「30年以上医師を続けてきた人に聞きたい。駆け出しのころは標準だったのに、今思うとぞっとすることは?」――海外掲示板のこの質問には、医師だけでなく、獣医、当時患者だった人、その家族からも証言が集まった。心臓発作に祈るしかなかった時代、お腹を大きく切り開くのが当たり前だった手術、診察室でタバコを吸う医者。ほんの数十年で医療の「普通」がどれだけ入れ替わったのか、苦笑いまじりの回想が続く。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
昔は、心臓発作を起こした患者を前にして、「どうか重いやつじゃありませんように」と願いながら見守るしかなかった。こっちにできたのは、モルヒネと酸素、あとは祈ることだけ。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
うちは心臓発作の多い家系でね。祖母は40歳くらいで亡くなってる。一度発作を起こして入院してたのに、病院の中で2回目が来て、そのまま助からなかった。当時は本当に手の打ちようがなかったんだ。
それから30年ほどたって、祖母の子どものうち3人が同じ発作を起こした。でも全員が2〜3時間のうちにステントを入れてもらって、助かってる。医療があのころのままだったら、自分は親1人と、おじ・おば2人をなくしてたことになるよ。※ ステント:狭くなったり詰まったりした血管を内側から広げて支える、網目状の小さな金属の筒。
3. 名無しのReddit住民
腎臓を提供したことがある。そのとき主任の外科医に言われたのが、「昔は患者をチョコレートの箱みたいに開けてたんだよ」。ものすごく大きな傷あとが残って、リハビリに半年かかったそうだ。
自分は48時間で退院。しかも後半の24時間は、ほぼ居なくてもよかったくらい。重い物を持つのは半年禁止されたけど、痛み止めが要るほどの痛みは2週間で終わったよ。
4. 名無しのReddit住民(>>3への返信)
父は若いころに腎臓をひとつ取ってる。本人いわく「キノコが生えてたから」だそうだ。そのときの傷あとがとんでもなく大きくて、お腹の真ん中から背中の中央まで続いてる。
5. 名無しのReddit住民
医者になって20年近くになる。「オキシコンチンに依存性はない」と教わった時代を、今でも覚えてるよ。それが今じゃ、手術を終えた患者に効き目の短い麻薬系の痛み止めを1回処方しただけで、若い同僚から麻薬の売人みたいな目で見られる。
※ オキシコンチン:医療用麻薬(オピオイド)に分類される強い痛み止め。アメリカでは、処方された薬をきっかけに依存に陥る人が相次ぎ、過剰摂取による死亡が大きな社会問題になった。
6. 名無しのReddit住民
医者じゃなくて、診てもらった側の話。5歳のとき、ADHD(当時はADDとも呼ばれてた)の検査に回された。そこで小児科の先生に言われたのが、「女の子はADHDにならない。なるとしても男の子っぽい子で、その場合も多動の形では出ない」。
その先生は、私が大人になってから、自分の口で謝ってくれた。小さな町だから、先生は私が通う教会の役員でもあったんだよね。勉強し直して自分が間違っていたと分かった、あれから何度も君のことを思い出しては、あの瞬間に君の力になれなかったと感じてきた、って。そうやって非を認めてくれる医者でよかったと思ってる。
7. 名無しのReddit住民(>>6への返信)
ひどい扱いを受けた側にとっては、相手に「間違ってた」と認めてもらえるだけで、ずいぶん救われるものだよ。
8. 名無しのReddit住民
こっちも患者側。もう笑うしかない話なんだけど、思春期に初めて婦人科の内診を受けたとき、担当の先生の指はニコチンで黄ばんでた。手袋もなし。しかも診察室でタバコを吸ってたんだよ。いい時代だったね、まったく。
9. 名無しのReddit住民(>>8への返信)
70年代に子どもだったけど、うちのかかりつけの先生は診察室でパイプをふかしてた。理由は「紙巻きタバコほど体に悪くないから」。10. 名無しのReddit住民(>>8への返信)
アメリカ以外の国で医者をしてる。アメリカでは10代の女の子に内診をするのが普通らしい、と最近知って、心底ぞっとした。どこも悪くない子に、なぜそれが当たり前のように行われるのか、まったく理解できない。アメリカの医療は本当に変わってるよ。11. 名無しのReddit住民(>>10への返信)
アメリカの医者だけど、一般論としてはそれは違うよ。子宮頸がん検診のような目的での内診は、21歳から始めるのが推奨されてる。それより若い人にやるのは、症状があって病気が疑われるときなど、検診以外の理由がある場合だね。12. 名無しのReddit住民(>>11への返信)
医者ではないけど、婦人科系の疫学を専門にしてる。その指針が変わったのは2009年。それより前は、18歳か、性交渉を持つようになった時点から、毎年の検診と内診を受けるよう推奨されてた。しかも、変更を無視した医者はたくさんいたんだ。数年前、うちの姪は17歳でピルを始めるのに内診を受けさせられてる。
歴史としては本当にひどいし、明らかに私たちの失敗。なのにアメリカの医者は、指針が変わったことを盾にして、その過去を語りたがらないことが珍しくない。※ 2009年の変更:米国産科婦人科学会が、子宮頸がん検診を始める年齢を「21歳から」に改めた。
13. 名無しのReddit住民
消化器の話。今は潰瘍にクリップをかけて治療できるけど、昔は同じ潰瘍のために、胃の半分と、その先の腸の最初の部分まで切り取ってたんだよ!
※ 口から入れた内視鏡の先から小さな金属のクリップを出し、出血している潰瘍を挟んで止める処置のこと。
14. 名無しのReddit住民
こっちは人間の医者じゃなくて獣医。昔は、整形外科以外の手術は全部素手でやってた。避妊手術では、卵巣を取ったあとの根元を縛るのに、縫合用の糸じゃなく結束バンドを使って、しかもそのまま体の中に残してた。術後の痛み止めは決まって出すものじゃなかったし、子犬の尻尾も切り落としてた。
痛み止めを使わなかったことと断尾のことは、今思い出しても気分が悪くなる。
※ 断尾:犬種ごとの「標準的な見た目」に合わせるなどの理由で、子犬のうちに尻尾を短く切る習慣。
15. 名無しのReddit住民(>>14への返信)
結束バンドを体の中に残す?ホームセンターで売ってる、あれのこと?まわりの組織がどれだけ固くなって、あとからどれだけ痛むのか想像もつかない。人間に使えないものを、なぜほかの哺乳類になら使っていいと思えたんだろう。
16. 名無しのReddit住民
前に何かで読んだ話なんだけど。80年代には、手術を受ける赤ちゃんの多くが、体を動かなくする薬だけを使われて、ちゃんとした麻酔はしてもらえなかったらしい。赤ちゃんは痛みを感じない、と医者が信じてたからだって。
※ 新生児は痛みを感じにくいという考え方は1980年代後半に見直され、現在は赤ちゃんの手術でも麻酔や痛み止めを使うのが標準になっている。
17. 名無しのReddit住民
インターセックスの子どもへの、かつての「治療」も、今の基準で見れば野蛮だよ。親に性別を選ばせて、まだ話すこともできない年齢の子に性器の手術をする。そういうレベルの野蛮さだった。
※ インターセックス:生まれつき、体の性の特徴が典型的な男性・女性のどちらにも当てはまらない状態のこと。日本の医療では「性分化疾患」と呼ばれる。
18. 名無しのReddit住民
70歳を超えた女性で、子宮も卵巣も全部そろってる人を、私はほとんど知らない。ちょっと不調が出ただけで、あっさり子宮を取ってしまう。あの決断の速さは、今思うと信じられないよ。
19. 名無しのReddit住民(>>18への返信)
それだけじゃなくて、お腹を開けたついでに卵巣まで一緒に取ってたからね。母は33歳で全摘手術を受けた。執刀したのは産婦人科医じゃなく、かかりつけの一般医。急に更年期の症状が来てひどく苦しんでたら、その医者は「じゃあ、ホルモン剤が欲しいってことかな?分かった」と言って処方箋を書いたそうだ。
私自身も、30代後半から40代前半にかけて子宮内膜症と大きな筋腫があって、医者には全摘を勧められた。理由は「悪くなることもあるし、もう要らないものだから」。でも当時は家に子どもがいるシングルマザーで、働いてもいたから、大きな手術のために休みを取るなんて無理だった。結局、56歳で自然に閉経。ほてりも気分の波もなくて、体調がよくなって痛みが消えただけ。今は80代だけど、全部そろったままだよ。
20. 名無しのReddit住民
36歳で卵巣に嚢胞ができたとき、「どうせお腹を開けるんだから」と、子宮を取ることまで勧められた。びっくりして、「生まれたときに持ってた部品は、なるべくそろえたままこの世を去りたいんです」と口走ってたよ。なぜそんな言い方になったのかは自分でも分からない。とにかく子宮は取りたくなかった。
結果的には、それでよかった。41歳のとき、当時まだ新しい技術だった体外受精でひとり息子を授かったから。開院したばかりのクリニックの、最初の患者だったんだ。
21. 名無しのReddit住民
90年代に、胃を小さくする手術を受けた。足の付け根の上あたりから胸骨までを縦に切って、医療用ホチキスの針50本で留めたんだ。お腹には今も、長さ13インチ(約33センチ)の、線路みたいな傷あとが縦に走ってる。今なら小さな穴を、せいぜい2つか3つ開けるだけで済むのにね。
22. 名無しのReddit住民
腹腔鏡手術が登場したことを考えてみてよ。昔は大がかりに切り開いて、治るまでずっと長くかかってた手術の多くが、今は小さな切り口から器具を入れるだけで済む。
うちの父は3年ほど前、ごく早い段階の大腸がんが見つかった。治療は、腸をほんの数インチ(10センチ前後)切り取ってつなぎ直すだけ。それも腹腔鏡でやってもらえた。昔なら大きく切開して、回復にもっと時間がかかって、お腹の中が感染にさらされる危険も大きかったはずだよ。
※ 腹腔鏡手術:お腹に小さな穴をいくつか開け、そこからカメラと細い器具を入れて行う手術。
23. 名無しのReddit住民
麻酔がなかった時代までさかのぼると、ロバート・リストンという外科医は、手足の切断手術が誰よりも速かったそうだ。ただ、速すぎて、助手の指まで一緒に切り落としたことがあるらしい。調べ始めると止まらなくなるから、時間のあるときにどうぞ。
24. 名無しのReddit住民(>>23への返信)
出た、「1回の手術で死亡率300%」の人。医学の昔話になると、必ず誰かが持ち出す伝説だよね。※ ロバート・リストンは19世紀イギリスの外科医で、麻酔のない時代に手術の速さで知られた。「助手の指を切り落とし、患者・助手・見物人の3人が亡くなって死亡率300%になった」という話は有名だが、後世の本で広まったもので、当時の記録による裏付けは確認されていない。
25. 名無しのReddit住民
大腸内視鏡も胃カメラも、昔は鎮静剤なしでやるのが普通だった。意識がはっきりしたまま、あの管を入れられてたわけだ。
26. 名無しのReddit住民(>>25への返信)
え、胃カメラなら去年も鎮静なしで受けたんだけど…。国や病院によっては、今でもそっちが普通じゃない?涙目でえずいた記憶がよみがえって、「それ、昔話じゃないんだが」ってなってる。
27. 名無しのReddit住民
自分はまだ医者になって10年だけど、その短い間にも画像検査の数は跳ね上がった。患者の体を実際に診て判断する、昔ながらの診察が廃れていくみたいで、ちょっと寂しくなることがある。「とりあえずCTを撮って、何もなければ帰ってもらおう」ってね。
28. 名無しのReddit住民(>>27への返信)
その一方で、うちの父は医者4人に診てもらって、MRIを2回、CTを1回撮ったのに、腎臓にできてた5×7センチのかたまりを誰にも見つけてもらえなかった。最後の医者がエコー検査の最中に「何かおかしい」と気づいて、確認のためにもう一度CTを頼んで、ようやく分かったんだ。
身内の話だから偏ってるのは承知のうえで言うけど、診察の技術は廃れないでほしい。自分が何を見ているのか分かってる専門家がいなければ、画像なんて何の役にも立たないんだから。
29. 名無しのReddit住民
今かかってる病気のことで、「40年以上前に、これで手術を受けたことがあるんです」と主治医に話した。先生は文字どおり手を止めて、振り返って、ぎょっとした顔で私を見たよ。
そう、あの手術は本当はやるべきじゃなかったし、やったせいでかえって悪くなった。今はそれが分かってるだけ、ありがたいと思ってる。
30. 名無しのReddit住民
ここまで読んで思うのは、今の「標準治療」のどれかも、30年後の医者に同じ顔をされるんだろうな、ってこと。それがどれなのか今の自分たちには分からないのが、いちばん怖いところだけど。
まとめ
並んだ話をたどると、変化の軸は大きく3つある。ひとつは「切る範囲」。お腹を端から端まで開いていた手術が、腹腔鏡や内視鏡のおかげで小さな穴いくつかで済むようになった。ふたつめは「痛みへの考え方」で、赤ちゃんや動物の痛みが軽く見られていた時代は、そう遠い昔ではない。3つめは「不調があるなら取ってしまえばいい」という発想で、子宮や卵巣の摘出をあっさり勧められたという話が、当事者とその家族から続いた。
一方で、進歩は一直線でもなかったようだ。依存性はないと教えられた痛み止めが社会問題になり、今度は手術後の患者に出すだけで白い目で見られる。画像検査が増えるほど、体を診る技術が細っていく。振り子は、行きすぎてから戻ってくるものらしい。ちなみに鎮静剤なしの胃カメラは、日本では今も珍しくない。「昔の標準」と「今の標準」の境目は、国によっても違う。
皆さんは、親や祖父母から聞いた「昔の病院」の話で、いまだに忘れられないものはありますか?

コメント
筋無力剤を使う以前の傷口は大きかったからな。
オイラでも理由を知っていたりする。
全身麻酔の後遺症ガーってのも筋無力剤以前の話。