「ちょっと調べるだけのつもりが、気づいたら3時間経ってた」——いわゆる「ラビットホール(深掘り)」体験。一つの疑問が次の疑問を引き起こして、気づいたら全然違う場所にいる。海外掲示板Redditで「最も面白かった深掘り体験は?」と問いかけたところ、宇宙・歴史・生物・哲学・未解決事件まで30の回答が集まった。読み終わったら何かを調べ始めること確実。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
「失われたメディア」の深掘り。誰も覚えていないような古いテレビ番組、削除された曲、消えたネット動画を何年もかけて探し出す人たちがいて、実際に見つかることもある。探偵みたいで、しかも不思議と心温まる活動。
※ 失われたメディア(Lost Media):放送後に記録が残らず現存しなくなった番組や映像のこと。Redditには専門のコミュニティr/lostmediaがあり、世界中のボランティアが協力して発掘活動を続けている。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
フラミンゴがなぜピンクなのかを調べたら、食べているエビのせいだとわかった。そこから動物の色彩化学について3時間読み漁ってしまい、動物園のフラミンゴは特別な食事補助なしだと色が失われることまで知った。一個の疑問がこんなに遠くまで連れていくのが深掘りの面白さ。
8. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
日常品が実はずっと使えるように作られているのに企業があまり宣伝しない話にハマった。100均のプラスチックピーラーが高級品より長持ちする理由を調べていたら、「計画的陳腐化」という概念に行き着いた。企業が製品の寿命を意図的に短くしているという話で、読み始めたら止まらなかった。
※ 計画的陳腐化(Planned Obsolescence):製品の使用可能期間を意図的に制限し、定期的な買い替えを促す設計・マーケティング戦略。1920年代のゼネラルモーターズが早期に実施したとされる。
3. 名無しのReddit住民
スティーブン・ホーキングの私生活。科学的な業績は有名でも、2度の結婚と離婚、介護問題をめぐる確執、研究室内での人間関係——表に出てこない側面が想像以上に波乱万丈で、読んでいて全然別の人物像が見えてきた。
※ スティーブン・ホーキング(1942-2018):ブラックホールや宇宙論で知られるイギリスの理論物理学者。21歳でALSを発症し、車椅子と音声合成装置で研究を続けた。晩年は元看護師と再婚しながらも後に離婚するなど、私生活でも多くのドラマがあった。
4. 名無しのReddit住民
自分が育ったロシアの孤児院の名前を調べていたら、親がかつて人身売買疑惑で閉鎖された団体を通じて自分を引き取ったことがわかった。DNA検査でフィンランドに親戚がいることも判明した。調べ始めた時点では、自分の人生がこんなに変わるとは思っていなかった。
5. 名無しのReddit住民
KFCの創設者カーネル・サンダース。65歳まで何十もの仕事を転々として失敗し続け、フライドチキンのフランチャイズ化に成功したのは60代。各州をひとりで車で回ってレストランに売り込んでた話とか、映画にしたら絶対ヒットするのになぜ誰も作らないのか謎なくらいドラマチックな人生だった。
※ カーネル・サンダース(Harland David Sanders, 1890-1980):KFCの創設者。「カーネル(大佐)」は名誉称号で軍歴はない。40回以上ビジネスに失敗した後、65歳で社会保障給付を元手にフランチャイズを展開した。
6. 名無しのReddit住民
突然姿を消して新しい生活を始める「失踪者」たちの話。故意の失踪と事故の失踪の区別、偽の身元を作る方法、実際に新しい人生を送っている人々——読んでいると、現代社会でのアイデンティティがいかに薄い紙一枚の上に成り立っているかを実感する。
7. 名無しのReddit住民
サラ・ペイリンがアラスカ出身なのに中西部訛りだった理由を調べたら、1935年に政府が中西部の農家200家族をアラスカのワシラ周辺に移住させた歴史があり、90年近く経っても言語的にほとんど変化していないからだとわかった。地理的隔離が方言を保存する話として面白すぎた。
※ サラ・ペイリン(Sarah Palin):アラスカ州知事を経て2008年米大統領選でジョン・マケインの副大統領候補となった政治家。ワシラ出身で、そのなまりが政治的にも話題になった。
9. 名無しのReddit住民
宇宙の終わり方。人類が存在する時間は宇宙の歴史のなかで文字通り一瞬で、その後に全ての星が燃え尽き、ブラックホールが蒸発し、最終的に「熱的死(ヒートデス)」に向かう過程を知ると、しばらく何も手につかなくなる。怖いけど止められなかった。
※ 熱的死(Heat Death):宇宙全体のエントロピーが最大になり、エネルギーの移動が起こらなくなる宇宙の最終状態。あらゆる構造が消滅し、完全な均一状態になると予測されている。
10. 名無しのReddit住民
ヴォイニッチ手稿。15世紀頃に作られたとされる手書きの本で、どんな専門家にも解読できない未知の文字と言語で書かれていて、植物や天体図のような絵が描かれている。本物の暗号書なのか、精巧な偽書なのか、百年以上研究されても結論が出ていない。
※ ヴォイニッチ手稿(Voynich Manuscript):イェール大学が所蔵する謎の写本。放射性炭素年代測定で1404〜1438年頃と推定されているが、書かれた言語・意図・著者は不明のまま。人工知能による解析も行われたが決定的な解読には至っていない。
11. 名無しのReddit住民
原子力発電所の仕組み、とくに原子炉の動作原理。核分裂の連鎖反応をどうやって制御棒で抑えているか、冷却システムがなぜあれだけ複雑なのか——調べれば調べるほど「これが普通に街の近くで動いているのか」という実感が来る。怖くもあり、すごくもある。
12. 名無しのReddit住民
ジャマイカのレゲエ音楽史。1960〜90年代に録音された膨大な質の高いレコードがあって、しかも多くが正式にデジタル化されていない。スカからロックステディ、レゲエ、ダブへの進化を追いながら、同時代のジャマイカの社会状況と重ねると全然違う聴こえ方になってくる。
※ ダブ(Dub):1970年代にジャマイカで生まれた音楽ジャンル。レゲエのリズムトラックを土台にエコーやリバーブを多用して再構築したもの。後のヒップホップやエレクトロニカに多大な影響を与えた。
13. 名無しのReddit住民
Googleストリートビューの過去の画像を遡って、街の変化を追う。好きな場所がいつ取り壊されたか、道路がいつ変わったか——デジタルタイムカプセルとして使えることに気づいてから、何時間でも遊べるようになってしまった。
14. 名無しのReddit住民
ギザの大ピラミッド。なぜ複数の部屋があるのか、クイーンズチャンバーの不可思議なくぼみ、未完成の地下室、内部の通気孔の向き——通説で説明がつかない部分が多すぎて、調べるほど謎が深まる。
※ クイーンズチャンバー(女王の間):大ピラミッド内部の部屋のひとつ。実際に王妃が埋葬されたわけではなく、用途は今も不明。壁面のくぼみは何かを置くための台座だったと推測されているが、定説はない。
15. 名無しのReddit住民
プレーリーハタネズミの一夫一婦制の研究。なぜこの種だけが「つがい」を形成するのかを調べたら、オキシトシン受容体の分布が他のハタネズミ種と違うことがわかっていて、それが人間の愛着や愛情の神経科学的研究に応用されていることまで知った。自閉症で恋愛感情を理解したくて調べ始めたのに、8時間後には全然別の場所にいた。
※ プレーリーハタネズミ(Prairie Vole):北アメリカに生息するネズミの一種。哺乳類の中では珍しく終生一夫一婦制をとる。オキシトシン受容体の密度が一夫多妻種と異なることが研究で示されており、愛着形成の神経科学的モデルとして広く使用されている。
16. 名無しのReddit住民
自分の「性格」と呼んでいるものの多くは、過去の偶然の強化によって形成されたものだという話。「内向的」「怠け者」「心配性」——これらは特性ではなく、過去の経験に基づいて脳が学習した反応パターンにすぎない。これを知ってから自分の見方が変わった。
17. 名無しのReddit住民
意識とは何か、という哲学的な深掘り。「なぜ私は私であるという感覚があるのか」という問いは、神経科学でも哲学でも決定的な答えがない。調べるほど「わからない」が深くなるのに止められない。
18. 名無しのReddit住民
古代ローマの暗殺事件の連鎖。カエサル暗殺から帝政の成立、ネロの治世、「四皇帝の年」——どんどん繋がっていって、気づいたら6時間後に「ローマの滅亡とはいつか」という論争を読んでいた。歴史の深掘りは終点がない。
※ 四皇帝の年(Year of the Four Emperors, 69年):ネロ自殺後の混乱期に、ガルバ・オトー・ウィテリウス・ウェスパシアヌスの4人が1年以内に相次いで皇帝となった時期。内戦と陰謀が連続した、ローマ史の転換点のひとつ。
19. 名無しのReddit住民
シカゴやLAのギャング組織の歴史と構造。それぞれどういう経緯で生まれて、なぜその地域に根を張っているか——犯罪組織の話というより、アメリカの都市構造や移民史、貧困問題の話として読むと全然見え方が変わってくる。
20. 名無しのReddit住民
音楽の演奏方法は終わりのない深掘り。ひとつのコードを理解しようとすると音楽理論が出てきて、音楽理論を調べると数学が出てきて、どこまでも続く。「上達する」という感覚が一生続くのが面白い。
21. 名無しのReddit住民
子どもの頃に近所にあった果樹や野菜の木が、1970年代以降になぜ街から消えたかを調べた。「公共の食べ物」が都市計画から排除された理由には、清潔感・管理コスト・所有権の問題があって、今ではその流れに逆行して「食べられる街」を作る運動も出ている。
22. 名無しのReddit住民
猫がゴロゴロ鳴く理由を調べ始めたら、ゴロゴロ音の周波数が骨密度の維持に関係するという研究があって、そこから大型ネコ科動物の発声の遺伝学、さらに3万2000年前のライオン人間像(ホーレンシュタイン=シュターデルの彫刻)まで行き着いた。4時間後に「なぜ人類は猫科動物を崇拝したのか」を読んでいた。
※ ライオン人間像(Löwenmensch):ドイツで発掘された旧石器時代の象牙製彫刻。ライオンの頭と人間の体を持つ世界最古の具象芸術のひとつとされ、約3万2000年前のものと推定されている。
23. 名無しのReddit住民
保守的な家庭で育って信仰を持っていたけど、歴史・考古学・神学を自分で調べていくうちに、「教えてもらえなかった情報」がどれだけ多かったかがわかってきた。信仰を失う過程より、「隠れていたものが見え始める感覚」が深掘りとして強烈だった。
24. 名無しのReddit住民
1960年代の月面着陸コンピュータ(AGC)のコアロープメモリを女性たちが手で編んで作っていた話。「ソフトウェアを編む」という感覚で、当時の女性エンジニアたちが果たした役割が、長い間きちんと評価されてこなかったことも含めて興味深かった。
※ コアロープメモリ(Core Rope Memory):アポロ計画のガイダンスコンピュータで使われた読み取り専用の記憶装置。磁気コアに電線を手作業で通すことでプログラムを物理的に書き込む方式で、「LOL(リトル・オールドレディ)」と呼ばれた女性作業員たちが製造を担った。
25. 名無しのReddit住民
イーグルクロー作戦。1980年のイランアメリカ大使館人質救出作戦で、装備も人員も優秀だったのに砂嵐・機械故障・連絡ミスが重なって完全に失敗した話。「有能な人々が不運に負ける」という構造が、読んでいてどうしようもなく面白かった。
※ イーグルクロー作戦(Operation Eagle Claw):1980年4月、イラン革命後に444日間拘束されたアメリカ人人質の救出を試みた軍事作戦。砂漠での給油中にヘリが墜落し中止となり、8名が死亡した。作戦失敗がカーター政権の支持率を低下させ、1980年の大統領選挙にも影響を与えたとされる。
26. 名無しのReddit住民
古代エジプトの医学書「エーベルス・パピルス」。紀元前1550年頃に書かれたとされ、心臓・消化器・精神疾患まで網羅した医学テキスト。現代から見ると「なぜその治療法に至ったのか」が謎だらけで、古代人の観察力と推論の仕方を覗く窓として面白すぎた。
※ エーベルス・パピルス(Ebers Papyrus):現存する最古の医学書のひとつ。877の呪文・処方・医学的な所見が記されており、ドイツのエジプト学者ゲオルク・エーベルスが1873年に入手した。抑うつ状態の記述も含まれており、精神医学史の観点からも注目されている。
27. 名無しのReddit住民
ダートロフ峠事件。1959年のソ連で、経験豊富な登山隊9名が謎の死を遂げた事件。テントが内側から破られ、半裸で外に出て死亡していた。まだ知らないなら絶対に調べる価値がある。
※ ダートロフ峠事件(Dyatlov Pass Incident):1959年2月、ウラル山脈での登山中に起きた原因不明の集団死亡事件。低体温症・外傷・放射線検出・舌の欠損など不可解な点が多く、雪崩説・軍事実験説・インフラサウンド説など今も議論が続く。2020年にロシア当局は雪崩説を公式見解としたが、納得する研究者は少ない。
30. 名無しのReddit住民(>>27への返信)
ダートロフ峠事件を調べて、超低周波音による集団パニック説、「逆説的脱衣症状」(低体温症の末期に体が熱く感じて服を脱ぐ現象)、ソ連軍の兵器実験説——4時間読み込んだけど未だに納得できる説明がない。それがまた引き返せなくなる理由だよね。
28. 名無しのReddit住民
サターンVロケットの工学的事実。毎秒15トンの燃料と酸素を燃やす推力から始まって、F-1エンジンの燃焼不安定問題をどう解決したか、月まで行って帰ってくる軌道計算をどうやってアナログ時代にやったか——全部1960年代の技術で実現してることに、読んでいて何度も信じられなくなった。
※ サターンV(Saturn V):アポロ計画で使用された巨大ロケット。全高110m・重量2,800トン。第一段のF-1エンジン5基の合計推力は約3,400トンで、現在も史上最大の推力を持つロケットエンジンのひとつ。開発中に燃焼不安定(爆発的振動)の問題が深刻化し、解決には試行錯誤の連続だったとされる。
29. 名無しのReddit住民
「DB クーパー」事件。1971年にアメリカで飛行機をハイジャックし身代金を受け取ってパラシュートで脱出したまま消えた男の話。事件自体も衝撃だが、50年以上にわたって独自調査を続けているアマチュア探偵たちのフォーラムを3日間読み続けた。未解決事件のコミュニティは一種の別世界だった。
※ DBクーパー事件(D.B. Cooper hijacking, 1971年):アメリカ唯一の未解決航空ハイジャック事件。「ダン・クーパー」と名乗る男が$20万(現在価値で約150万ドル)の身代金を受け取り、ワシントン州上空でパラシュート脱出。FBIは2016年に捜査を中断したが、今も多くの研究者が追い続けている。
まとめ
30のコメントを読んで気づくのは、深掘りには「終点がない」という共通点だ。フラミンゴの色を調べたら動物の色彩化学に着地し、猫のゴロゴロを調べたら3万年前のライオン人間像に行き着き、ダートロフ峠事件を調べたら4時間後もまだ答えが出ない——そういうものばかりだ。
そしてもうひとつ。深掘りの面白さは「答えが出た時」より「なぜこんなことが起きたのか、誰も知らない」という余白にある。ヴォイニッチ手稿も、DBクーパーも、ダートロフ峠事件も——わからないまま終わるのに、だからこそ止められない。
今夜何かを調べ始めてしまいそうな人は、睡眠時間に余裕をもってからこの記事を読むことをおすすめしたい。皆さんが「これは調べてみたい」と思ったテーマはどれですか?


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