学校で習った、親から聞かされた、テレビで何度も見た。そうやって身についた「常識」のなかには、とっくに否定されているのに看板だけ残っているものがけっこう混ざっている。海外掲示板Redditに「みんなが正しいと思っているけど、実は100%間違っていることは?」というスレッドが立ち、舌の味覚地図から万里の長城、ガリレオの最期まで、次々と札が外されていった。面白いのは、外しにかかった側もあちこちで「いや、それも正確じゃない」と突っ込まれていたこと。嘘を正すつもりで、もう一段あやしい話を仕入れてしまう瞬間まで込みで眺められるスレッドになっている。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
そもそもこの質問、成り立ってなくないか。自分が「間違ってる」と知ってる時点で、それはもう全員が受け入れてる常識じゃないだろ。「ほぼ全員が信じてるけど実は間違ってること」なら答えられるんだけどさ。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
一番の正解は「Redditではまともな答えが返ってくる」だと思ってる。ここ、自信満々の出まかせと、正しいのに票が伸びないコメントが毎回きれいに同じ比率で並ぶからな。
3. 名無しのReddit住民
舌は場所によって感じる味が違う、というやつ。甘みは先っぽ、苦みは奥、酸味は横。理科の授業であの区分け図を見せられた記憶がある人、けっこういると思う。あれ、まるごと間違いだよ。
※ いわゆる「味覚地図」。もとは1900年代初頭のドイツの研究で「舌の部位によって感度がわずかに違う」と報告されたものが、後に「味ごとに担当エリアがある」という図に描き替えられて教科書に載った、と説明されることが多い。実際には甘みも苦みも舌のどこでも感じられる。
4. 名無しのReddit住民(>>3への返信)
これ本気で信じてる人っているの? 俺も子どものとき習ったけど、何か飲み食いすれば自分で確かめられるだろ。コーヒーを舌の先っぽだけに乗せたって普通に苦いって。図で覚えたものって、あとから文章で訂正されても上書きされないんだよな。
5. 名無しのReddit住民
剃ったところは毛が濃くなって生えてくる。あれ、太くも黒くもならないよ。伸びかけの毛は先が平らに切れているから指で触ると硬く感じるし、根元の濃いところが短く出ているぶん目立つ。それだけの話だよ。
6. 名無しのReddit住民(>>5への返信)
関連して、髪と肌まわりのアドバイスって、医者みたいな顔で語られるわりに、中身は星占いと同じくらいの根拠しかないことが多いよな。信じて無駄にしたケア用品、たぶん一生分ある。
7. 名無しのReddit住民
自分が知ってる時点で「全員が信じてる」ではなくなるんだけど、広く信じられてるやつなら、砂糖を食べると子どもが騒がしくなる、を挙げたい。砂糖と見せかけて別のものを与える形の実験だと、その差はきれいに消える。
8. 名無しのReddit住民(>>7への返信)
あの手の実験で面白いのは子どもの側じゃなくて親の側なんだよ。「この子にはさっき砂糖を与えました」と伝えられた親は、実際に与えたかどうかと関係なく、自分の子の振る舞いを悪く採点した。同じ組み立ての実験で「犬の罪悪感」も怪しいと言われてる。そっちのほうが刺さるんだよな。うちの犬、どう見ても悪いと思ってる顔をするので。9. 名無しのReddit住民(>>7への返信)
何回研究を持ち出しても義理のきょうだいは聞く耳を持たない。砂糖はエネルギー源であって、覚醒剤の類じゃない。使い道のないぶんは脂肪として蓄えられるだけで、体内で途中から別の何かに化けたりはしないんだって。10. 名無しのReddit住民(>>7への返信)
小さい子がいる親に言うのはやめた。本気で嫌な顔をされる。誕生会のあとのあの地獄を説明する言葉を取り上げられるわけだから、気持ちはまあわかる。
※ 「犬の罪悪感」:飼い主が叱るつもりで近づくと、犬は悪さをしていなくても同じ「しょんぼり顔」をする、という実験がある。罪悪感の表情というより、叱られる前ぶれに対する反応ではないか、という見方が出ている。
11. 名無しのReddit住民
人間は脳の10%しか使っていない、というやつ。落ち着いて考えれば変な話なのに、なぜか根強く残ってる。残りの90%が丸ごと遊んでるなら、頭のどこを打っても平気なはずだろ。
12. 名無しのReddit住民(>>11への返信)
たしか元は読み違いなんだよな。「ある瞬間に活発に動いている領域は一部」という話が、「一生使われないまま終わる領域が8割9割ある」にすり替わった。全部をいっぺんに動かす必要がないというだけの話なのに。
13. 名無しのReddit住民
自分は右脳型だから、左脳型だから、って言い方。何をするにも脳はほぼ全体を動かしてる。言語みたいに左側に偏りがある働きはあるけど、それは「私は右脳の人間なので細かい作業が苦手」みたいな性格分類の根拠にはならない。
14. 名無しのReddit住民
万里の長城は宇宙から見える。これ、小学校で習ったままアップデートせずに大人になってる人がかなりいると思う。中国初の宇宙飛行士が帰ってきて「見えなかった」と話しても、教科書のほうがしぶとく生き残ってる。
15. 名無しのReddit住民(>>14への返信)
これ相当ひどい部類だよな。俺が聞かされたのは「宇宙から肉眼で見える唯一の人工物」ってバージョン。壁の幅、ほとんどの区間で10メートルもないんだぞ。それが見えるなら高速道路も空港もぜんぶ見えてることになる。しかも「肉眼で」を言い忘れると、望遠レンズで撮ればいいだろという話になって、主張ごと別物になる。
16. 名無しのReddit住民
ニンジンを食べると目が良くなる。足りていない人が補えば、暗いところでの見え方は戻る。でも足りている人がさらに食べたところで視力は上がらない。皿に山盛りにしても近視は治らないよ。
17. 名無しのReddit住民(>>16への返信)
これ、第二次大戦中のイギリスがレーダーの存在を隠すために流した宣伝が始まり、という話とセットで語られがちだけど、その部分は話半分で聞いたほうがいいと思う。ニンジンと目の話自体は戦争より前からあるし、どこまでが宣伝の効き目なのかははっきりしてない。嘘を正すつもりで別の怪しい話を仕入れてくるの、このスレで一番みんながやってることだからな。
18. 名無しのReddit住民
心電図が平らになった人に電気ショックを当てて心臓を再起動する場面。ドラマで100回は見た。でも実際は、平らになってしまった心臓にあの機械は効かない。あれは心臓がでたらめに震えている状態を一度止めて整えるための道具であって、完全に止まったものを叩き起こす道具じゃないんだよ。
※ 心電図が平らになった状態(心静止)は電気ショックの適応外とされ、胸骨圧迫と薬による処置が基本になる。ドラマでおなじみの「ピー音 → 電気ショック → 心拍再開」は、この点でかなり事実と離れている。
19. 名無しのReddit住民
寒いと風邪をひく。これも違う。風邪をひかせてるのはウイルスであって、気温そのものじゃない。髪を濡らしたまま出かけた日に寝込んだなら、原因は濡れた髪より、外に出て人と会ったことのほうだよ。
20. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
そこ、最近ちょっと揺れてるぞ。冷たい空気にさらされると鼻の中の防御の働きが落ちる、という報告も出てきてる。だから「寒さは一切関係ない」まで言い切ると、今度はこっちが次のスレのネタにされる。正確なところは「寒さだけでは風邪はうつらない、うつすのはウイルス」くらいじゃないか。
21. 名無しのReddit住民
汗をかけば風邪が抜ける、というやつ。布団を何枚も重ねて汗だくになったところで、出ていくのは水分だけ。脱水になって余計にしんどくなる。うちの親は今でもこれを本気で信じていて、熱が出るたびに毛布を運んでくる。
22. 名無しのReddit住民
ラクダのコブには水が入ってる。中身は脂肪だよ。長いこと食べずに歩けるのはそのおかげで、水のほうは普通に体液として持ってる。子どもの頃に読んだ図鑑を、一度も疑わずにここまで来てしまった。
23. 名無しのReddit住民
クレオパトラについて一般に信じられていることは、細かいところから大枠までほぼ全部ずれてる。生きていた時代も、見た目も、そもそもなぜ有名になったのかも。そもそもエジプト人じゃなくて、アレクサンドロス大王の部下がエジプトに立てたギリシャ系の王家の出で、本人は政治と交渉の人だよ。映画のせいで「美貌で男を転がした女」の枠に押し込まれてるけど、当時の記録で褒められてるのは、顔より話術と声のほうなんだ。
※ 古代の伝記作家プルタルコスは、クレオパトラの美しさそれ自体は並ぶ者がないほどではなく、話しぶりや声の魅力、相手に合わせて言葉を使い分ける力のほうが際立っていた、という趣旨のことを書き残している。
24. 名無しのReddit住民(>>23への返信)
時代感がいちばん驚くところだよな。クレオパトラが生きていたのは、ギザの大ピラミッドが建った時期よりも、アポロ11号の月面着陸のほうに近い。エジプトっぽい絵面でひとまとめにされてるけど、ピラミッドは彼女にとっても遠い昔の遺跡だったんだよ。
25. 名無しのReddit住民
ガリレオが火あぶりにされた、と思い込んでる人の多さ。実際は有罪判決のあと自宅に軟禁されて、70代後半まで生きて、そのまま家で亡くなってる。火刑になったのは別の人で、そっちの話と混ざってるんだよ。
※ 火刑になったのは同時代の思想家ジョルダーノ・ブルーノ(1600年)。ガリレオは1633年に有罪判決を受けて軟禁され、1642年に77歳で亡くなっている。
26. 名無しのReddit住民
中世ヨーロッパの人は地球が平らだと信じていた、ってやつ。当時の学者はとっくに球だと考えてたよ。コロンブスが反対されたのは形の話じゃなくて距離の見積もりのほうで、しかもその点についてはコロンブスのほうが間違ってた。西回りの距離を実際よりずっと短く見ていたんだ。
27. 名無しのReddit住民(>>26への返信)
中世のイメージそのものが、あとの時代に作られてるんだよな。バイキングの角つき兜も同じ口で、あの時代の兜として角つきのものは出てきていない。19世紀のオペラの舞台衣装から広まったと言われてる。だいたい頭に角なんか生やしたら、殴り合いのとき真っ先に掴まれるところだろ。
※ 角つき兜のイメージは、ワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』(19世紀後半)の舞台衣装によって定着した、と説明されることが多い。
28. 名無しのReddit住民
悪いことをした奴には、いつか報いが来る。来ないよ。ひどいことをやり通したまま、何ごともなく長生きして、穏やかに終わる人は普通にいる。逆も同じで、人を助けた人がそのぶん報われるとも限らない。帳尻を合わせてくれる誰かがいる前提で世の中を見てると、実際に起きることを目の前にしたとき足元が抜ける。
29. 名無しのReddit住民(>>28への返信)
ラウル・ワレンバーグは、戦時中のブダペストで何万人ものユダヤ人を保護した外交官だけど、終戦のときにソ連軍へ連れていかれて、そのまま帰ってこなかった。一方でヘンリー・キッシンジャーは、ベトナム戦争の和平交渉でノーベル平和賞を受け取って、そのあとも各地の紛争への関わり方を生涯批判され続けたのに、100歳まで生きて自宅で亡くなってる。帳尻なんて誰も合わせてくれないんだよ。
※ ラウル・ワレンバーグはスウェーデンの外交官。1944年のブダペストで保護証明書を発行するなどして多くのユダヤ人を救ったが、1945年にソ連軍に拘束され消息を絶った。ソ連は後年、獄中で死亡したと発表している。ヘンリー・キッシンジャーはアメリカの外交官・政治家で、1973年にノーベル平和賞を受賞。2023年に100歳で亡くなった。
30. 名無しのReddit住民
「すべてのことには意味がある」。ないよ。ただ運が悪かっただけの日はある。あとから意味を見つけるのは本人がやってる作業であって、最初から誰かが用意しておいてくれたわけじゃない。「あなたを殺さないものはあなたを強くする」も同じ棚だと思う。殺されはしなかったけど、それ以来ずっと弱くなったままだという人のほうが、実際は多いんじゃないかな。
※ 「あなたを殺さないものはあなたを強くする」は、ニーチェの『偶像の黄昏』にある一節が元になっている言い回し。英語圏では日常会話でもよく使われる。
まとめ
並べてみると、嘘の出どころはだいたい三つに分かれる。ひとつは、教科書や図鑑の絵がそのまま頭に残ってしまったもの。舌の味覚地図、脳の10%、ラクダのコブがこの組で、どれも「文章で読んだ説明」より「一度見た絵」のほうが強かった例と言える。ふたつめは、映画やドラマが同じ絵面を繰り返したせいで記憶になったもの。火あぶりにされるガリレオ、平らな心電図に当てられる電気ショック、角つき兜のバイキング。そして三つめが、世の中は公平であってほしいという願いが事実の顔をして流通しているものだ。因果応報や「すべてに意味がある」が後半で立て続けに否定されていたのは、たぶんそこがいちばん個人的に痛いところだからだと思う。
個人的にいちばん読み応えがあったのは、訂正する側がさらに訂正されていく流れだった。ニンジンと視力の話では、迷信の起源とされる「戦時中の宣伝説」自体が話半分で聞くべきだと戻され、寒さと風邪の話では「寒さは一切関係ない」と言い切るほうが行きすぎだと指摘された。常識をひっくり返すのは気持ちがいいぶん、ひっくり返した先を確かめないまま止まりやすい。冒頭の「自分が知ってる時点で、それは全員の常識じゃない」というツッコミが、最後までスレ全体に効いていた。
日本でも似た位置にいる話はいくつもある。血液型で性格がわかる、というあたりは、否定する研究が出たあともテレビや雑談のなかで元気に生き延びている。本気で信じているかどうかより、「みんなが信じていることにしておくと会話が回る」から残っている、という面はありそうだ。
皆さんが長いあいだ当たり前だと思っていて、あとから違うと知って驚いたことは何ですか?

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