月に人を送るという話は、半世紀と少し前まで正気の沙汰ではないと思われていた。それが自分の生きているあいだに現実になったのだとしたら、次に「あり得ない」と言われている何かが、同じように普通のことになる番かもしれない。
海外の掲示板で「月面着陸のように、かつては信じられなかったのに、自分たちが生きているうちに見られそうな科学の飛躍は?」という質問が投げかけられた。癌の治療、研究室で育てる臓器、核融合、そして誰も歓迎していない方向の技術まで。現場で働いている人の生々しい報告と、ただの野次馬の願望と、冷や水を浴びせる懐疑派が入り混じって、予想以上に読み応えのある流れになっていた。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
今は治せないとされている種類の癌が、普通に治るようになること。というか、もう始まってると思う。父の友人が2022年ごろにその「治らない側」の癌だと言われて、周りはみんな一生治療と付き合っていくんだろうなと覚悟してた。それが通院と治療を積み重ねて、つい先日の血液検査で癌が消えてたって連絡が来た。本人より父のほうが泣いてたよ。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
同感。mRNAワクチンの技術が出てきてから、癌の治療でも一気に道が増えた。もちろん感染症のほうへの応用も大きいんだけど、正直こっちの伸びしろのほうに驚いてる。※ mRNAワクチン:たんぱく質の設計図(mRNA)を体内に送り込み、必要なものを体自身に作らせて免疫を訓練する仕組み。新型コロナのワクチンで一気に実用化が進んだ。
3. 名無しのReddit住民(>>2への返信)
期待したい気持ちは同じなんだけど、ドイツの企業が進めてた大腸がん向けのやつは、この前うまくいかなかったんだよね。免疫が活発に反応しているタイプの腫瘍、メラノーマ(悪性黒色腫)みたいなものにしか効かないんじゃないか、という見方も出てきてる。それでも望みは捨ててないけどさ。
4. 名無しのReddit住民
イギリスのリバプールで、肺がんのワクチンを世界で初めて接種された女性がいる。患者一人ひとりの腫瘍に合わせて作るタイプだから、腕に一発打って終わりみたいな手軽さではないんだけどね。それでも、あの分野でこの見出しが出る日が来たのかと思うと素直にすごい。
5. 名無しのReddit住民
こうやってようやく芽が出てきたタイミングで、研究予算のほうは政治の都合でばっさり切られたりする。mRNAについては、中身をろくに知らない人たちからの叩かれ方もひどい。技術そのものより先に、金と世論のほうが折れるんじゃないかというのが一番こわいよ。
6. 名無しのReddit住民
必要になったら研究室で臓器を育てて、そのまま移植する。SF映画に出てくる特別あつらえの人工臓器じゃなくて、培養した腎臓を入れる手術が予定表に普通に並んでいる、くらいの日常になってほしい。特別な手術じゃなくて、ただの平日の仕事になった時点で勝ちだと思う。
7. 名無しのReddit住民(>>6への返信)
この分野で働いてる。どのくらい進んだかの目安を言うと、研究室で培養した膀胱が実際に患者へ移植されたのが2003年から2006年ごろの話。そこから20年かけて、もっと構造の複雑な臓器に手を伸ばしている段階だよ。想像より地味で、想像より確実に進んでる。
8. 名無しのReddit住民(>>7への返信)
素朴な疑問なんだけど、それって患者本人から幹細胞を取ってきて育てるの? それとも臓器の形をした土台みたいなものを先に用意して、そこに細胞を貼りつけていく感じ? 中の人がいるうちに聞いておきたい。※ 幹細胞:さまざまな種類の細胞に変化できる、いわば「元」になる細胞。本人の細胞から育てた臓器なら、体が異物と見なして攻撃する拒絶反応が起きにくいとされる。
9. 名無しのReddit住民
夢はあるんだけど、臓器を入れ替えるという行為そのものは、いつまで経っても体にとっては大事件のままだと思うんだよな。順番待ちのあいだに亡くなる人がいなくなるのは本当に大きい。ただ、開けて取り替えて、そこから何か月もかけて元に戻していく負担のほうは、たぶん消えない。
10. 名無しのReddit住民(>>9への返信)
執刀する側にとってはルーチンでも、受ける側にとっては一生に一度の大事だよね。それでも待たずに手に入るのは相当な前進だし、自分の細胞から育てた臓器なら、拒絶反応を抑える薬を一生飲み続けなくていい。あれの副作用でしんどい思いをしてる人、本当に多いから。
11. 名無しのReddit住民
うちの親戚が10代で心臓移植を受けた。心臓が体に追いつかなくなって、日に日に弱っていく息子を見ているあいだ、いちばんきつそうだったのは親のほうだった。手術自体もかなり過酷で、本人は今もそのときのことを引きずってる。いずれ2回目が必要になるんだけど、たぶん受けないと思う。
今は「誰かが亡くなって、適合したから今すぐ病院に来い」という電話が夜中の2時に鳴る世界なんだよ。その瞬間から関係者全員の生活が吹き飛ぶ。培養できるようになれば、手術の日程を前もって決められる。それだけでも十分すぎる進歩だ。
12. 名無しのReddit住民
小腸の感染症のせいで、11年ものあいだ空腹も喉の渇きも感じたことがない。抗生物質は効くには効くんだけど長続きしなくて、今はもう効かなくなった。培養した臓器、こっちはいつでも受け取る準備ができてるよ。順番が回ってくるのを本気で待ってる側の人間もここにいる。
13. 名無しのReddit住民
2000年代の後半に機械学習と自然言語処理をやっていて、コードを補完するAIモデルを作ってた。当時はほとんど誰も金を出してくれなかったんだよ。それが15年後にアプリを丸ごと書き上げてるとは思わなかった。5年前でも思ってなかったし、正直、3年前ですら思ってなかった。
※ 自然言語処理:人間が普段使っている言葉をコンピューターに扱わせる研究分野。翻訳や文章生成の土台になっている。
14. 名無しのReddit住民(>>13への返信)
2010年代にAIの研究と仕事をしてたけど、今起きてることは自分にはもう黒魔術だよ。昔は汎用人工知能なんて絶対に来ない、原理的に無理だという側で議論してた。それが今は、もう来ているんじゃないかと思ってる。誰も設計していないのに勝手に出てきた能力を、それ以外に何と呼べばいいんだ。※ 汎用人工知能(AGI):決まった作業だけでなく、人間と同じように幅広い問題を自分で考えて解ける水準のAIを指す言葉。長らく「理論上の話」として扱われてきた。
15. 名無しのReddit住民(>>13への返信)
「丸ごと書ける」は言いすぎだと思う。よほど単純なものを頼んだか、こっちが一手ごとに口を出している場合だけだよ。少し複雑になると途中で勝手に脱線して、しかも壊れたアプリを指して「これがご要望のものです」という顔で言ってくる。
使いどころはある。ただしそれは、出来のよくない新人を数人まとめて面倒みる管理職になる覚悟がある人の話。決まりきったコードを吐かせるのは速いけど、小さな打ち間違いと全部を壊す大事故が同じ頻度で出てくるからね。
16. 名無しのReddit住民
残念な方向のやつを挙げると、想像を超えたドローン戦争だと思う。何百機も飛ばして絵を描くドローンの光のショーがあるだろう。あれはただの見せ物じゃなくて、大通りに戦車を並べて軍事力を誇示するのと同じ意味を持ってる。プログラムひとつと、機体ごとにほんの少しの爆薬。それだけで、あの綺麗な演出がそのまま都市にとって最悪の一日に変わるんだよ。
17. 名無しのReddit住民(>>16への返信)
完全に自分で判断するタイプはもう目の前まで来てる。空から数千機単位でばらまかれて、一機ずつがAIの判断で特定の人物や集団を探し出して襲う。数年前に規制を求める団体が公開した短編フィクションがあるんだけど、当時は大げさだと言われてたのに、今見返すと全然笑えない。※ 自律型致死兵器(LAWS):人間が引き金を引かず、機械の判断だけで攻撃対象を決める兵器の総称。国際的な規制の枠組みはまだ固まっていない。
18. 名無しのReddit住民
AIとロボットが今のペースで進むなら、映画『ターミネーター』のT-600くらいは現実的な射程に入ってくる気がしてる。あれ、人間そっくりの皮膚をかぶる前の、ゴムを被せただけで近づけば一発でバレるポンコツ世代なんだよな。つまり人類を追い詰める最初の一台は、たぶんダサい。
※ T-600:映画『ターミネーター』シリーズに登場する殺人ロボットの旧型機。皮膚を模した外装がまだ雑で、人間に紛れても見破られてしまう設定になっている。
19. 名無しのReddit住民
1979年生まれだけど、自分の人生だけでもとんでもない数の変化を見てきたよ。カセットがCDになってDVDになって、今は線もディスクも要らずに流れてくる。電気自動車が一気に増えて、ロケットが自分で降りてきて着陸する。インターネットが現れて、コンピューターとゲームがあそこまで化けて、シリコンの板に回路を印刷するようになった。47年で、あり得ないと言われていたものを何度も見せられてる。
20. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
こっちは1976年生まれ。同じことをしょっちゅう考えるよ。子どものころはSFばかり読んでるオタクだったのに、今これを打ち込んでるこの電話だけは想像したこともなかった。「お前が電卓をポケットに入れて持ち歩く日なんか来ないから、筆算を覚えろ」と言った数学の先生、あれ以上に外した予言もそうそうないと思うよ。
21. 名無しのReddit住民
核融合発電。生きているうちに商売として成り立つほうに賭けている投資家が、けっこうな数いる。ここ5年だけ見ても、参入しているプロジェクトの数が目に見えて増えてるんだよね。学者が夢を語っている段階から、金が実際に動く段階に移ったというのは、それなりに意味のあるサインだと思ってる。
※ 核融合:軽い原子核どうしをくっつけてエネルギーを取り出す仕組み。太陽が光っているのと同じ原理で、重い原子核を分裂させる原子力発電とは逆向きの反応にあたる。
22. 名無しのReddit住民(>>21への返信)
大型の計画が進んでるのも、この10年で小さなベンチャーが一気に増えたのも知ってる。知ってるんだけどさ、こっちは1980年からずっと「核融合はあと20年で実用化される」という同じ台詞を聞かされ続けてるんだよ。頼むから急いでくれ、このままだとこっちが先に歳を取る。
23. 名無しのReddit住民
商用炉の試験プラントは2030年代から40年代あたりを目標に置いてる。理論の部分はもう決着がついていて、実験では実際に核融合を起こすところまで来てる。ただし続くのは一瞬で、しかも突っ込んだ分よりエネルギーは減る。残ってる宿題は「長く続けること」と「送電網に繋がる設備に仕立てること」の2つ。どちらも重いけど、もう信じられない話ではなくなった。
24. 名無しのReddit住民
HIVを抑え込めるようになったことを挙げたい。90年代は完全に死の宣告みたいな扱いだったのに、今は付き合っていける病気になった。友人の両親が医者で、家のバーベキューに医者仲間が集まってたとき「HIVと糖尿病、どっちかならどっちを取る」って本気で議論してたのを覚えてる。ひとしきり話した結果、大半がHIVのほうを選んでたよ。
25. 名無しのReddit住民(>>24への返信)
それで言うと自分は糖尿病の根治に一票入れたい。幹細胞を使った治療の話が、ここ数年でかなり面白いことになってる。インスリンを出す細胞そのものを補う方向だから、うまくいけば一生かけて管理する病気から、治る病気のほうへ移る。あの毎日の作業から解放される人がどれだけいるかを考えると、地味だけど破壊力のある進歩だと思う。
26. 名無しのReddit住民
「火星に降り立った最初の人間、その第一声はこれだ」という見出しを新聞で読みたい。あと30年あれば、月に人が住み続けられる基地くらいはできてるかもしれない。まあ、だいぶ願望が混じってる自覚はあるよ。それでも一度くらい、生きているうちに一面をそれで埋めてほしい。
27. 名無しのReddit住民(>>26への返信)
宇宙開発をムダ金だと言う人は、そこで生まれた技術が地上でどれだけ使われてるかを知らないだけだと思う。あと、あれだけの規模の達成のわりに、実は驚くほど安い。国全体の予算の中で宇宙にどれだけ回ってるかを調べると、たいてい思ってたより小さくて拍子抜けするよ。
28. 名無しのReddit住民
もう片鱗は出てるよ。最近のワイヤレスイヤホンには、その場で相手の言葉を訳して耳に流してくれる機能が入ってる。言葉の壁が消えて、しかもこっちは母語ひとつしか喋れないまま、という世界を想像してみてほしい。旅行の話じゃなくて、仕事の相手が突然世界中に広がるという話だからね。
29. 名無しのReddit住民(>>28への返信)
『銀河ヒッチハイク・ガイド』のあの一節を思い出した。「気の毒なバベル魚は、異なる種族と文化のあいだにあった意思疎通の壁をことごとく取り払ってしまったせいで、創造の歴史上のどんなものよりも多く、そして血なまぐさい戦争を引き起こしてきた」というやつ。通じ合えるようになることと、仲良くなることは別なんだよな。※ 『銀河ヒッチハイク・ガイド』:ダグラス・アダムスによるイギリスのSF小説。耳に入れるとあらゆる言語が理解できるようになる「バベル魚」という生き物が登場する。
30. 名無しのReddit住民
薬に頼らずに心の不調を治せるようになること。今の薬は効く人にはちゃんと効くけど、一日中眠いとか感情が平らになるとか、副作用のほうに耐えられなくてやめてしまう人も多い。頭を切らずに、外から磁気や弱い電流を当てて脳の働きを整える研究がここ数年かなり動いてる。派手さはないけど、個人的にはこれが一番ありがたい飛躍かな。
※ 非侵襲的な脳刺激:手術をせず、頭の外から磁気や弱い電流を当てて脳の働きに働きかける治療法の総称。うつ病などで実際に使われはじめている。
まとめ
並んだ予想を眺めていて面白いのは、支持を集めたものの多くが「これから起きること」ではなく「もう始まっていること」だった点だ。研究室で育てた膀胱の移植は20年前に済んでいるし、HIVは実際に死の宣告ではなくなった。月面着陸が特別だったのは、不可能が一夜にして可能に変わる瞬間を全員が同時に見たからで、医療や材料の進歩はもっと地味に、誰も気づかないうちに少しずつ届く。ある日ふと振り返ると、いつの間にか越えていた、という形でしか実感できないのだろう。
同時に、素直に喜べない話も同じくらい出てきた。群れで飛ぶドローン、勝手に脱線するAI、そして技術より先に折れる予算と世論。核融合の「1980年からずっとあと20年」という一言に象徴されるように、期待し疲れた人の声も多い。もうひとつ繰り返し顔を出していたのが、技術が完成することと、それが自分のところまで降りてくることは別の問題だという警戒だ。培養臓器にしても、結局は順番待ちの列が別の場所へ移るだけではないのか、という話になった途端に手触りが変わってくる。
それでも、47年ぶんの変化を数え上げていた人や、電卓を持ち歩く日は来ないと言われた人の書き込みを読むと、実際に生きて越えてきた側の説得力はやはり強い。皆さんは、自分が生きているうちに「まさかこれが実現するとは」と言う番が来るとしたら、どの分野だと思いますか?


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