに絶滅寸前の道具だと分かったうえで撮ってる。犯人の計画があの手口で成立する猶予も、あと数年しか残ってなかったはず。
※ 『フォーン・ブース』は2002年公開、コリン・ファレル主演のサスペンス。街角の公衆電話に出た男が、狙撃手から「受話器を置いたら撃つ」と告げられ、その場から動けなくなる。ほぼ全編が電話ボックスの周囲だけで進む。
23. 名無しのReddit住民
完全に無関係になったとまでは言わないけど、『アメリカン・ビューティー』の評価がここまで何度もひっくり返ったのは面白い。公開時は絶賛、しばらくして主人公の気持ち悪さが問題にされ、最近はまた「あの居心地の悪さこそが効いてる」という見方も出てきた。映画の中身は一秒も変わってないのに、観てるこっち側だけが動き続けてるんだよな。
※ 『アメリカン・ビューティー』は1999年公開、サム・メンデス監督のアカデミー作品賞受賞作。中年男性が娘の同級生に執着していく郊外の家庭劇で、公開当時は現代アメリカの空虚さを描いた傑作として評価された。
24. 名無しのReddit住民
今世紀に入ってから『炎のランナー』を通しで観た人、この中に一人でもいる? 曲は誰でも知ってるのに、映画を最後まで観たって人にここ20年ほど会ってない気がする。
25. 名無しのReddit住民(>>24への返信)
イギリスでは観てる人がいるよ。年に何度かテレビでやるし、あのテーマ曲はいまだに「ちょっとした場面をやたら壮大にするための曲」として冗談で使われてる。誰かがゆっくり走り出した瞬間に口ずさむやつ、あれは今も現役だから。
※ 『炎のランナー』は1981年のイギリス映画で、1924年パリ五輪を目指す二人の陸上選手を描いてアカデミー作品賞を受賞した。ヴァンゲリスによるテーマ曲は日本でも運動会やスポーツ番組の定番として使われ続けており、曲だけが独り歩きしている代表例。
26. 名無しのReddit住民
『バード・ボックス』は数週間だけ地球を占領してた。誰も彼も目隠しをした写真を上げてたし、危ないから真似するなという注意喚起まで出てた。あれから誰かがこの映画の話をしてるのを、最後に聞いたのはいつだろう。
※ 『バード・ボックス』は2018年配信のNetflix映画。それを見ると死んでしまう「何か」から逃れるため、登場人物が目隠しで生活する。配信直後に目隠しで日常生活を送る動画が世界的に流行した。
27. 名無しのReddit住民
『スネーク・フライト』も2000年代はずっと話のネタになってた。企画が発表された時点でネット全体が悪ふざけで盛り上がって、その勢いで追加撮影までしたはずなんだけど、公開されたらみんな急に飽きた。ネットの熱狂だけで作られた映画の末路として、ある意味いちばん正しい終わり方だと思う。
※ 『スネーク・フライト』(原題 Snakes on a Plane)は2006年公開、サミュエル・L・ジャクソン主演。飛行中の旅客機に大量の毒蛇が放たれる。この身も蓋もない原題がネット上でネタにされ、公開前から異常な盛り上がりを見せたことで知られる。
28. 名無しのReddit住民
『メリーに首ったけ』の名前を最近まったく聞かない。90年代には特大のヒットで、キャメロン・ディアスもベン・スティラーもマット・ディロンも出てて、今でも史上最高のコメディの一本に数える人は多いはずなんだ。なのに90年代の恋愛映画の話になると、出てくるのは『ノッティングヒルの恋人』とか『プリティ・ウーマン』ばっかりなんだよな。
※ 『メリーに首ったけ』は1998年公開のコメディ。高校時代の憧れの相手を探す男と、彼女に群がる男たちの騒動を描く。下品な場面の多さが当時大きな話題になり、日本でも大きくヒットした。
29. 名無しのReddit住民
『ビバリーヒルズ・コップ』。当時はどこを向いてもエディ・マーフィが見出しを飾ってたし、あのシンセのテーマ曲はそこら中で流れてた。それが今では、配信で作られた新作が誰の記憶にも引っかからずに終わって、そのままもう一度忘れられた。二度忘れられるのはさすがにきつい。
30. 名無しのReddit住民(>>29への返信)
テーマ曲の方は映画から独立して生き延びてるのが救いなのか悲しいのか分からない。うちの下の世代なんて、あれをカエルのキャラクターが歌ってる曲として覚えてるからね。原曲が刑事映画のものだと説明したら、心底どうでもよさそうな顔をされた。
※ 『ビバリーヒルズ・コップ』は1984年公開のエディ・マーフィ主演作。テーマ曲「Axel F」は2005年にクレイジー・フロッグ(カエルのCGキャラクター)によるカバーが世界的にヒットし、曲だけが別の世代に届いた。2024年にはNetflixで新作が配信されている。
まとめ
並んだ顔ぶれを眺めていると、忘れられ方にいくつかの型があることが見えてくる。ひとつは、賞は獲ったのに誰の生活にも入り込まなかったもの。『クラッシュ』や『アーティスト』のように、授賞式の夜が話題のピークで、そこから先が続かなかったパターンだ。もうひとつは、その時代の空気とぴったり噛み合いすぎたせいで、空気が変われば成立しなくなったもの。陰謀論を無邪気な娯楽として扱えた『ダ・ヴィンチ・コード』や、公衆電話という道具そのものが消えた『フォーン・ブース』がここに入る。そして三つ目が、作品より周辺の出来事だけが残ってしまった型で、『ウィキッド ふたりの魔女』の話題が主演二人のプロモーションに吸い取られたのはその典型だろう。
日本から見ると、また少し違う景色になるのも面白い。『炎のランナー』のテーマ曲は運動会でもスポーツ中継でも当たり前に流れているし、「ジッパ・ディー・ドゥー・ダー」はスプラッシュ・マウンテンの曲として耳に残っている人が多いはずだ。どちらも本編を通しで観た人の方が少ないのに、音楽だけが完全に独立して生き延びている。『ビバリーヒルズ・コップ』のテーマ曲がカエルのキャラクターに乗っ取られた話も同じ構図で、映画が忘れられても、そこから剥がれた断片だけが別の場所で生き続けることがある。逆に『メリーに首ったけ』などは、日本では今も90年代コメディの代表格として名前が挙がる印象なのに、本国では真っ先に「忘れられた側」に数えられていた。同じ作品でも、どの国のどんな文脈に引っかかったかで寿命がまるで変わってくるらしい。
結局のところ、動員数と文化の記憶はまったく別の指標なのだと思う。歴代1位の興行収入を持つ作品が「誰もセリフを言えない」といじられる一方で、興行では負けた作品のギャグや音楽が30年後の日常に残っている。皆さんが「大ヒットしたはずなのに、そういえば最近まったく聞かないな」と感じる映画は何でしょうか?

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