「500万ドルあげるから、あなたが最後に読んだ本の世界で1年間暮らしてきて。生き延びられる確率は?」。r/AskReddit に立ったこの質問に、4000件を超える回答が集まった。返ってきたのは、のどかな村で一年寝て暮らせる幸運な人と、読み終えたばかりのページの中で確実に死ぬ人の、あまりに残酷な明暗だった。
※ 500万ドルは1ドル150円換算でおよそ7億5000万円。ただし「1年生き延びたら」という条件付きである。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
最後に読んだのがノンフィクションだった場合はどうなるんだ? 何もしなくても500万ドルもらえるってこと? だとしたら今すぐサインするんだが。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
第一次世界大戦の塹壕戦の本を読んでたなら話は別だぞ。ノンフィクションってだけじゃ何の保証にもならない。もうちょっと条件を詳しく教えてくれ。3. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
俺が最後に読んだのは『The Chaos Machine』、SNSがどう世界を壊したかの本だ。つまり1年間ひたすら画面をスクロールしてればいいわけで、今の生活と何ひとつ変わらないまま金がもらえる。※ 『The Chaos Machine』は米ジャーナリストのマックス・フィッシャーが2022年に出したノンフィクション。SNSの推薦アルゴリズムが各国で分断や暴力を加速させた過程を追った一冊で、邦訳は確認できないため原題のまま表記した。
4. 名無しのReddit住民
外科医なんだが、直近で読んだ(というか校正した)のは手術の教科書だ。これって昇給して今まで通り働けって意味か? 手術室の世界で1年過ごすの、こっちはもう十年以上やってるんだけど。
5. 名無しのReddit住民
C++の入門書の世界って一体どこなんだよ。今いる宇宙とまったく同じ場所に置かれるだけじゃないのか? だとしたら俺、すでにここにいるんだが。金だけくれ。
6. 名無しのReddit住民
『ディスクワールド』だ。行くしかないだろ、こんなチャンス。一年どころか永住の相談をしたい。
※ 『ディスクワールド』は英国の作家テリー・プラチェット(1948〜2015)が40作以上書き継いだ長寿コミック・ファンタジー。巨大な亀の背に乗った円盤状の世界が舞台で、笑える冗談と辛辣な社会風刺が同居する作風。日本では『モート 死神の弟子』などが訳されている。
7. 名無しのReddit住民(>>6への返信)
誰として、どこに放り込まれるか次第だけどな。シェイズに何の予告もなく落とされるのだけは勘弁してほしい。あそこは通りを一本間違えただけで身ぐるみ剥がされる。※ シェイズはシリーズの舞台となる大都市アンク・モルポークの無法地帯。衛兵ですら足を踏み入れたがらない、盗賊と暗殺者の縄張りとして描かれる。
8. 名無しのReddit住民(>>6への返信)
運さえ良ければ、成功する確率はちょうど百万分の一になるはずだ。あの世界の理屈だと、それはもう成功が確定したのと同じ意味なんだよな。※ 「百万分の一の可能性は九回に九回起きる」はシリーズ定番の言い回し。物語的に盛り上がる無茶ほど成功してしまう、という世界の法則をネタにしたもの。
9. 名無しのReddit住民
最近『ホビットの冒険』を読み返したところだ。つまり冒険になんて出かけず、呪われた指輪さえ拾わなければ、一日六食のんびり食べて500万ドルもらえる。これ当たりくじの部類では?
※ 『ホビットの冒険』は J・R・R・トールキンが1937年に発表したファンタジー。のちの『指輪物語』の前日譚で、主人公たちの故郷ホビット庄は牧歌的な農村。ただし作中で拾われる金の指輪が、後の全面戦争の引き金になる。
10. 名無しのReddit住民
『Dungeon Crawler Carl』。しかも自分はまだレベル4だ。終わった。完全に終わった。
※ 『Dungeon Crawler Carl』は米国のマット・ディニマンによる連作小説。地球が突然巨大ダンジョンに作り変えられ、生き残った人類が全宇宙に生中継されるデスゲームに放り込まれる、という設定。主人公カールの相棒は元飼い猫のプリンセス・ドーナツ。邦訳が確認できないため原題のまま表記した。
11. 名無しのReddit住民(>>10への返信)
その世界に行ったら、自分専用のプリンセス・ドーナツはちゃんと支給されるのか? 一人でダンジョンに潜るのだけは絶対に嫌だぞ。12. 名無しのReddit住民(>>10への返信)
このメッセージは死亡した挑戦者から送信されています。
13. 名無しのReddit住民
『ウォーハンマー40,000』の小説を読み終えたばかりだった。みんな、今までありがとう🥲 荷物をまとめる時間すらなさそうだ。
※ 『ウォーハンマー40,000』は英ゲームズワークショップのミニチュアゲームから広がった暗黒SFの世界観。西暦4万年、人類帝国が異星種族や異次元の存在と終わりのない戦争を続けており、一つの星の全住民が全滅しても記録上は誤差、という規模で人が死ぬ。関連小説が数百冊出ている。
14. 名無しのReddit住民(>>13への返信)
こっちは3万年代のほう、『ホルス・ヘレシー』だ。ただ本の大部分の舞台になってる惑星に置かれるなら生存率はかなり高い。主戦場から離れてるし統治もまともなほうだからな。逆に戦場のほうに降ろされたら、地面に足がついて10秒で終わる。※ 『ホルス・ヘレシー』は上記の1万年前を描く前日譚シリーズ。人類帝国が内戦で真っ二つに割れる過程を数十冊かけて描く。完結編にあたるのが『Siege of Terra』(テラ攻囲戦)で、こちらは邦訳が確認できないため原題表記。
15. 名無しのReddit住民
『ハンガー・ゲーム』。作中の決まり文句だと幸運は皆に味方してくれることになってるが、私は運動が壊滅的にできない事務職だからな。開始10秒で誰かに刺されて終わる自信がある。
※ 『ハンガー・ゲーム』はスーザン・コリンズが2008年に発表した米国のディストピア小説。独裁国家が支配下の各地区から少年少女を選び、最後の一人になるまで殺し合わせる年中行事を描く。「幸運が皆さんに味方しますように」は、送り出す側が笑顔で言う定型句。
16. 名無しのReddit住民
さっき子どもに『ブルーイ』の絵本を読んであげたところなんだが。これはいけるだろ。俺、ブルーイのパパとは絶対に気が合う。1年間ずっと庭で意味不明な遊びに付き合わされるだけだ。
※ 『ブルーイ』はオーストラリア発の子ども向けアニメと関連絵本。ブルーヒーラー犬の一家の日常を描く。父親バンディットが全力で子どもの遊びに付き合う姿が世界中の親に刺さり、大人のファンも多い。
17. 名無しのReddit住民
アシモフの『ファウンデーション対帝国』。たぶん俺は銀河のどこかの惑星にいるただの一般人で、物語の出来事は俺の寿命に何の影響も与えない。これ、一番おいしい引き方だと思う。
※ 『ファウンデーション対帝国』はアイザック・アシモフの『銀河帝国の興亡』シリーズ第2作(1952年)。統計で人類史の流れを予測する学問を軸に、崩壊しつつある銀河帝国と辺境の新勢力の攻防を描く。舞台が銀河全域なので、登場しない一般人の数がとにかく多い。
18. 名無しのReddit住民(>>17への返信)
その理屈、帝国の徴税官が村に来るまでは通用するんだよな。歴史の教科書に一行も載らない側の人間ほど、気づいたときには巻き込まれて消えてる。
19. 名無しのReddit住民
まずい、俺いま伊藤潤二の単行本を読んでる最中なんだが。あの人の作品で、無事に逃げ切れた登場人物っていたか? 思い出そうとしても一人も出てこない。
※ 伊藤潤二は『富江』『うずまき』などで知られる日本のホラー漫画家。英訳版が海外で非常によく読まれており、英語圏の読書スレッドでも名前が挙がる常連になっている。
20. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
俺は『ベルセルク』だ。1日ももたない。というか日が暮れた時点で終わる。あの世界の夜は、人間が外を歩いていていい時間帯じゃない。※ 『ベルセルク』は三浦建太郎が1989年から描いた日本のダークファンタジー漫画。中世ヨーロッパ風の世界で、夜になると人ならざるものが人間を襲う。海外でも英訳で広く読まれている。
21. 名無しのReddit住民
『紙葉の家』。まず間違いなく詰んでる。しかもまだ読み終えてないから、自分がどういう詰み方をするのかすら分かってないのが一番怖い。
※ 『紙葉の家』はマーク・Z・ダニエレブスキーが2000年に発表した米国の実験小説。外から測った寸法より内側のほうが広い家を撮影した映像記録、という体裁で進む。本文が逆さになったり渦を巻いたりする組版でも有名。
22. 名無しのReddit住民(>>21への返信)
あの家、廊下を曲がった瞬間に一年分の距離が生えてくるからな。500万ドルを受け取る権利は手に入っても、受け取り場所まで歩いてたどり着けない。
23. 名無しのReddit住民
『ブラッド・メリディアン』を初めて読んでる最中だ。……なんてことだ。500万ドルは丁重にお断りする。あの世界で1年って、そもそも1年生きられる前提の話が成立してない。
※ 『ブラッド・メリディアン』はコーマック・マッカーシーが1985年に発表した西部小説。19世紀半ばの米墨国境で頭皮の賞金稼ぎをしていた集団をモデルにしており、暴力の描写に一切の加減がないことで知られる。
24. 名無しのReddit住民(>>23への返信)
同じ作者で、こっちは『ザ・ロード』だ。灰しか降ってこない世界を、食べ物を探して南へ歩き続ける1年。手元に金があっても、買う店がそもそも一軒も残ってない。※ 『ザ・ロード』は同じマッカーシーが2006年に発表した終末小説。文明が滅んだ灰色の大地を、父と息子が海を目指して歩く。ピュリッツァー賞受賞作で、映画化もされている。
25. 名無しのReddit住民
『高慢と偏見』。つまり私は今この瞬間、あの世界で最も条件のいい結婚相手になったということだ。一年後には屋敷が建ってる。
※ 『高慢と偏見』はジェイン・オースティンが1813年に発表した英国の小説。19世紀初頭の地主階級を舞台に、娘たちの結婚相手探しを描く。持参金と年収がそのまま人物評価になる社会が前提になっている。
26. 名無しのReddit住民(>>25への返信)
あの世界の基準で言えばダーシーを軽く飛び越えてるからな。むしろ向こうが必死に見合いを申し込んでくる側になる。ベネット家の母親なら卒倒してるところだ。※ 作中屈指の富豪ダーシー氏の年収が「1万ポンド」で、それが破格の条件として扱われる。当時の通貨感覚をそのまま持ち込むと、500万ドルは比較にならない桁になる。
27. 名無しのReddit住民
読んだのは『身体はトラウマを記録する』だった。……これ、つまり今いるこの世界のことだよな? ということは500万ドルを全部セラピー代に突っ込んでいいって話か?
※ 『身体はトラウマを記録する』は精神科医ベッセル・ヴァン・デア・コークが2014年に出した一般向けの本。心的外傷が身体にどう残るかを扱う。舞台は架空世界ではなく現実社会そのもの。
28. 名無しのReddit住民
モンスターが出てくる官能小説をしばらく休んで、リンゴ園と焼き菓子だらけの小さな町の話を読んでたのが本当に良かった。今すぐ申し込む。1年と言わず二年でもいい。
※ 英語圏の小説には、小さな町を舞台に事件らしい事件が起きない「コージー」系の恋愛小説というジャンルがあり、対極に人外の相手との濃厚な恋愛を扱う一群がある。この人は直前まで後者を読んでいた、という自虐。
29. 名無しのReddit住民
よりによって『ジュラシック・パーク』。よりによって、だ。しかも俺は電気系統にも弱いし、走るのも遅い。あの島で役に立つ特技が一つもない。
※ 『ジュラシック・パーク』はマイクル・クライトンが1990年に発表した小説。遺伝子技術で恐竜を復活させたテーマパークで、停電をきっかけに檻の制御が全て失われる。映画版は原作よりだいぶ生存者が多い。
30. 名無しのReddit住民
『スター・ウォーズ』の、銀河内戦が終わったあとの時代を描いた小説だ。生存率はそこそこ高いと思う。というか正直に言うと、1年経っても帰ってこない可能性がある。金はいらないから宇宙船に乗せてくれ。
※ 映画本編の後日談にあたる小説群のこと。帝国が倒れて新しい政府が立ち上がる時期を扱っており、少なくとも全面戦争の最中よりは穏やかな時代とされる。
まとめ
面白いのは、生死を分けているのが本人の能力ではなく「たまたま直前に何を読んでいたか」だけ、という点だ。手術の教科書やSNS論を読んでいた人は何もせずに賞金を持ち帰れて、寝る前にホラー漫画を一冊めくっただけの人は数時間で消える。運の総量が読書履歴で決まってしまう世界である。
もうひとつ目立つのは、危ない世界を挙げた人ほど楽しそうに書いていることだ。「1日ももたない」「金は要らないから断る」と言いながら、なぜ死ぬのかを丁寧に説明したがる。好きな作品ほど、その世界が自分を殺しにくることをよく分かっている、という妙な愛情表現になっている。逆に安全側に引いた人たちは、屋敷を建てる算段や庭で子どもと遊ぶ一年を淡々と語っていて、こちらはこちらで幸せそうだ。
ちなみにこの質問を日本語でやったら漫画の比率が一気に上がりそうなのも、想像すると楽しいところ。皆さんが最後に読んだ本は何でしたか。その世界で1年、生き延びられそうですか?

コメント