「生きている人間から嗅いだ、いちばんひどい匂いは?」——r/AskReddit に立ったこのお題に、歯科医、看護師、介護職、スーパーのレジ係、そして「自分がその匂いを出していた側」だった人まで集まって、3000件を超えるコメントがついた。笑うしかない話もあるし、匂いの向こうに誰かの生活がまるごと透けて見える話もある。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
歯科医をやってる。急患で来た人が「肉の歯が痛いんです」と言うんだ。最初は意味が分からなかった。見てみると下の小臼歯が大きく欠けていて、その欠けてできた穴に食べ物を詰めて「後で食べる用に取っておいた」らしい。穴の底から出てきたのは二週間前の鶏肉だった。匂いが部屋の中のもの全部に染み込んだ。俺は口の中に吐いて、それを飲み込んで、部屋を出るしかなかった。学生時代に献体で解剖実習をやってるんだけど、あのときの匂いですら、あの鶏肉の足元にも及ばない。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
「後で食べる用に取っておいた」のところで一回スマホを置いた。人体の話だと思って読み始めたのに、途中から冷蔵庫の話になってるじゃないか。3. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
解剖実習より上って、それもう医療の記録じゃなくて兵器の記録では。歯科医って一年に何回こういうのを引くことになるんだ。
4. 名無しのReddit住民
5歳から10歳まで同じクラスだった女の子。親が明らかに面倒を見ていなくて、髪も洗ってないし、着てくる服は一着きりで洗濯された形跡もなかった。だからいつも、酸っぱくて古い、独特の匂いがしていた。一度隣の席になったときは本気で意識が飛びかけた。先生たちが何か手を打ったのかは分からない。打っていたとしても、何ひとつ変わらなかった。ただ、クラスの誰もその子を責めたりからかったりしなかったのは覚えてる。子どもなりに、これはあの子のせいじゃないって全員が分かっていた。今どこで何をしてるかは知らないけど、元気でいてほしい。
5. 名無しのReddit住民(>>4への返信)
自分はその「匂う子」の側だった。11歳のとき教頭に呼び出されて「君の家は農場なのか」と聞かれた。農場じゃない。洗濯機を使わせてもらえなかっただけだ。家の洗濯物は全部同じ匂いがしていたし、親はやってくれなかった。自分で風呂に入るときは、浴室の内側にありったけの鍵とつっかえ棒をかけてから入っていた。父が本当に怖かったので。今でもあのときの教頭の顔を思い出す。6. 名無しのReddit住民(>>4への返信)
うちの学校は逆だった。同じような子がいたけど、そいつは性格もきつくて、みんな容赦なく攻撃していた。責められない。全方位から殴られていれば性格も曲がる。でも一番きつかったのは、その子が廊下を通り過ぎた後で、教頭ともう一人の男の先生が顔を見合わせてニヤついていたことだ。あれ、完全にいじめっ子の顔だった。
7. 名無しのReddit住民
スーパーでレジをやってる。いちばんきついのは、お風呂に入れていないお年寄り。腐ったような匂いがして、正直えずくのをこらえてる。でも何も言えない。もう一人では湯船に入れないのかもしれないと思うと、気まずい思いをさせたくない。だから息を止めて、できるだけ早く会計を終わらせる。同世代の相手なら言う。夫にも「今日臭いよ」と普通に言う。10分あれば直せることだから。お年寄りのそれは、10分では直せない。
8. 名無しのReddit住民
訪問介護をしていたとき、寝たきりの女性の家に行ったら、二日前に漏れた便がそのまま放置されていた。シーツも床も本人も全部。私たちが行かない日は同居人が世話をする約束だったのに、その人は誰にも言わずに旅行に出ていた。汚物の始末には慣れてるつもりだったけど、あれだけは今も忘れられない。何より、その女性がずっと「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝り続けていたのがこたえた。全部きれいにするのに一時間半かかった。
9. 名無しのReddit住民(>>8への返信)
介護8年目。匂いには慣れる、というより鼻の方が途中で諦める。血も膿も便も、今はほとんど何も感じない。ただ一つだけ慣れないのが、あなたが書いてる「放置された時間の匂い」。あれだけは体が拒否する。誰も来なかった何日分かが、そのまま匂いになってるから。
10. 名無しのReddit住民
高校のとき、前の席の男子がいつもダボダボのパーカーを着ていた。一度も洗ってないんじゃないかというレベルの匂いで、その授業だけは早めに教室に行って、バレない範囲で彼の椅子をこっそり前に押しておいた。今思うと相当ひどいことをした。彼について他に覚えてるのが「毎日2リットルの炭酸をラッパ飲みしてた」ことだけなのも、我ながらどうかしてる。
11. 名無しのReddit住民
部屋の反対側から人を倒せる口臭の同僚がいる。話しかけられたらまず息を止める、という癖が完全についた。しかも朝はずっとコーヒーをズズッとすすってる。匂いと音の二重奏で、正直あの席の並びを決めた人を恨んでる。
12. 名無しのReddit住民(>>11への返信)
電車で「これトイレが壊れてるな」と確信していたことがある。降りるために立ち上がって気づいた。トイレじゃなくて、後ろの席の人の息だった。あの瞬間の頭の切り替わり方は一生忘れない。
13. 名無しのReddit住民
隣の席だった同級生の息。いつも何かが腐ったような匂いで、質問するのをできるだけ避けていた。今思えば扁桃結石だったんだと思う。すごくいい奴だっただけに、避けている自分のことがずっと嫌だった。どう伝えればいいかなんて、当時の自分に分かるわけがなかった。
※ 扁桃結石(膿栓)=喉の奥のくぼみに食べかすや細菌が固まってできる白い粒。本人に自覚がないまま強い口臭の原因になることがある。
14. 名無しのReddit住民
看護師。正直に言うと、亡くなった人より匂う生きている人はいる。仕事柄、匂いは診察の一部で、C.ディフィシル、ケトン、緑膿菌あたりは部屋に入った瞬間にだいたい分かる。それでも一番きつかったのは、失敗した皮膚移植が二週間以上包帯の中に放置されていたやつ。包帯はぐっしょり濡れていて、その部屋にいた全員が「平気なふり」を完全にやめた。目からは涙が出るし、みんなえずいてた。壊死と緑膿菌が同時に来ると、人間の側に勝ち目はない。
※ C.ディフィシル=抗菌薬の使用後などに腸で増える細菌。独特の匂いの下痢を起こす。
※ ケトン臭=糖尿病などで体が糖をうまく使えないときに出る、甘酸っぱい果物のような匂い。
※ 緑膿菌=傷口や熱傷に付きやすい細菌。感染すると青緑色の膿と甘ったるい匂いが出る。
15. 名無しのReddit住民
救急外来で実習していたとき、糖尿病の患者さんの敗血症。教科書に「特有の匂いがある」と書いてあった意味を、ドアを開けた瞬間に理解した。あれ以来、あの匂いだけは廊下の反対側からでも分かるようになってしまった。分かるようになりたかったわけじゃないのに。
※ 敗血症=感染に対する体の反応が暴走して臓器の働きが落ちる、命に関わる状態。糖尿病があると足の小さな傷などから起こることがある。
16. 名無しのReddit住民
外傷病棟で働いてた。壊疽。生きてはいた。かろうじて。あの匂いを嗅いだ日は、家に帰って着ていたものを全部洗って、それでもまだ髪から匂う気がして二回シャワーを浴びた。
※ 壊疽=血流が途絶えるなどして体の組織が死に、腐っていく状態。
17. 名無しのReddit住民
嗅がされた側の話ばかりだから書くけど、自分は「匂う側」だった。乳房の切除手術のあとに虚血性壊死と感染を起こして、抗生剤を打ちながら、どこまでの組織が死ぬのかが確定するのを待つ期間があった。つまり自分の肉が腐っていく匂いを、何週間も自分で嗅ぎ続けたということ。死んだ部分を取り除いて閉じる二度目の手術が終わったとき、痛みより先に「匂いが消えた」で泣いた。
※ 虚血性壊死=血流が足りずに組織が死ぬこと。手術後、どこまでが助かってどこからが駄目なのかが、数週間かけてはっきりしてくることがある。
18. 名無しのReddit住民(>>17への返信)
このスレをずっと読んでたけど、嗅いだ側の話しか頭になかった。自分がその匂いの発生源で、しかもそこから逃げられないという状況を、一度も想像したことがなかった。二度目の手術、無事に終わって本当によかった。
19. 名無しのReddit住民
私はがんの匂いが分かる。正直この体質はいらなかった。他のどんな匂いとも違う、はっきりした腐敗の匂いで、間違えようがない。一度、旅行に行く飛行機の搭乗列で、前に立っていた男性から強烈にそれがした。本人は知ってるんだろうか、と思ったけど、何と言えばいい?「すみません、がんの匂いがするので検査を受けてください」なんて言えるわけがない。この旅行がその人にとって最後の旅行なのかな、とだけずっと考えていた。隣にいた夫は何も感じていなかった。私にはこんなに強く匂うのに、どうして他の人には分からないのか、いまだに理解できない。
20. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
犬にがんを嗅ぎ分けさせる訓練の話は聞いたことがある。人間でも分かる人がいるのか。分かったところで本人には言えない、というのが一番しんどいところだな。
※ 病気によって体から出る揮発性の成分が変わることは以前から研究されていて、犬にがんを嗅ぎ分けさせる研究も各国で行われている。
21. 名無しのReddit住民
15年ほど前、父(故人)に「背中のこれを見てくれないか」と頼まれた。昔できものが感染して医者に処置してもらったことがあって、それがまた出てきたらしい。熱もあって明らかに具合が悪いのに、保険がないから救急には行きたくないと言う。日の当たる庭で見せてもらったら、オレンジくらいの大きさの真っ赤な塊だった。私は医療関係者でも何でもないが、消毒用アルコールと縫い針とカミソリと手袋を用意して、覚悟を決めて父を座らせた。針の先を軽く当てただけで中身が噴き出して、私はその場で吐いた。そこから風向きを計算し直して、使った紙は全部その場で燃やした。一時間押し続けて、最後に血が出てきたときは本当にほっとした。あの匂いを超えるものには、今日まで出会っていない。
※ アメリカには日本のような国民皆保険がなく、無保険だと救急外来を一度受診しただけで高額な請求が来ることがある。受診をぎりぎりまで先送りする人は珍しくない。
22. 名無しのReddit住民
母が肝硬変で亡くなる前、肝臓が処理できなくなった毒素を体の外に出す薬を飲んでいた。出す、というのは文字通りの意味で、母はほとんどトイレにいた。匂いはひどかったけれど、あれは薬が効いている証拠でもあったから、家族の誰も文句を言わなかった。今はもう匂いより、あの家の静けさの方をよく思い出す。
※ 肝臓が分解できなくなったアンモニアなどの毒素を、便として排出させるための薬。飲むと排便の回数が大きく増える。
23. 名無しのReddit住民
父ががんで、何度か人工肛門をつけていた時期があった。責める気なんてまったくない。ないんだけど、袋を替えるときの匂いだけはどうにもならなかった。息を止めている自分のことが、そのたびに少し嫌になる。
※ 人工肛門(ストーマ)=手術でお腹に作る便の出口。専用の袋で受けるしくみで、交換のときにどうしても匂いが出る。
24. 名無しのReddit住民(>>23への返信)
うちも同じだった。父が毎回「臭いだろ、ごめんな」って先に言うんだよ。こっちが平気な顔をしていても言う。匂いより、その一言の方が何倍もきつかった。
25. 名無しのReddit住民
去年ひどい胃腸炎になって、自分がトイレを出た直後に自分で吐きそうになった。これが自分の体から出たものだと本気で信じられなかった。他人の話を笑ってたけど、条件さえ揃えば誰でもこうなるんだと思い知ったよ。
26. 名無しのReddit住民
プロテインを飲み始めてから、自分のおならが完全に武器になった。メキシコ料理と茶色い瓶のビールを組み合わせた日は、壁の塗装が剥がれるレベルのやつが出る。このスレで被害者ヅラをする資格は自分にはない。
27. 名無しのReddit住民
メントールアレルギーだからという理由で、まったく歯を磨いていない同僚がいた。メントール抜きの歯磨き粉なんて普通に売ってるんだよ、と何度言おうとしたか分からない。結局言えないまま、彼女の歯は一本ずつ駄目になっていった。
28. 名無しのReddit住民(>>27への返信)
うちの職場はそれで人事が本人と面談して、歯医者に行くよう伝えたことがある。治療のあと、匂いはたしかに消えた。ただ、その人はそれ以来ほとんど誰とも喋らなくなった。何が正解だったのか、今も分からない。
29. 名無しのReddit住民
同僚が「昼休みが短いから」という理由で、ゆで卵とウインナーの缶詰をトイレの個室に持ち込んで、便座に座ったまま食べていた。時間を節約できたのは彼一人で、そのフロアの全員が代わりに一日分の何かを失った。
30. 名無しのReddit住民
自転車通勤の同僚が、ある朝スカンクの直撃を食らったまま出社してきた。彼は「一度も病欠したことがない」のが自分のアイデンティティだったので、今日ばかりは階段で降りて自転車で帰って洗濯してこい、と納得させるのに全員でかなりの時間を使った。
※ スカンクは危険を感じると強烈な悪臭の液体を噴射する。日本には生息していないが、北米では通勤路の茂みで遭遇することも珍しくない。
まとめ
読んでいて気づくのは、強烈な匂いの話がほとんど「その人のだらしなさ」の話になっていないことだ。歯科医の肉の歯のような笑うしかない例外を除けば、出てくるのは治療されなかった傷、二日間放置された寝たきりの人、洗濯機を使わせてもらえなかった子ども、保険がないから救急に行けなかった父親。匂いはあくまで結果で、その手前にあるのはたいてい、本人ひとりでは片づけられない何かだった。
もう一つ印象に残るのは、現場で働く人ほど匂いを情報として扱っていること。看護師が部屋に入った瞬間に感染を言い当てるように、彼らにとってあれは不快さである前に、体の中で何が起きているかを教えるサインだ。そして同じ人たちが、レジに並んだお年寄りには何も言わずに息を止めることを選んでいる。伝えて直せることなら伝える、直せないなら黙る——この線引きがあるおかげで、荒れてもおかしくないお題が最後まで人間くさい話のまま終わっていた。
皆さんは、誰かの匂いに気づいたとき、伝える派ですか? それとも黙って息を止める派ですか?

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