公開当時は絶賛されたのに、あとから出てきた事実のせいで見え方がまるで変わってしまったドキュメンタリー映画はどれか。海外の掲示板でこう問われ、撮影の裏側がばれた名作から、出演者の素顔を知ってしまった今では直視できない作品まで、続々と名前が挙がった。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
Kony 2012は公開1週間で賞味期限切れになった。あれは最速記録だろ。
※『Kony 2012』(2012年)は、米国の団体インビジブル・チルドレンが公開した約30分のネット動画。ウガンダの武装組織「神の抵抗軍(LRA)」の指導者ジョゼフ・コニーを捕まえようと訴え、数日で再生回数が億単位に達した。直後から内容の単純化や団体の資金の使い道に批判が集まり、ブームは急速にしぼんだ。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
Kony 2012は、1週間だけ注目したアメリカ人に誤解されてると思う。評判よりずっと影響があったんだよ。ウガンダは10年以上アメリカに軍事支援を頼んで断られ続けてたのに、あの動画で米議会がほんの少しの間だけ本気になって、支援を増やす決議が通ったと言われてる。そのあとLRAの幹部が何人も殺されてて、そこには米情報機関も関わってたらしい。
俺は2005年、Kony 2012の7年前にインビジブル・チルドレンの連中に会ったことがある。最初の動機がどうだったにせよ、取り組む価値のある問題を見つけてたのは確かだった。LRAにさらわれた子どもは5万人とも言われてるからね。10年近く誰にも見向きされずに地道にやって、やっとアメリカが一瞬だけ気にかけた。その一瞬で、大きくはないけどゼロでもない変化が起きたのに、今じゃネタ扱いしかされない。ちょっと悲しいよ。3. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
俺はコニーに投票したんだけど、当選しなかったんだよな。
※ 動画のポスターが「KONY 2012」と大統領選の選挙ポスター風のデザインだったことにかけたジョーク。
4. 名無しのReddit住民
『Bigger Stronger Faster*』に、ステロイドの危険性を聞かれたジョン・ロマーノが「死人がどこにいるのか見せてくれよ」と返すシーンがある。ボディビルとか筋力系スポーツの界隈にいる人なら分かると思うけど、ここ数年、比較的若い選手がかなりの数亡くなってるんだよ。
映画自体はそこまで古びてない。でもあの一言だけは、牛乳みたいに腐ったね。
※『Bigger Stronger Faster*』(2008年、原題)は、米国のスポーツ界に広がる筋肉増強剤(ステロイド)の問題を、監督クリス・ベル自身の兄弟の話も交えて描いたドキュメンタリー。ジョン・ロマーノは作中に登場するボディビル界の論客。「牛乳みたいに腐った(aged like milk)」は、時間がたって評価が下がったものを指す英語の決まり文句で、ワインのように熟成するものの逆。
5. 名無しのReddit住民(>>4への返信)
23歳の若者がパグみたいにゼーゼー息してるのを見たら、さすがに「これ良くないかも」って思いそうなもんだけどな。6. 名無しのReddit住民(>>4への返信)
子どもの頃からずっとプロレスファンやってる。こっちの世界も、亡くなった人が本当に、本当に多いんだよ。名前を挙げ出したらきりがない。
7. 名無しのReddit住民
『スーパーサイズ・ミー』は当時としてはすごくよくできたドキュメンタリーで、俺の世代で保健の授業で見せられなかったやつなんてほとんどいないと思う。
でもさ、あとからモーガン・スパーロックがあの頃ひどいアルコール依存だったって分かって、全部が一気に色あせた。マクドナルド漬けの食事が体に悪いのは当たり前としても、肝臓がアル中みたいな状態になったってくだりは、要するに……本人がアル中だったからで説明がついちゃうんだよ。
※『スーパーサイズ・ミー』(2004年)は、監督のモーガン・スパーロックが30日間マクドナルドだけを食べ続け、体調の変化を記録したドキュメンタリー。アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。スパーロックは2017年に、長年飲酒をやめられずにいたことを自ら公表している。
8. 名無しのReddit住民(>>7への返信)
主張のど真ん中に関わる情報を隠してる時点で、それはよくできたドキュメンタリーとは言えないと思うけどな。9. 名無しのReddit住民(>>7への返信)
俺は公開された時から嘘くさいと思ってた。当時ちょうど1年近く毎日ファストフードを食べてたんだよ。実家を出て一人暮らしの1年目で、料理なんかしなかったから。みんなに「あれ見た?」って聞かれて「全部でたらめだと思う」って答えると、なぜか怒られた。何年もたって、体調不良の原因がマックじゃなくて酒だったと知った時は、やっと報われた気がしたね。
10. 名無しのReddit住民
『When Louis Met… Jimmy』は、ルイ・セローが国民的な人気者で、しかも自分の子ども時代のヒーローでもあったジミー・サヴィルと一緒に過ごす番組なんだ。
厳密に言えば「悪く古びた」とは違う。でもサヴィルがとんでもない怪物だったと後から分かって、全体の見え方がまるっきり変わった。
今見返すと、あいつがどれだけ人を操るのがうまかったかがよく分かって、興味深いと同時にぞっとする。サヴィルは撮影の間ずっとセローと制作陣を手玉に取って、心底楽しそうにしてる。本性を隠すために作り上げた「ちょっと変わり者だけど愛すべき善人」というキャラを、さらに固めるために利用されてるだけなのに、誰ひとりそれに気づいてない。
見ていて本当に居心地が悪い。
※ 英BBCで2000年に放送された作品(原題)。ルイ・セローは英国の人気ドキュメンタリー作家。ジミー・サヴィルは長年BBCの看板司会者を務め、慈善活動でも知られた人物だが、2011年の死後、数百件にのぼる性的虐待の訴えが明らかになり、英国最大級のスキャンダルとなった。
11. 名無しのReddit住民(>>10への返信)
続編のドキュメンタリーもあるよ。サヴィルの死後、セローが昔の撮影素材を見直して、告発の中身や、サヴィルの身近にいた人たちを取材していくやつ。目の前で起きてた危険信号の多くに気づけなかったことを、ルイ本人がすごく悔やんでるように見えた。12. 名無しのReddit住民(>>10への返信)
でもルイって、番組の中で例の噂のこと本人に聞いてなかったっけ?そこまで何も気づいてなかったわけじゃない気がするんだけど。
13. 名無しのReddit住民
『26世紀青年』。予言になっちゃったという意味で、悪い方向に古びた。
※『26世紀青年』(2006年、原題 Idiocracy)は、冬眠実験で500年後に目覚めた平凡な男が、人類が極端にバカになった未来で「世界一賢い人」になってしまうSFコメディ。ドキュメンタリーではなく劇映画。
14. 名無しのReddit住民(>>13への返信)
映画の中の人たちはバカだけど、自分たちがバカだって分かってるし、状況を良くしたいと思ってて、主人公の言うことをちゃんと聞いて前に進もうとするんだよ。
つまり映画の世界のほうが、今の俺たちよりマシってこと。
15. 名無しのReddit住民
このスレ、ドキュメンタリーって何なのかをおさらいしたほうがいい人が何人いるんだ?さっきから普通の映画がちらほら混ざってるぞ。
16. 名無しのReddit住民(>>15への返信)
『26世紀青年』が上から3番目くらいに来てて、白目むくくらい目を回したわ。
こういうスレが好きで嫌いな理由がまさにそれ。毎回「ドキュメンタリーじゃないけど」「ドキュメンタリーじゃなくて映画だけど」って前置きのコメントが必ず出てくる。
17. 名無しのReddit住民
『ボウリング・フォー・コロンバイン』。あれは広く絶賛されたけど、時間がたつにつれて主張の多くが崩されて、不誠実な編集もばれちゃったんだよね。
※『ボウリング・フォー・コロンバイン』(2002年)は、マイケル・ムーア監督が1999年のコロンバイン高校銃乱射事件を入り口に、米国の銃社会を描いた作品。アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した一方、発表当初から編集や事実の扱いについて批判も多かった。
18. 名無しのReddit住民(>>17への返信)
マイケル・ムーアの作品全般に同じことを感じてる。俺はかなりリベラル寄りなんだけど、それでもあの人の作り方は好きになれない。言いたいことに合わせて素材を並べてる感じがどうしても気になるんだよ。
19. 名無しのReddit住民
『皇帝ペンギン』。行進なんてしてない、ただのヨチヨチ歩きだった。かわいさは10点満点、振り付けは0点。
※『皇帝ペンギン』(2005年、原題 La Marche de l’empereur、英語版題 March of the Penguins)は、南極の皇帝ペンギンが繁殖地まで何十キロも歩いて移動する様子を追ったフランスのドキュメンタリー。アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞。英語の題の「March」は「行進」の意味。
20. 名無しのReddit住民(>>19への返信)
しかも撮影したのは3月ですらないっていうね。タイトル詐欺が二重になってるじゃん。
※ 英語の「March」には「3月」の意味もあることにかけたジョーク。
21. 名無しのReddit住民
『白い荒野』。レミングについて、世界中に間違った知識を植え付けた自然ドキュメンタリーだよ🤦🏻♀️ ディズニーもあれは本当にやらかしたと思う。
※『白い荒野』(1958年)は、ディズニーの自然記録映画シリーズの一作で、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した。レミング(タビネズミ)が集団で崖から海へ飛び込む場面が「集団自殺」として広く知られるきっかけになったが、1980年代にカナダの報道番組が、撮影班がレミングを崖から追い落として撮っていたと指摘した。レミングが集団自殺するという話そのものも、現在では俗説とされている。
22. 名無しのReddit住民(>>21への返信)
無抵抗の生きたレミングを、バケツ5杯目くらいで崖から放り投げてるあたりで、普通は「あれ、俺たちって悪役なんじゃね?」って気づきそうなもんだけどな。
23. 名無しのReddit住民
『極北のナヌーク』。ドキュメンタリーを名乗ってたけど、映ってることのほとんどが演出なんだよ。今の感覚だと完全にアウトだと思う。
※『極北のナヌーク』(1922年)は、ロバート・フラハティ監督がカナダ北部のイヌイットの暮らしを撮った、記録映画の古典。撮影のために当時はもう使われていなかった昔の狩りのやり方を再現させるなど、演出が多かったことが知られている。
24. 名無しのReddit住民(>>23への返信)
ナヌークは別の意味で大事な作品なんだよ。今でも大学でしっかり教材として扱われてる。民族誌映画っていうジャンルは、フラハティがあれでほぼ作ったようなもんだからね。
それに、カメラが入らないから撮れない場面もある。たとえばイグルーの中とか。演出か嘘かって話は、当時の撮影事情も込みで考えないとフェアじゃないと思う。
25. 名無しのReddit住民
『オリンピア』。ナチスが作った1936年ベルリン五輪のドキュメンタリーだよ。撮り方は今見ても驚くほど上手いんだけど、誰が何のために作らせたかを考えると素直に褒められない。
※『オリンピア』(1938年)は、女性監督レニ・リーフェンシュタールがベルリン五輪を撮った記録映画で、日本では『民族の祭典』『美の祭典』の二部作として公開された。映像技術は高く評価される一方、ナチス政権の宣伝に使われた作品でもある。
26. 名無しのReddit住民(>>25への返信)
『オリンピア』にも価値はあるよ。ジェシー・オーエンスの映像って、目にするものの大半があの作品からなんだ。
※ ジェシー・オーエンスは、ベルリン五輪の陸上で4個の金メダルを獲得した米国の黒人選手。
27. 名無しのReddit住民
いい回答が多いけど、『ツァイトガイスト』シリーズを覚えてる人いる?「2つの本当と1つの嘘」ってゲームがあるけど、あれはルールを「1つの本当と50個の嘘」に変えたみたいな代物だった。
※『ツァイトガイスト』(2007年〜)は、ネットで無料公開されて広まったドキュメンタリー風の映画シリーズ。宗教や9・11、金融をめぐる陰謀論的な主張が中心で、事実関係の誤りが多く指摘されている。
28. 名無しのReddit住民(>>27への返信)
うわ、懐かしい。友達がこれと『超次元の成功法則』に一緒にハマっててさ。でたらめを一個ずつほどいていくのが、ほんとにほんとに疲れた。特にきつかったのが「アメリカ先住民にはコロンブスの船が見えなかった」ってやつ。
※『超次元の成功法則』(2004年、原題 What the Bleep Do We Know!?)は、量子力学を引き合いに「意識が現実を変える」と説く米国のドキュメンタリー風映画。物理学者などから科学の誤用だと批判された。「先住民には見たことのない船が見えなかった」という話は作中に出てくる逸話で、裏付けのある史料は確認されていない。
29. 名無しのReddit住民
Netflixの『FIFA Uncovered』。ゼップ・ブラッターの汚職スキャンダルを追った作品なんだけど、最後にインファンティーノ会長の新体制を持ち上げて「もう大丈夫です」みたいに締めるのが笑える。見事に牛乳みたいに腐ったよ。ボスが変わっても中身は同じ、ってやつだね。
※『FIFA Uncovered』(2022年、原題)は、Netflixで配信された国際サッカー連盟(FIFA)の汚職問題を追うドキュメンタリーシリーズ。ゼップ・ブラッターは2015年の汚職スキャンダルで退いた前会長、ジャンニ・インファンティーノは後任の現会長。
30. 名無しのReddit住民
『スパイナル・タップ』。最近見返したか分からないけど、あのバンド、結局ちょっとバカっぽく見えちゃってるんだよな。ボリュームのつまみを「11」まで上げて、もう一回見てみてくれ。
※『スパイナル・タップ』(1984年、原題 This Is Spinal Tap)は、架空のロックバンドのツアーを本物のドキュメンタリーのように撮ったロブ・ライナー監督のコメディで、「モキュメンタリー」の代表作。目盛りが11まであるアンプを自慢する場面が有名。バンドがバカっぽいのは最初からそういう作りなので、このコメントはそれを分かったうえでの冗談。
まとめ
挙がった作品を並べると、「古びた」理由は大きく3つに分かれた。ひとつは、作り手が都合の悪い事実を隠していたもの。『スーパーサイズ・ミー』の飲酒や、『白い荒野』のレミングがそうで、「主張の中心に関わる情報を隠したらよくできたドキュメンタリーとは言えない」という返信がいちばん的を射ていた。ふたつめは、映っている人物の素顔があとから分かったもの。ジミー・サヴィルの番組は、作品の出来は変わらないのに、見る側の知識が変わっただけで「居心地の悪い記録」になってしまった。三つめは、映画の中の一言が現実に追い越されたもの。「死人がどこにいるのか見せてくれ」や、FIFAの新体制を褒める結末がこれにあたる。一方で、『Kony 2012』や『極北のナヌーク』のように、「笑い話にされているけれど、実際には意味があった」と弁護する声も出ていたのが面白い。ドキュメンタリーは「本当のこと」を映すと思われがちなぶん、あとから裏切られたときの落差も大きいのかもしれない。皆さんは、昔信じていたのに今見ると気まずくなったドキュメンタリーはありますか?

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