英語だと説明が一文になってしまうのに、よその言語なら一語で片づく——そんな言葉を挙げていくスレッドが伸びていた。フィンランド語の「下着姿の家飲み」から、ウェールズ語の「もう存在しない故郷への郷愁」まで並ぶなか、日本語もかなりの数が挙がっている。ただし海外の人が覚えている意味と実際の使われ方が微妙にズレているものもあって、そこにツッコミが飛ぶのがまた面白い。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
kalsarikännit(カルサリキャンニット)。フィンランド語で、外に出る予定はいっさいなく、下着姿のまま家で飲むことを指す。一語でここまで状況が限定される言葉、他にちょっと思いつかない。
※ フィンランド語。kalsarikannit と綴られることもある。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
それ、英語だと「うつ」って一語で言えるやつじゃないか。笑ったけど、よく考えたら笑えなくなってきた。3. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
ハワイに住んでる。下着でごろごろしてるのは、こっちだと正装に近い。シャツを着ているところを一度も見たことがない地元の友達が何人もいる。妻に「今日お客さん来るよ」と言われて、そこで初めてズボンを履く。それがうちの超フォーマルだ。
4. 名無しのReddit住民
サウナもそう。英語に該当する単語がないから、結局フィンランド語をそのまま借りてきて使ってる。英語圏の人間が何の抵抗もなく口にしてる外来語の代表格だと思う。
5. 名無しのReddit住民
Schadenfreude(シャーデンフロイデ)。他人の不幸を見たときに、じわっと湧いてくるあの快感のこと。かなり悪趣味な感情なのに、名前がついた瞬間に急に市民権を得た感じがする。
6. 名無しのReddit住民(>>5への返信)
ドイツ人、本当に何にでも単語を用意してるよな。感情の隙間という隙間を、全部埋めにきてる。7. 名無しのReddit住民(>>5への返信)
正直これ、もう英語の借用語みたいな顔をして居座ってる。ニュースを見てると週に何度も出てくるし。ちなみに epicaricacy っていう英語もあるにはあるんだけど、実際に使ってる人を見たことが一度もない。
8. 名無しのReddit住民
案の定この手のスレはシャーデンフロイデで埋まる。悪い単語じゃないんだけど、そろそろ別のが聞きたい。みんなもう少しひねってこようよ。
9. 名無しのReddit住民
sobremesa(ソブレメサ)。食べ終わって皿が空になったあとも、そのままテーブルに残って延々しゃべり続けている時間のこと。あの時間に名前があると知ってから、急に大事なものに思えてきた。
10. 名無しのReddit住民(>>9への返信)
ブラジルのポルトガル語だと、sobremesa はデザートの意味になるんだよな。綴りは同じなのに、片方は時間で片方は皿の上にある。
11. 名無しのReddit住民
hygge(ヒュッゲ)。デンマーク語で、暖炉の前で本を読んでいるときの満ち足りた感じ、友達と囲む食卓で感じる「ここにいていい」という感覚、家族と過ごした一日の後のゆるんだ気分——全部これ一語で入る。cozy が一番近い訳だけど、半分くらいしか合ってない。
12. 名無しのReddit住民(>>11への返信)
オランダ語の gezellig(ヘゼリヒ)にかなり近い気がする。人が集まっている場の空気そのものを褒める言葉で、店に対しても、その夜に対しても使える。
13. 名無しのReddit住民
hiraeth(ヒラエス)。ウェールズ語で、もう存在しない故郷、あるいは最初から存在しなかった故郷に対する郷愁のこと。行ったこともない場所を恋しがる気持ちに、わざわざ名前がついているのがすごい。
14. 名無しのReddit住民(>>13への返信)
同じウェールズ語に cwtch もある。発音は「クッチ」に近い。ハグそのものと、身を寄せられる小さな居場所と、その両方を指す。ウェールズ語、訳せない感情の言葉がやたら多い。
15. 名無しのReddit住民
l’esprit de l’escalier(レスプリ・ド・レスカリエ)。直訳すると「階段の機知」。会話がとっくに終わって、階段を降りているころに完璧な切り返しを思いつく、あれ。名前がついているのが救いでもあり、余計に腹立たしくもある。
16. 名無しのReddit住民
ドイツ語の Übermorgen と Vorgestern。前者が明後日、後者が一昨日。英語だと the day after tomorrow、the day before yesterday と毎回長々言うしかない。この二語が無いことに、英語話者は普段気づいてすらいないと思う。
※ 日本語の「明後日」「一昨日」にあたる語。英語には一語の言い方がない。
17. 名無しのReddit住民(>>16への返信)
Doch も足しておいてほしい。否定された内容をひっくり返して「いや、そうなんだって」と言い返すのを、たった一語でやる。英語だと必ず文にしないと成立しない。
18. 名無しのReddit住民
ドイツ語は殴り合いみたいに単語をつなげて作る。Backpfeifengesicht は「一発叩かれて然るべき顔」、Elefantenrennen(象のレース)は高速道路でトラック同士がのろのろ追い越しをかけ合っているあれ、Kampfzwerg は直訳すると「戦闘ドワーフ」。うちは夫婦そろって祖先がドイツで、自分が193センチ、妻が163センチなので、最後のやつを口にするときはかなり気をつけている。
19. 名無しのReddit住民
chuunibyou(中二病)。日本語の俗語で、思春期に、まわりと違う自分を演出しようとして妄想じみた設定を背負い込む時期のこと。名前がついているというだけで、自分の過去が一気に恥ずかしくなる。
20. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
中二病って、直訳すると「6年生の病」みたいな意味じゃなかったっけ。どっちにしても響きが面白い言葉だ。21. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
中二は中学2年生のことだから、だいたい14歳。英語圏で言えば8年生あたりで、6年生ではない。だからこそ、あの一年だけをピンポイントで名指ししているのが効いてるんだよ。
22. 名無しのReddit住民
komorebi(木漏れ日)。木の葉の隙間を抜けて差してくる、あの光そのものを指す言葉。日本に行ったときにちょうどいいのが撮れたのに、ここは画像が貼れないのが本当に惜しい。使う字は木・漏れ・日で、光ではなく「日」なのが個人的に好きだ。
23. 名無しのReddit住民
kintsukuroi(金繕い)。割れた器を金の漆でつなぎ直すこと。壊れたからこそ美しい、という考え方が言葉ごと残っている。
24. 名無しのReddit住民(>>23への返信)
日本語だと、その言葉自体は金の漆で継ぐ修復の技法を指してる。金継ぎとも言う。壊れたからこそ美しい、というのはその技法にあとから乗っかった解釈のほうで、器を直している職人が毎回そこまで考えてるわけじゃない。とはいえ、その解釈があったからこそ海外まで届いたんだろうな。
25. 名無しのReddit住民
お疲れ様(otsukaresama)。字面を追うと「あなたはお疲れになった」で、疲れているのはよく働いた証拠だ、という前提が言葉に埋まってる。挨拶に労いが混ざってるのがいい。
26. 名無しのReddit住民(>>25への返信)
実際に使われてるのは、ほぼ挨拶。退勤するときも、廊下ですれ違ったときも、メッセージの書き出しにも「おつかれ」で始まる。相手が本当に疲れてるかどうかなんて誰も見ていない。最初に習うと重い言葉に感じるけど、実物はもっと軽い。
27. 名無しのReddit住民
nekojita(猫舌)。直訳すると「猫の舌」で、熱いものを口に入れられない人のこと。ハンドルネームに使うくらい、まさに自分のことだ。もうひとつ好きなのが kuchisabishii(口寂しい)で、腹は減ってないのに口が手持ち無沙汰だから何か食べてしまう、あれ。
28. 名無しのReddit住民
フィリピン語からいくつか。kilig は胸がいっぱいになって身体まで震えるときめき。gigil は可愛すぎて震えて、思わずぎゅっと潰したくなる衝動(腹が立ちすぎて震えるときにも使う)。basta は万能で、「もうそういうものなの、以上」と会話を打ち切るときにも、新人にルールの理由を聞かれて肩をすくめるときにも使える。
29. 名無しのReddit住民
韓国語の정(jeong)。漢字を当てるなら「情」。一緒に時間を過ごしているうちに、いつのまにか積み上がってしまう結びつきのこと。love や affinity と訳されがちだけど、そんな熱いものじゃない。人にも場所にも、毎日の習慣にすら湧く。第一印象が剥がれ落ちたあとに残る、静かなやつだ。
30. 名無しのReddit住民
ポルトガル語の saudade(サウダージ)。もういない人や失くしたものを恋しく思う気持ち。I miss you でも一応訳せてしまうんだけど、専用の名詞があるというだけで、その感情に居場所ができる気がする。名前がついていないせいで無かったことにされている気持ちって、案外多いんじゃないかな。
まとめ
並んだ言葉を眺めていくと、多くが「状況」ではなく「その状況で人が感じている気分」に名前をつけたものでした。カルサリキャンニットもヒュッゲもソブレメサも、やっていること自体は世界中どこにでもあります。名前があるかどうかで変わってくるのは、その時間を大事に扱えるかどうかのほうなのかもしれません。
日本語がこれだけ挙がったのも意外でしたが、同時にズレも目立ちました。中二病を「6年生の病」と覚えていたり、金繕いを最初から哲学だと思っていたり、お疲れ様を重い労いの言葉だと構えていたり。海外に届く途中で実用的な部分が削れて、詩的な部分だけが残るようです。逆に言えば、英語話者が Übermorgen を惜しがっているのと同じ感覚で、私たちも自分の言葉の便利さには気づいていません。明後日も一昨日も、当たり前に一語で済ませているのに。
皆さんが「これ英語だと一語で言えないのか」と驚いた言葉、あるいは逆に「日本語にこそ欲しい」と思った外国語はありますか?


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