「楽勝だと笑われるのに、実際はとんでもなく頭を使う専攻は?」という質問に、6500以上の支持と2700件を超えるコメントが集まっていた。挙がったのは歴史、哲学、美術、地質学、教職、そして誰かが冗談で作ったはずの「水中カゴ編み」まで。途中からは「難しくない」と「役に立たない」を混ぜて語ってないか、という指摘まで飛び出している。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
歴史学。「昔の出来事を覚えるだけ」と思われてるけど、それは歴史そのものの話であって、歴史学じゃない。厄介なのは、歴史がどう書かれてきたかを読み解く作業のほう。ひとつのテーマを掘れば掘るほど、歴史家ごとに偏りがあることを思い知らされる。分かっていることがあって、その間にぽっかり空いた穴があって、時代をさかのぼるほど穴のほうが多くなる。その隙間を事実と推論で埋めるのが歴史家の仕事なんだけど、これが厳密な科学じゃないから、最後は矛盾する物語がいくつも残る。面白いけど、正直しんどい。本気で掘りたいなら、対象を読むだけじゃなく、対立する主張と、その主張を書いた人間のことまで読むしかない。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
歴史で修士まで行った身としては、あれは実質「プロの調べ屋」と「プロの説明屋」になるための訓練だったと思ってる。どの業界に行っても腐らないスキルだよ。3. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
歴史の理解って、あの釣鐘型グラフのミームそのままなんだよな。入口は「歴史むずすぎ」、途中で「こいつら結局それっぽく想像で書いてるだけでは?」、抜けた先で「20年かけて1世紀の農民の頭の中に住み込んで、ポンペイの壁に残った下ネタ落書きを理解しようとしてる人たちだった。頭が下がる」。
※ 釣鐘型グラフのミーム=知能の分布を釣鐘型の曲線で描き、左端(何も知らない人)と右端(極めた人)が同じ結論に行き着く、という英語圏の定番ネタ。ポンペイは火山灰に埋もれた古代ローマの都市で、当時の庶民の落書きが大量に残っている。
4. 名無しのReddit住民
どの専攻もそうだよ。基礎の先まで行って専門家になるのは、分野に関係なくきつい。楽に見える専攻があるとしたら、たいていは入門の1〜2科目しか見てないからだと思う。
5. 名無しのReddit住民(>>4への返信)
いや、学部の専攻って専門家になることまでは求められてないでしょ。専門家になるのは博士課程の話で、そっちはどの分野でも例外なく地獄。学部の難易度と一緒くたに語るのはちょっと違う気がする。
6. 名無しのReddit住民
工学と応用物理と法学で学位を取ってるけど、妻が哲学専攻だったころに読まされてた文献をのぞいたら、脳が耳から逃げ出そうとした。あれを毎週何十ページも読んで、しかも自分の言葉で反論を組み立てろと言われるんだから正気じゃない。
7. 名無しのReddit住民(>>6への返信)
学部のとき、哲学の講師が「私はカントのいくつかの箇所を本当には理解できていないし、そもそも本人が理解されるつもりで書いたとも思っていない」と真顔で言ってた。しばらくして英文学の教授がジョイスについてほぼ同じことを言い出したときは笑ったよ。
※ カントは18世紀ドイツの哲学者。主著『純粋理性批判』は難解さで知られる。ジョイスは20世紀アイルランドの作家で、代表作『ユリシーズ』は読み通した人より挫折した人のほうが多いと言われる長編。8. 名無しのReddit住民(>>6への返信)
大学で分野横断の人文系研究チームにいたことがある。自分の専門じゃなくても、だいたい何を言おうとしてるかは追えた。哲学だけは別だった。「意味が分からなすぎて批評のしようがない」となったのは、後にも先にも哲学の発表だけ。
9. 名無しのReddit住民
地理情報系。あの分野の合言葉は「地図は間違っている。少しずつ間違いが減っていくだけだ」。丸い地球を平らな紙に写した時点でどこかが必ず歪むし、どの歪みを許すかは目的によって変わる。正解の地図なんて一枚もない。
※ 地理情報系(GIS)=位置の情報を集めて分析する技術分野。カーナビや災害ハザードマップの裏側にあり、大学では測量の基準や図法、統計解析まで扱う。
10. 名無しのReddit住民(>>9への返信)
これ、そもそも楽勝だと笑われてる分野なの? 地理をバカにしてる人を周りで見たことがないんだけど。
11. 名無しのReddit住民
まともにやろうとしたら人文系の9割はきついよ。まず読む量が正気じゃない。1週間で本1冊と論文数本を通して、そのうえで自分の立場を決めて書け、と言われる。理系の課題みたいに答え合わせができないぶん、どこで手を止めていいのかも自分で決めるしかない。
12. 名無しのReddit住民(>>11への返信)
人文系は入れた分しか返ってこないのが怖いところ。半分寝たまま通り抜けて何も身につけずに卒業もできるし、本気で突っ込めば他の分野では手に入らない読解力と批判的思考を抱えて出てこられる。担当教員の質にもかなり左右されるけどね。
13. 名無しのReddit住民
英文学か創作を挙げようと思ったけど、読むことと書くことを高い水準でやるのが難しいのは、たいていの人はもう分かってる気がする。あの分野が言われてるのは「難しくない」じゃなくて「役に立たない」のほうなんだよな。それはそれでへこむ。
14. 名無しのReddit住民(>>13への返信)
笑ってる側だってろくに読めてないからね。大学のライティングセンターで学生の文章を見てたけど、当時(2010年代の初め)ですでに、一段落を筋の通った形で書けない人がごろごろいた。今どうなってるのか想像すると怖い。
※ ライティングセンター=アメリカの大学によくある、レポートや論文の書き方を学生に個別指導する学内施設。
15. 名無しのReddit住民
教職。こっちを頭が回らない人間だと思ってる人が多いけど、学校の一日は考えることと段取りの塊なんだよ。今まさに自分の授業を組み立ててるところだけど、プリント1枚作るだけでも、講義の内容と合ってるか、他の配布物と矛盾しないか、教科書の並びとずれてないか、書き込み欄は足りてるか、印刷して潰れないか、と確認が延々続く。自分でやるまで想像もしてなかった。
16. 名無しのReddit住民
心理学はかなり低く見られてる。「人の話を聞くだけでしょ」の一言で、その裏にある研究計画も統計も理論も批判的な検討も全部すっ飛ばされる。人がなぜそう振る舞うのかを説明するのは、聞こえるほど簡単じゃない。
17. 名無しのReddit住民(>>16への返信)
統計、本当に多い。最終学期になって、必修の統計科目を消化しただけで統計学の副専攻まであと1科目のところに来ていたと知って笑った。逃げてたつもりが一番深く踏み込んでた。18. 名無しのReddit住民(>>16への返信)
1年のときに生物学から心理学に変えて、「よし、これでもう数学と縁が切れた」と本気で思ってたんだよ。最初の統計の授業で現実に殴られた。
19. 名無しのReddit住民
哲学は哲学者と思想を勉強するだけの分野じゃない。一階述語論理やブール論理みたいなものも必修で、人文系のつもりで入ってきた学生にはここが最初の壁になる。
※ 一階述語論理=「すべての〜」「ある〜が存在する」といった言い回しを記号で厳密に書き分ける論理体系。ブール論理は真か偽かだけを扱う演算で、どちらもコンピュータ科学の土台でもある。
20. 名無しのReddit住民
政治学専攻だった。上級科目にロック、ホッブズ、ロールズ、フーコーあたりを読まされる哲学寄りのゼミがあってね。2年のときに40〜50ページの研究論文を書く科目があって、あれもあれで容赦なかったけど、クラスで2番目の成績を取れて「自分はどの科目でもやっていける」と思い込んでたんだよ。そのあと例のゼミを取って、考えを完全に改めた。読んでいる途中で、未知の言語を渡された気分になる瞬間が何度もある。上級の哲学は、数式の代わりに思考と言葉と概念を使う高度な物理みたいなもので、しかも最後に全部きれいに辻褄が合ってないと終わり。あれは本当にきつかった。
※ 挙がっているのは近代以降の政治哲学の定番。ロックとホッブズは国家の成り立ちを契約から説明し、ロールズは公正さとしての正義を、フーコーは権力と知の関係を論じた。
21. 名無しのReddit住民
昔は仲間内で「水中カゴ編み専攻」をネタにして笑ってたんだけど、ある日ふと真面目に考えて、それどう考えても難易度おかしいだろ、と全員で気づいた。
※ 英語圏で「一番楽で中身のない専攻」の代名詞として使われる定番の冗談。日本語の「楽単」に近い感覚で持ち出される。
22. 名無しのReddit住民(>>21への返信)
それが実は普通のカゴ編みより少し楽なんだよ。カゴを編むときは材料をしなやかにするために水に浸す必要があって、編んでは浸してを繰り返すのが地味に面倒。水中で編むというのは、要するに材料を浸しっぱなしにできるということ。スキューバやシュノーケルでやる講座も実在はするけど、それは元の言い回しが指してた話じゃない。23. 名無しのReddit住民(>>21への返信)
集中力と手先の精度を水中で鍛える方法としては、むしろ理にかなってると思う。水深30メートルまで潜って、窒素酔いの状態で計算問題を解かされるやつと発想が近い。
※ 窒素酔い=深く潜ると血液に溶けた窒素の影響で酔ったような状態になる現象。ダイビング講習では判断力の低下を体感させるために、わざと簡単な計算をやらせることがある。
24. 名無しのReddit住民
美術。1年目のデッサンで終わる分野だと思われがちだけど、絵画などの平面を専攻していた身としては、あれは職人の技術に近いとずっと言ってる。デッサンひとつ取っても、形を単純な塊に分解して、明暗、遠近、輪郭の硬さと柔らかさを画材ごとに描き分ける。何より大事なのは、自分の目がどう働いているかを理解して、見えているものを平面に翻訳する作業。人は実際に見ているものじゃなくて、見ていると思い込んでいるものを描いちゃうからね。1分もかけずに描き切る課題もあって、どれだけ速く正確に写し取れるかを試される。ここまでが基礎の話で、そこに油彩、デジタル、アニメーション、シルクスクリーン、製本、写真が全部乗ってくる。指導教員に言われた言葉が今も残ってる。「創造性は教えられないが、描き方なら教えられる」。
25. 名無しのReddit住民(>>24への返信)
美術は逃げ場がないよね。上手いか下手かが、作品を出した瞬間に全員に伝わる。しかも上手くなるには長い時間と手間がかかって、近道がひとつもない。
26. 名無しのReddit住民
美術史系もけっこう難しいと思う。趣味の延長みたいに見えるから軽く扱われるけど、実態は細部の専門家になるための訓練。本質的には歴史学で、対象が絵画や工芸品や物質文化になっているだけなんだよ。絵を暗記する分野だと思われがちだけど、作品の知識なしで画廊の運営やアートディーラーをやってみろって話。
27. 名無しのReddit住民
地質学。体育会系向けの石ころ講座みたいに言われるけど、実際は他の科学分野を全部持ち寄って合成する分野なんだよ。化学反応、流体力学、力学、生物と地球化学がまざった変化、結晶学、画像解析、数理モデルの構築。野外に出れば観察したものをスケッチする力まで要る。使える道具を全部使って地球という仕組みを解こうという学問を、みんな楽な選択科目だと思ってる。
※ 英語圏では地質学の入門講義が「体育会系のための石ころ」と呼ばれてからかわれることがある。
28. 名無しのReddit住民(>>27への返信)
とはいえ、入門の地質学が楽な選択科目になりがちなのは事実だと思うよ。とてつもなく広い分野の表面をなでて終わるからね。掘り下げた先で、洒落抜きに他の理系分野と同じくらい複雑になるっていうのはその通り。
29. 名無しのReddit住民
言語学は「いろんな言語を覚える人」か「文法の間違いを指摘してくる人」だと思われてる。中身は容赦のない形式論理と、音を扱う物理と、計算モデリング。しゃべれる言語の数はほとんど関係ない。
30. 名無しのReddit住民
演劇。大きな課題はほぼ全部が共同作業で、人の管理と工程の管理を覚えないと何ひとつ終わらない。広報、運搬、大道具の木工、電気、溶接、塗装といった現場の技術に加えて、演技、演出、デザイン、台本の分析まで入ってくる。常に情報をまとめ直して、締め切りのある現実の判断を下し続けることになる。そのうえ、学生の課題が新聞で批評される。
※ 舞台の照明や美術は専門性が高く、資格を持つ技術者として食べていける仕事につながる分野でもある。
まとめ
並べてみると、笑われる理由が二種類に分かれているのが面白い。ひとつは、答えがひとつに決まらないこと。歴史も哲学も文学も、正解が用意されていないぶん、どこまで考えれば終わりなのかを自分で決めるしかなく、その苦しさは外からまったく見えない。もうひとつは、入門しか見えていないこと。地質学の石ころ講座も、心理学の「人の話を聞くだけ」という印象も、最初の数コマから先を知らないまま出てきた感想だと何度も突っ込まれていた。そして途中から目立ってきたのが、「難しくない」と「役に立たない」がいつのまにか同じ言葉で語られている、という違和感だった。日本でも文学部や教育学部をめぐって似た話は繰り返されるけれど、統計から逃げたつもりで心理学に進んだ人の話あたりは、専攻名のイメージがどれだけあてにならないかをよく表している。皆さんが「あれは楽そうだ」と思っていた分野で、中身を知って評価がひっくり返った経験はありますか?

コメント
ひと試合の野球のゲームだって、先行チームと後攻チームじゃ
見てる角度がちがうんで「歴史」は違う。
国家間の外交だって「良かれでやったこと」が「いらん世話だった」なんてのは
山ほど見てきたのが我々日本だ。 面倒くさいよね。