エルメス、ルイ・ヴィトン、シャネル、ロレックス——ああいう店に立っている販売員は、自分が売っている物を買えるのか。r/AskReddit にこの質問が投げられると、業界の内側にいた人たちが次々と手の内を明かし始めた。社員割引の実額、歩合で跳ねる年収、そして「あそこで働くと欲しくなくなる」という妙に一致した証言まで出てくる。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
昔、この手の高級品を扱うウェブプラットフォームに技術を提供してた。友人がそこの技術ディレクターだったから、軽い気持ちで「社割ってあるの?」って聞いたんだよ。返ってきた答えが「あるよ、バッグは50%オフ。でも1個18,000ドルだから、半額でも結局買えない」。
※ 18,000ドルは約270万円(1ドル=150円換算、以下同じ)。半額でも約135万円。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
9,000ドルのバッグでも、入ってるのは結局、家の鍵と噛みかけのガムなんだよな。それは3,000円のトートバッグでも何ひとつ変わらない。
3. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
社員割引って本来は「うちの商品が自分の生活圏に入ってくる」ための特典のはずなんだけど、その50%オフはウィンドウショッピングがちょっとだけ楽しくなる権利でしかないな。値札の桁がまるで動いてないもん。
4. 名無しのReddit住民
時計だって同じ理屈が成り立つよ。1万ドル以上出して手に入る機能は「時刻が分かる」だけ。しかも機械式は放っておくと止まるから、正確さで言えば手元のスマホに負けてたりする。
※ 1万ドルは約150万円。
5. 名無しのReddit住民(>>4への返信)
時計好きだから分かるけど、20ドルのカシオより不正確な物に何十万も出すのが論理的じゃないのは百も承知なんだよ。ただ、趣味に論理を求めろなんて誰も言ってない。Kiaと同じ移動しかしない車に10万ドル出す人がいるし、俺の知り合いには一度も撃ってない銃を20万ドル分ため込んでるやつがいる。※ 20ドルは約3,000円、10万ドルは約1,500万円、20万ドルは約3,000万円。Kiaは韓国の大衆車ブランド。
6. 名無しのReddit住民
まだエンジニアになるつもりだった頃、大学の集中講義で「次世代のロレックスを設計しろ」という課題が出たことがある。みんなGPSを積んだり、当時まだ存在しなかったスマートウォッチみたいな物を描いたり、007のレーザー内蔵とか言い出したり。全チームのプレゼンが終わったあと、講師がひとこと言ったんだ。「どれも面白い。でも、ロレックスって何だと思う? あれは宝飾品で、ステータスシンボルで、そのうえで“たまたま”時刻も分かる物なんだよ」。あの授業だけは今でも忘れられない。
7. 名無しのReddit住民
「時計は資産になる」ってのは、時計好きが自分を慰めるために唱えてる呪文だよ。ほぼ必ず損する。たしかに定価超えで売れる特定のモデルはあるけど、そんなのは正規ディーラーが全部把握してる。つまり、値上がりする一本を回してもらう権利を買うために、損すると分かってる時計を先に何本も買わされるわけ。仕組みそのものが出来レースなんだ。
8. 名無しのReddit住民(>>7への返信)
いや、ロレックスやオーデマ・ピゲ、パテック・フィリップなら「損が少ない」のは本当だぞ。ティソのPRXを買うのと比べればな。※ オーデマ・ピゲとパテック・フィリップはスイスの超高級時計ブランド。ティソは同じスイスでも中価格帯で、PRXは数万円台の人気モデル。
9. 名無しのReddit住民(>>8への返信)
その理屈で行くと、カシオを買って売るのが最強ってことにならないか? ほとんど目減りしないどころか、かかるのは電池代くらいだぞ。
10. 名無しのReddit住民
その技術ディレクターの人、半額で買って12,000〜15,000ドルで手放せば実質タダで持てたんじゃないの? 1個持ち出して中古市場に流すだけの話でしょ。
※ 12,000〜15,000ドルは約180〜225万円。
11. 名無しのReddit住民(>>10への返信)
そんな簡単な話じゃない。妻がラグジュアリー業界にいるけど、社員割引で買った物の転売はどこも異常に厳しく取り締まってる。雇用契約の条項に最初から書いてあるし、バレたら即クビ。ブランド側は二次流通市場を常に見張ってるんだよ。
12. 名無しのReddit住民
「シャネルで働いてる」という男から本物のバッグを買ってるつもりの知人がいてさ。どう見ても偽物だったから「いくら払ってるの?」と聞いたら500ドルだと言う。中国の通販サイトで100ドルで売ってる偽シャネルを、5倍払って買い続けてたわけ。奥さんが1つ売ろうとして中古委託の店に持ち込んで、その場で「これは偽物です」と言われるまで、家族の誰も気づいてなかった。
※ 500ドルは約7.5万円。米国には The RealReal のような高級ブランド専門の中古委託販売サービスがあり、買取査定の段階で真贋鑑定が入る。
13. 名無しのReddit住民
元・時計ブティックの販売員です。2年に1度、50%オフで1本買える権利がもらえる。それとは別に、店から「今季のこのモデルを着けて出勤しろ」と指定されるんだ。要するに歩くマネキン。スーツ着用が必須の職場だったから、スーツ代の予算も別枠でちゃんと出てた。
14. 名無しのReddit住民(>>13への返信)
50%より深い割引を出す会社もあるよ。俺がいたブランドは、割引で得した分にかかる現物給与の課税分まで会社が負担してくれてた。手取りが減らないように額面のほうを上げてくれるんだ。……まあ、あの業界から抜けられて今は普通にホッとしてるけどね。※ 欧米では社員割引の値引き分が「現物給与」として課税される国がある。会社が額面給与を上げて相殺する仕組み。
15. 名無しのReddit住民(>>13への返信)
辞めるときにスーツを返せとは言われなかったな。当たり前といえば当たり前で、ああいうのは全部その人の体に合わせて仕立ててある。身長190センチ・90キロの俺が着てたスーツを、178センチ・75キロの後任にどうやって着せるんだって話だよ。
16. 名無しのReddit住民
時計メーカーに間接的に関わってる立場だけど、うちは全モデル40%オフ。ただし2,000ドルを超える物は年に1本まで。安いラインはもっと緩くて、80%引きになることもある。そろそろ転職するんだけど、おかげで1本15〜30万円クラスの時計がそこそこ並んだ棚が手元に残ったよ。
※ 2,000ドルは約30万円。
17. 名無しのReddit住民
親族がモンクレールのカントリーマネージャーをやってる。全商品50%オフで、さらに毎年5,000〜6,000ドル分を店の商品と交換できる枠がつく。悪くなさそうに聞こえるだろ? でも正直、同じ額を現金でもらえたほうが100倍ありがたい。家がモンクレールだらけになるから、結局まとめて売ってる。
※ モンクレールはダウンジャケットで知られるイタリアの高級ブランド。5,000〜6,000ドルは約75〜90万円。カントリーマネージャーは一国の事業責任者。
18. 名無しのReddit住民(>>17への返信)
高級ジュエリーの店に2年いたけど、こっちも似たようなものだった。スタッフが買うのは年1回、40〜50%オフが解禁される時だけ。しかも買うのはだいたい一番安いラインを1点。売り場で身につけてないと上が納得しないから、という理由だけでね。一度、仕入れ値の一覧表を見てしまってからは、値札の魔法が完全に解けた。
19. 名無しのReddit住民
そこそこ名の知れたブランドで数年、販売をやってた。過去シーズンの物は社員価格でかなり安く買えるし、通年で使える割引も一応ある(こっちは渋い)。ブランドと歩合の設計によっては、定価でも買えるだけの収入にはなる。ただ現実には、この業界で定価を払ってる従業員は一人もいないと思う。他ブランドの販売員と仲良くなって、お互いの割引を貸し借りするようになるからね。俺は年収が円換算で1,500万を超えてたし、社内トップの人は億単位で稼いでた。ただしゴリゴリに営業して、太い顧客リストを持ってることが前提。金は良かったけど、生活のほうが壊れたから辞めた。
※ 高級ブランドの販売職は歩合(コミッション)の比率が高く、担当顧客を販売員個人が抱える「クライアンテリング」が基本。顧客リストがそのまま収入になる。
20. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
金曜の夜10時半に富豪から「跳べ」と言われたら、「どのくらい高くですか?」と返す仕事だからな。
21. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
ラグジュアリーのトップ販売員は基本的に常時オンだよ。顧客は個人の携帯番号を持ってるから、旅行先や母国から深夜3時に「これ買える?」と写真を送ってくる。顧客の旅行に同行することもあるし、ブランドは世界中に店があるから、他の地域の店舗とやり取りしてるとそもそも夜が来ない。役得は多いけど、正直しんどい仕事だ。
22. 名無しのReddit住民
友達が2019年から2024年まで、アメリカの大都市のブルガリで販売員をやってた。源泉徴収票の額面が年17万5,000ドルくらい。相当うまくやってたと思う。単価の高い商品は歩合の積み上がりが早いんだよ。
※ 17万5,000ドルは約2,600万円。米国では年間の支払額が W-2 という書類で本人に交付される。
23. 名無しのReddit住民
パートナーが長くリシュモンにいて、その後LVMHに移ったので代わりに書く。返品された商品を社員にかなりの割引で回す制度があって、そこに出てくるのはほとんどが下位ラインの物だったから、家族へのちょっといい贈り物にちょうど良かったらしい。ただ本人は「手に入りやすいラグジュアリー」には絶対に自分の金を出さない。品質が平凡だから、という理由でね。初めて聞いたときは正直、頭が真っ白になった。
※ リシュモンはカルティエなどを、LVMHはルイ・ヴィトンやディオールなどを傘下に持つ巨大コングロマリット。
24. 名無しのReddit住民(>>23への返信)
「手に入りやすい」ってのは値段が安い物のことじゃなくて、順番待ちが存在しない物のこと。カルティエのラブブレスレットなんかが典型で、値段は張るけど常に在庫がある。あと販売員が言う「順番待ちリストに入れておきますね」は真に受けないほうがいい。あんなリストは存在しない。その月の割り当てが売り切れただけで、名前を書いたところでステンレスのサブマリーナが早く回ってくることはない。関係を作らせて、欲しくもない物に金を使わせて、いつか本命が来るかもと期待させる。全部そういう作りになってる。※ サブマリーナはロレックスの人気モデル。特にステンレス製の定番は入手困難で、正規店が「購入履歴のある客から順に案内する」慣行は欧米でも広く知られている。
25. 名無しのReddit住民(>>24への返信)
だから今いちばん格好いい態度は、「わかりました、いつでも連絡ください」と言ってさっさと店を出ることだと思ってる。ロレックスの機嫌を必死に取りにいくんじゃなくてさ。興味はあるけど優先順位は高くありません、っていう温度で接するのがいちばん効く。
26. 名無しのReddit住民
ボンドストリートのエルメスで、妻にエナメルのブレスレットを買ったことがある。買い物としては最悪の体験だった。まず入店に行列。順番が来ると名前を聞かれて、常連かどうかを確認される。そこからまた待たされて、ようやく販売員と話せる。俺のすぐ横で、明らかに資力のありそうな男性客がバーキンを買いたいと言っていたけど、店は売らなかったよ。
※ ボンドストリートはロンドンの高級ブランド街。バーキンはエルメスの最高峰バッグで、定価でも数百万円する。
27. 名無しのReddit住民(>>26への返信)
新品のバーキンは、少なくとも新規の客には店頭でそのまま売らないんだ。エルメスで2万ドル以上を買った実績があって、ようやくリストに載る候補になる。そこから「いつか買えるかもね」という順番。しかもその金額は数ヶ月から数年かけて積み上げた累計じゃないと駄目で、一日で数万ドル使っても資格にはならない。旗艦店だと基準はもっと上がる。まあ2〜4万ドル分の服や小物や食器を買い揃えた頃には、バッグに合わせるスカーフも何本か持ってることになるわけだ。アクセサリーのためのアクセサリー。※ 2万ドルは約300万円、2〜4万ドルは約300〜600万円。購入履歴を積んだ顧客から優先的に希少品を案内する手法は「クライアンテリング」と呼ばれ、欧米の高級ブランドでは一般的な慣行。
28. 名無しのReddit住民
買えないよ。というより、あそこで働いているとラグジュアリーを欲しがる病が治る。1万ドルのバッグを1日8時間触っていれば、原価がどのくらいかの見当もつくし、革が思ったよりあっさり傷つくことも分かってしまう。そのうえ、買いに来る客の多くが自信のない人たちだと気づいてしまうと、魔法は跡形もなく消える。
29. 名無しのReddit住民(>>28への返信)
客のほうは本当にきついよな。俺は昔、高級時計を集めてた側の人間だけど、店で順番を待ってる間に聞こえてくる会話がひどい。本物の金持ちも、金持ちのふりをしてる人も、平気で無茶苦茶なことを言う。免税の払い戻しを使って税金を逃れる方法を教えろと販売員に食ってかかってる男がいたし、別の日には「お前があのとき選ばなかった時計、今の中古相場こっちより高いぞ」と友人を笑ってる男がいた。バッグの客はもっとひどいらしい。あの人たちに真顔で接客するのは、俺には無理だ。※ 免税の払い戻しは、外国人旅行者が出国時に付加価値税の還付を受ける制度。その国の居住者が使えば脱税になる。
30. 名無しのReddit住民
ケリング傘下のブランドで働いてる友人がいる。社割はかなり良くて、社員向けセールと友人・家族向けセールの両方がある。ニューヨークのファッション業界にいると、他社の友人と「うちの商品を出すからそっちのも」と融通し合うようにもなるんだ。俺自身はおしゃれとは程遠い人間だけど、見せてもらった物は表示どおりヨーロッパで作られていたし、素材も作りも本当に良かった。妻が長年縫い物をしていて、娘と自分のウェディングドレスまで自作した人なんだけど、その妻が縫製と生地に唸ってた。バレンシアガの長袖シャツは今まで触ったどのコットンより上等だし、靴の革も驚くほど長持ちする。値段に見合うかは人それぞれだけど、ファストファッションとは比較にならない。ただ、値札には普通に驚くけどな。450ドルのキャップに、800〜1,200ドルのスニーカーだぞ。
※ ケリングはグッチやバレンシアガなどを傘下に持つフランスのコングロマリット。450ドルは約6.7万円、800〜1,200ドルは約12〜18万円。
まとめ
割引率の話から始まったスレッドなのに、証言が最後に指し示していたのは値段の内訳ではなく、関係の内訳だった。50%オフでも270万円は270万円で、原価と卸値表を知っている人ほど自分の金は出さない。それでも業界を出た人たちが揃って「品質そのものは本物だった」と言い添えるのが面白いところで、彼らが冷めたのは物ではなく、その物にたどり着くまでに踏まされる手順のほうらしい。購入履歴を積まないと本命が回ってこない仕組みは、日本の正規店をめぐる話としてもよく耳にする。あなたは、欲しい一本のために欲しくない物を買えますか?

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