証拠は揃っていた。法律もこちらの味方だった。なのに依頼人がたった一言しゃべった瞬間、全部が消えた——現役・元職の弁護士たちが「裁判の勝敗を分けたバカげた理由」を持ち寄ったスレッドが、笑っていいのか分からない話で埋まっていました。負ける理由は証拠でも法律でもなく、一本の動画だったり、出し忘れた一枚の書類だったり、ただの一言だったりします。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
薬物の影響下での運転(DUI)事件を担当したときの話。正直、勝ちはほぼ手中にあった。依頼人の証言も上出来だったしね。
それで最後、締めの一問を投げた。
「あなたはあの夜、オキシコンチンを服用していましたか?」
「いいえ。
オキシコドンです」
※ DUI=アルコールや薬物の影響下での運転。オキシコンチンは「オキシコドン」という成分を含む鎮痛剤の商品名。つまり彼は、否定したつもりで成分名を自分から口にしている。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
素晴らしい。全国の酩酊ドライバーがこの調子でどんどん自白してくれることを願ってるよ。弁護士には悪いけど、こっちは完全に被害者側の気持ちで読んでるからね。
3. 名無しのReddit住民
逆に検察側でDUIを担当したときの話。証拠は完璧だったんだ。パーティーで浴びるほど飲んだ男がスポーツカーで住宅街を時速160キロで飛ばし、一時停止を無視して他の車の横っ腹に突っ込んだ。相手は入院。交差点の映像まで残っていたし(これは本当に滅多に手に入らない)、警官の証言もある。呼気検査は0.20。その数値でどれだけ判断力が落ちるかを説明する専門家も呼んだし、同情を買うために被害者本人にも証言してもらった。
被告が証言台で「パイプを持った男に追われていたから飛ばすしかなかった」と言い出したときは、傍聴席がどよめくくらい徹底的に崩してやった。もらったと思ったよ。
なのに陪審は酩酊運転について無罪を返してきた。評議のあと理由を聞いたら「あの状態であそこまでコルベットを操れていたのがすごい」。専門家の証言はどこへ行ったと詰め寄ったら、一人がこう言ったんだ。「でも何ブロックも走って、駐車中の車には一台もぶつけてないでしょ」
※ 0.20は血中アルコール濃度。アメリカの多くの州では0.08以上で違法とされるので、その倍以上にあたる。刑事事件の有罪・無罪は、市民から選ばれた陪審員が評議して決める。
4. 名無しのReddit住民(>>3への返信)
自分が被害者だったらその陪審を一生恨むと思う。一時停止を無視して人を病院送りにしておいて、無罪の理由が「運転がうまかったから」って何なんだ。5. 名無しのReddit住民(>>3への返信)
陪審が馬鹿だったで片付けるのはちょっと違う気がするな。数値と専門家で固めれば固めるほど、素人の頭には「で、実際どんな運転してたの?」という絵のほうが強く残るんだよ。悔しいけど人間ってそういう作りだと思う。
6. 名無しのReddit住民
被告がただ何も反応しなかったから。訴え自体は完全に中身のないものだったのに、本人が呼び出しの意味を分かっていなくて放置した結果、欠席判決で相手の言い分が丸ごと通った。
※ 欠席判決=被告が期限内に答弁書を出さないと、中身を審理しないまま原告の主張どおりの判決が出る仕組み。日本の民事裁判にも似た制度がある。
7. 名無しのReddit住民(>>6への返信)
この手のやつは嫌になるほど見てきた。前に半泣きの女性から電話がかかってきてね。送達された書類の指示を全部無視していたら、いつの間にか欠席判決が出ていたと。黙っていれば裁判ごと止められると思っていたらしい。無回答も立派な回答なんだよ。ここを勘違いしたまま、相手に白紙の小切手を渡してる人が本当に多い。
8. 名無しのReddit住民
弁護士じゃないけど、前の上司が転倒事故の訴訟で負けた理由がひどい。腰は二度と元に戻らないと主張したその2日後に、結婚式で踊りまくってる動画を自分で投稿してた。
※ 転倒事故訴訟=店や施設の床で滑って転んだ責任を問う損害賠償請求。アメリカでは定番の民事訴訟のひとつ。
9. 名無しのReddit住民(>>8への返信)
これ、思ってる何倍も起きてる。保険会社の弁護士が真っ先に相手のSNSを何年分もさかのぼるのには、ちゃんと理由があるってこと。10. 名無しのReddit住民(>>8への返信)
保険会社にいた頃、腰を痛めたと主張してる男がエルビスのものまね芸人として腰を振りまくってる映像を撮ったことがある。しかもステージ衣装フル装備で。
11. 名無しのReddit住民
元彼がケガをして訴訟を起こしたときの話。証言録取の場で、相手側が彼の映るビデオを出してきた。小さな農場みたいな庭で重い作業をこなしている映像で、探偵を雇って尾行させていたらしい。
彼はこう答えた。「それ、双子の片割れです」。腕のタトゥーの有無まで指して自分じゃないと証明した。探偵はずっと双子のほうを追いかけていて、彼のほうは本当にケガをして家から一歩も出ていなかった。証言録取はそこで即終了。全員が帰ったあと、彼の弁護士が5分くらい笑い転げていたと聞いた。
※ 証言録取=法廷外で、宣誓のうえ相手方の質問に答える手続き。ここで撮られた記録はそのまま裁判で使われるので、実質的な前哨戦になる。
12. 名無しのReddit住民
知的障害のある依頼人が窃盗で起訴された。盗癖のある人だった。
裁判官は障害を汲んで「今回は情状を酌んで収監はしない。ただし次に盗んだら、これほど寛大ではいられない」と告げた。依頼人はこう答えた。「はい、分かります。先週の裁判官にも同じことを言われました」
その件はまだ記録に上がっていなかった。もちろん、その一言で好意は全部消えた。責める気にもなれないよ。彼は9歳の子どもくらいの理解度で生きているんだ。
13. 名無しのReddit住民
弁護士じゃないけど、有名な話を聞いたことがある。交通事故の賠償を求めた男が「もう左腕を頭より上に上げられない」と主張した。証言台で相手方の弁護士が「では今、どこまで上がるか見せてください」と言うと、男は苦しそうに胸の高さまで上げてみせた。そこで弁護士が続けた。「では、事故の前はどこまで上がりましたか?」。男は何も考えずに腕を天井まで突き上げて叫んだ。「ここまでです!」
14. 名無しのReddit住民
母が人事にいたんだけど、大企業は労災の請求が出ると普通に探偵を雇う。それで「痛くて働けない」はずの人が、自宅の屋根を張り替えていたり農場で干し草を運んでいたりするのが見つかる頻度がめちゃくちゃ高いらしい。
※ 労災補償=仕事中のケガに対して治療費や休業補償が出る制度。アメリカでは保険会社や企業が調査に相当な費用をかけることで知られている。
15. 名無しのReddit住民
弁護士じゃないけど、妻が渋滞を抜かそうとセンターラインを越えてきた車に横から突っ込まれた。二人が路上で怒鳴り合っていたので、警察を呼んだと伝えて止めた。そしたら男は即座にトランクへ走って、松葉杖と足の固定具を取り出してきた。警官が着いた頃には「ケガをした」と言い張ってたよ。
法廷では、これ見よがしに足を引きずって入廷。持ってきた「証拠」は自分でタイプしたワード文書で、いちばん上に大文字で「病院の請求書」。中身は「足首骨折…2000ドル」「精神的苦痛…8000ドル」みたいな箇条書き。おまけに事故現場から1ブロック離れた、車線が2本になる別の交差点の写真まで添えてきた。
裁判官は男に1万2000ドルを認めた。判決の直後、男は松葉杖を床に投げ捨てて「そうこなくっちゃ!」と叫んだ。
評決後に裁判官席へ行って「どういうことですか」という顔をしたら、こう言われた。30分後にもっと重い人身事故の審理が入っていて、あの男に苛立っていた、と。ちなみに自分にこんな幸運が回ってきたことは一度もない。
※ 1万2000ドルは日本円でおよそ180万円。
16. 名無しのReddit住民(>>15への返信)
待って、それ負けた側からしたら悪夢でしかない。捏造した請求書と関係ない交差点の写真で通るなら、真面目に証拠を揃える意味はどこにあるんだ。裁判官の本音がいちばん怖いよ。
17. 名無しのReddit住民
ある女性が、不当に監禁されたとして警察を訴えた。理由は完全な言葉尻で、工事区域をふさぐ形でわざと停めた車を動かすよう伝えに来た警官が、玄関先に立って一瞬だけ彼女の出入りを妨げた、というもの。
裁判は長引いた。途中で警察側は「これで手を引いてくれ」と3万ドルの和解を提示した。
だが彼女には足りなかった。控訴した。結果は敗訴、そのうえ30万ドルの訴訟費用を背負うことになった。
18. 名無しのReddit住民(>>17への返信)
似た案件を扱ったことがある。時速3キロの接触事故で、車の損害は150ドル未満。なのに「手首をひねった精神的衝撃が大きすぎて第一志望の大学に受からなかった」という主張つき。捻挫の診断書すらないのに。保険会社は6万ドルで手を打とうとしたけど、本人は将来の逸失利益まで含めて30万ドル以上を要求した。
敗訴。取り分はゼロ。州立大学に借金なしで通えたのにね。19. 名無しのReddit住民(>>17への返信)
3万ドルもらえたのに全部ドブに捨てたのか。それにしても、負けた側が相手の弁護士費用まで負担する仕組みは他人事ながら背筋が冷える。国が違えば「とりあえず訴えてみる」のコストが桁違いなんだな。
※ イギリスやオーストラリアでは、敗訴した側が勝訴側の弁護士費用も負担するのが原則。「訴えて負けても弁護士費用は各自持ち」が基本の日本やアメリカとは、リスクの重さがまるで違う。
20. 名無しのReddit住民
離婚の財産分与に「負ける」という言い方はしないんだけど、この男の場合はそう呼んでいいと思う。彼は「自分は献身的な父親で、3人の子ども一人ひとりと親密で愛情深い関係を築いているのだから、妻と同じ広さの家が必要だ」と主張していた。
妻側の法廷弁護士が立ち上がって、子どもたちの好きな色は、通っている学校は、学校で何の科目を取っているか、外食するならどこがお気に入りか、と順に尋ねていった。
彼は何ひとつ答えられなかった。一人の年齢すら間違えた。なぜ親密な関係だと言えるのかと問われて、彼はこう答えた。「弁護士にそう言えと言われたので」
※ イギリスでは弁護士が「事務弁護士」と「法廷弁護士」に分かれていて、依頼人と打ち合わせをするのは前者、法廷で尋問するのは後者。つまり彼は、打ち合わせ担当に授けられたセリフを法廷担当に崩された形になる。
21. 名無しのReddit住民
テキサスでの話。検察側が「その犯罪がこの郡で起きた」ことの立証をまるごと忘れていて、重罪事件で弁護側が勝つのを見た。事実関係は何ひとつ争われていなかったのに、だ。
※ アメリカの刑事裁判では、その事件を扱う権限が裁判所にあること、つまり犯罪がその郡の中で起きたことも検察が証明すべき要件のひとつ。中身がどれだけ真っ黒でも、これを立証し忘れれば通らない。
22. 名無しのReddit住民
勝ちと負けが同じ事件に同居していた例。軽微な罪で量刑を待っていた依頼人が、酔っぱらって出廷した。前後不覚というほどではないけど、明らかにろれつが回っていない。手続きはほぼ終わっていて、裁判官が「何か言いたいことは」と尋ねたら、依頼人は「なあああい」と返した。飲んでいると気づいた裁判官は大いに不機嫌になり、量刑を翌日に延期してこう言い渡した。「明日も酔って現れたら、スーツケースを持ってくることだ。そのまま刑務所に行ってもらう」
翌日、私は出廷したが依頼人は姿を見せない。順番は最後まで回され、その日はやけに機嫌のよかった裁判官が、私には口が裂けても主張できないことを言った。「まあ、私は酔って来るなとは言ったが、来いとは言っていないな」。ごく軽い処分で終わった。
23. 名無しのReddit住民(>>22への返信)
裁判官にも「今日はもう人のくだらない話に付き合う気力がない」という日があるってことだよね。人間味があって嫌いじゃないけど、それで結論が変わるのは考えると怖い。
24. 名無しのReddit住民
引退した弁護士だけど、原因はひとつ。みんな黙るべきときに黙れないから。黙るなんて簡単なことなのに、それができるだけで人生はずいぶん楽になる。犯罪者は絶対に黙るべきだし、取り調べを受けている人は聞かれたことにだけ最短で答えて黙るべき。そして私の必殺技でもあるんだけど、弁護士は流れが自分に向いた瞬間にコンマ1秒で黙るべきなんだ。黙れ、もう勝ってる、裁判官が相手を追い詰めてる、だから黙れ。
25. 名無しのReddit住民(>>24への返信)
「黙秘する権利はあったのに、黙る能力がなかった」というやつだね。あれ、笑い話にされてるけど本当に多くの人が同じ穴に落ちてると思う。
26. 名無しのReddit住民
弁護士じゃないけど、右手に何かを持って運転していたとして切符を切られた人のことを思い出す。その運転者には四肢の欠損があって、そもそも右手が存在しなかった。
作り話みたいに聞こえるけど、警官のボディカメラの映像がちゃんと残っていて、それがまた最高なんだ。
27. 名無しのReddit住民(>>26への返信)
黒騎士の逆バージョンだ。
彼女「スマホを持てるわけがないでしょう。私、腕がないんですから」
警官「いや、あるだろ」
※ 『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』で、両腕を切り落とされてなお「かすり傷だ」と言い張る黒騎士のくだり。ここでは「腕がない」と言う本人に対して、外側が事実を認めないという逆転になっている。
28. 名無しのReddit住民
政治集会の警備員が暴行で起訴された。弁護側の主張は、被害者たちは集会を妨害しようとした政治活動団体のメンバーで、建物に強引に押し入ろうとした際に自分でケガを負ったというもの。
被害者側はそれを全面否定した。ただし、その団体のバッジとステッカーを身につけて出廷してきた。
弁護人が自分の恩師だったので傍聴していたんだけど、裁判官が検察官にそのバッジを指摘した瞬間、危うく吹き出すところだった。
29. 名無しのReddit住民
以前カナダで検察官をやっていた同僚から聞いた話。相手は無免許・無保険・ナンバープレート期限切れの女性で、自分は「主権市民」だと名乗って弁護人を付けずに出廷した。
これまでで一番わけの分からない事件だったそうだ。彼も裁判官も、審理時間のほとんどを「この人は何の話をして何を引用しているのか」の解読に費やした。手続きのルールは何も理解していないのに、自信満々かつ見下した態度で独自の法理論を並べ立てる。根拠を示せと言われると鼻で笑って目を回すだけ。要するに、意味も分からないまま呪文みたいに唱えていただけだった。
当然、負けた。刑自体は軽かったはずだけど、判決後にキレすぎて法廷侮辱で捕まったらしい。
※ 主権市民=「自分は国家の法律に従う義務を負わない」と主張する欧米の運動。独自解釈の法律用語を並べれば法的効力が生まれると信じている点が特徴で、法廷ではほぼ100%通用しない。
30. 名無しのReddit住民
昔ある弁護人に聞いた話。依頼人が帰宅途中に車を停められ、警察は通報を受けていて、本人の同意を得て車内を捜索し、シフトレバーの根元のカバーの下から大量のコカインを見つけた。
弁護人は、被告が一度も所持を認めていないこと、車は数人で共有していたことを陪審に印象づけた。さらに通報者は薬物の量と隠し場所を正確に指定していた。つまり隠した瞬間にその場にいた人物であり、仕込んだ可能性もある。完璧ではないけれど、合理的な疑いを差し込む窓はいくつか開いた。
ところが被告はどうしても証言台に立つと言い張った。弁護人はほぼ確実に悪手だと止められるが、最終的に決めるのは本人だ。
そして検察官の反対尋問。「あなたが車の所有者ですね」「はい」「あの夜、運転していましたね」「はい」「警察に停められましたね」「はい」「車を降りるよう命じられましたね」「はい」「あなたはそれに従った」「はい」「適法な命令だと分かっていたから従ったんですね」「はい」「警察は捜索の許可を求めましたね」「はい」「あなたは許可した」「はい」「シフトカバーの下までは見ないだろうと思ったから許可したんですね?」「はい」
「以上です、裁判長」
まとめ
並んだ話を見ていくと、勝敗を決めているのは証拠の強さでも弁論の巧みさでもなく、当事者が自分で開けた穴ばかりだと分かります。オキシコンチンを否定してオキシコドンと言い直す、腰を壊した2日後に踊る動画を上げる、上げられないはずの腕を全力で上げる。共通しているのは「聞かれてもいないことに答えてしまう」という一点で、24番の引退弁護士が語る「黙れ」はスレッド全体の結論でもあります。
もう一方の軸は、中身と関係のないところで結末が動いてしまう不気味さです。書類を放置しただけで負ける、郡内で起きたと言い忘れただけで重罪が消える、裁判官が次の予定に苛立っていただけで1万2000ドルが動く。手続きは公平さを担保するための仕組みなのに、その手続き自体が事実を追い越してしまう瞬間がある。日本の裁判は書面主義が強く、こうした「その場の一言で全部ひっくり返る」場面は起きにくいと言われますが、素人が思いつきで話し始めた途端に不利になるのはどこの国でも変わらないようです。
皆さんがいちばん「これで負けるのか」と思ったのは、どの話でしたか?

コメント