言いたい。でも、診察室では言えない。海外掲示板に「医師のみなさん、患者に伝えたいのに胸にしまっていることは?」という質問が立ち、小児科医、ICUの責任者、病理医、精神科の研修医といった現場の人たちが、ふだん飲み込んでいる本音を書き込んだ。親は子どもに「ダメ」と言っていい、という耳の痛い話もあれば、看取りをめぐる重い話もある。なお、書き込みはどれも投稿者個人の意見や体験談で、医療上の助言ではない。気になる症状や治療のことは、かかりつけの医師に相談してほしい。
元スレッド:r/AskRedditより
海外の反応
1. 名無しのReddit住民
小児科医として言わせてほしい。親なら、ちゃんと「親」をやってくれ。画面を見てる時間が長すぎると思う? なら、その端末を取り上げればいい。子どもがおなかを痛がる? じゃあTakis(タキス)を取り上げて。夕飯を食べずにお菓子ばかり? だったら、そのお菓子を買うのをやめてくれ!
子どもに「ダメ」と言っていいんですよ、と親御さんに伝える場面が、1日に何度あることか。数えると気が遠くなるよ。
※ Takisは、筒状に巻いたトルティーヤチップスの激辛スナック菓子。米国の子どもたちに人気がある。
2. 名無しのReddit住民(>>1への返信)
小児歯科医だけど、まったく同じ。「親としてちゃんと向き合ってください」なんて、とてもじゃないが言えない。本当のことを伝えると親が怒って、口コミに低評価を書かれるからね。だから何でも砂糖をまぶしたみたいに甘く言い換えることになる。それが心底いやなんだ。
あと、4歳の子に「今日、虫歯の治療できそう?」と聞く親。朝のシリアルがいつものと違うだけで、この世の終わりみたいに泣く年頃の子だよ。健康に関わる判断を、本人に決めさせちゃだめだって。
追記:はい、歯医者が「砂糖をまぶす」と書いたのは、わざとです。※ 米国などでは、医師や歯科医院も口コミサイトで星の数を付けられ、その評価が患者集めに影響する。
3. 名無しのReddit住民
大学病院でICU(集中治療室)の責任者をしてる。
患者さんにも、同僚にも、ご家族にも言いたい。命には終わりがある。もっと言えば、終わりがあるべきなんだ。
つい先週、92歳の女性が運ばれてきた。家族と少し散歩をしたあとで、心臓が止まったんだ。心不全で肺に水がたまっていて、その最後の散歩が、残っていた力を全部使い切らせた。具合が悪くなって引き返すと、彼女は「ソファまで連れて行って」と頼んだ。横になって、目を閉じて、そこで心臓が止まった。晴れた日に、自宅のソファで、大切な人たちに囲まれて。
ところが、看護師でもある親族の女性の考えは違っていて、心臓マッサージを始めた。やがて救急車が呼ばれた。
今、彼女はうちのICUにいる。生きてはいる。でも薬で眠らされて人工呼吸器につながれ、蘇生のあとの重い脳の損傷があって、背骨は2か所が完全に折れている。もう1週間近くこの状態なのに、ご家族はまだ「最大限の治療」を続けるかどうかを話し合っている。難しいのは、呼吸器を外せばすぐ静かに逝ける、という状態でもないことだ。何時間も苦しい時間が続いて、最後は知らない人たちに囲まれた、私の冷たいICUで息を引き取ることになる。
自宅で、これ以上ない最期を迎えられたはずだった。それを、ひとりの「勇敢な」看護師が奪ってしまった。とっさの場面で慌てる気持ちは分かる。それに、必要とあれば、心臓だけは何年でも動かし続けられる。
でも、あの病室の前を通るたびに、恥ずかしさで中に入るのをためらってしまう。医療の技術は、医療の倫理よりずっと速く進んでしまった。
だから、お願いだ。命は終わる。終わるべきものなんだ。お年寄りを、逝かせてあげてほしい。
4. 名無しのReddit住民(>>3への返信)
いま担当してる患者さんが、まさにそれ。こっちは病院のソーシャルワーカーなんだけど、その90歳の女性は認知症と心不全のほかにも持病がいくつもあって、ホスピスに移るのがふさわしい状態なんだ。でも息子さんがDNRを拒んでいて、ホスピスにも移らせない。緩和ケアやホスピスの話を誰かが出すと、「嫌がらせだ」と言われてしまう。
彼女は毎週のように再入院していて、とうとう透析まで始まった。体はもう疲れ切って限界なのに、息子さんが「できる治療は全部」と望むから、穏やかに過ごせる時間がまったくない。
自分の医療について代わりに決めてもらう人は、慎重に選んで。それと、望む治療は書面に残しておいてね。※ DNRは、心臓や呼吸が止まったときに蘇生処置を行わないという、本人や家族の意向にもとづく指示。ホスピスは、治すための治療よりも苦痛を和らげることを優先して、最期の時間を支えるケア。米国には、判断できなくなったときに備えて医療の代理人を指名し、望む治療を書面(リビング・ウィル)に残す仕組みがある。
5. 名無しのReddit住民(>>3への返信)
ああ……。完璧で美しい最期が、取り上げられてしまったんだな。
自分も、心不全の母のことで、その決断をしなきゃいけなくなった。その当日の朝、母はこっちより先に、自分でさっさと旅立ってしまったよ。昔から何でも自分の流儀でやる人だったから、いかにも母らしかった。
朝は雨だったのに、息を引き取る頃には日が差して、鳥が鳴いてた。母にとって完璧な一日。最後まで、母のやり方だった。
6. 名無しのReddit住民
理学療法士の立場から患者さんに言いたい。体のあちこちが痛いのは、30歳になったからじゃない。恐ろしいほど動かない生活をしてるからだ。16歳のときにトップレベルの選手だったとしても関係ないよ。何年も座りっぱなしでいれば、筋肉は誰でも同じように衰える。
「もう少し定期的に体を動かすと楽になるかもしれませんよ」とやんわり言っただけで、ものすごい勢いで反論されるんだ。みんな、原因は「年のせい」であってほしいんだよね。一日中座ってるせい、じゃなくて。
7. 名無しのReddit住民
「シートベルトをしていればよかったのに」
「あんなに酔ってたら、運転なんて無理だったよ」
「今はつらくても、きっと良くなるから」
どれも、患者には言ってあげられない。私は病理医で、その人たちを解剖する立場だから。
8. 名無しのReddit住民
言いたいことを並べると、こうなる。
1. 抗生物質はウイルスには効かない
2. せっけんと水で、もっと手を洗おう
3. ワクチンはひととおり受けておく
4. 赤道の近くに住んでいる人でもなければ、ビタミンDを補うといい人は多い
5. 毎食後に10分歩く
6. 目覚まし時計で起きてるなら、睡眠が足りてない。そこを直そう
7. 主治医がいいと言うなら、週に2回は筋トレ
8. 自分をすり減らす人間関係からは離れる。あれは本当に命を削ってる
9. たばこも電子たばこも吸わない。お酒は控えめに
10. 看護師さんには優しく!
追記:4番については、まず主治医に相談してビタミンDの値を調べてもらって、自分に合った助言をもらってほしい。
9. 名無しのReddit住民(>>8への返信)
11. 食物繊維をもっと食べる。いや、それより多く。違う、もっとずっと多くだ。
10. 名無しのReddit住民
精神科の研修医です。不安やうつを抱えてる人の中には、単純に、人生そのものがきつすぎるのが原因だという人がいる。親から子へ引き継がれてきた心の傷、自己愛の強い親やパートナー、苦しい暮らし向き、子どもの頃に受けた暴力。そういうものを治す薬は、私の手元には無い。あればいいのにと、本当に思う。そんな目に遭ってるのは気の毒でならないよ。
でもね、あなたに本当に必要なのは、カウンセリングのような心理療法なんだ。私が出した抗うつ薬で解決しないからって、いら立ちをこっちにぶつけても、誰のためにもならない。
11. 名無しのReddit住民(>>10への返信)
こっちは薬剤師。私はいつも、薬は「道具」だと説明してる。つらい記憶の根っこに向き合うとき、体の反応に押し流されてしまわないよう支えてくれる道具。ただし、向き合う作業そのものや、自分と折り合いをつけることまで、薬が代わりにやってくれるわけじゃない。
ドライバーを部屋に置いておくだけで、家具がひとりでに組み上がるとは思わないでしょ? 逆に、ドライバーが無ければ家具は絶対に組み立てられない、とも言わないはず。
今の自分をそのまま受け入れて、壊れたかけらを拾い集めて、さあ取りかかろうと決める。それ抜きで乗り越えた人は、一人もいない。簡単じゃないよ。でも最後のところで自分を助けるのに何より必要なのは、自分自身なんだ。12. 名無しのReddit住民(>>10への返信)
夫の暴力がひどくなっていった頃の話。大酒を飲んでは、終わりの見えない言い争いを吹っかけてきて、こっちを眠らせてくれない。何を言っても、何をしても、納得してくれなかった。そんな日が何日も続いて神経が張りつめてたから、夫が家で使ってる血圧計で自分の血圧を測ってみたんだ。とんでもない数字が出た。
受診したら、かかりつけの先生はこう言った。「血圧の薬は出しません。あなたは健康ですから。あなたに必要なのは、ご主人と別れることです」。
チャック先生。本当に、はっきり物を言う人だった。
13. 名無しのReddit住民
カイロプラクターには、絶対に首を触らせないで。
※ 米国のカイロプラクターは、専門の課程を出て州の免許を受け、背骨や関節を手で調整する施術を行う職種。医師とは別の資格にあたる。ここでの批判は、投稿者個人の意見。
14. 名無しのReddit住民(>>13への返信)
訂正させて。「カイロプラクターには、絶対に体を触らせないで」。
必要なのはマッサージ師か、理学療法士か、リハビリテーション科の医師のどれかだよ。カイロプラクターが正解になる場面は、自分に言わせれば文字どおり0%だ。
15. 名無しのReddit住民
みんな、お題の「胸にしまってること」の部分を忘れてない?
自分の場合は、患者さんの家族が吹き込んでくる怪しい医療アドバイスだね。「それ、信用しちゃだめです。ご家族、どうかしてますよ」と言えたらどんなにいいか(笑)
実際の診察では、義理の姉妹の娘さん(看護師になりかけた人らしい)が言ってたというでたらめに、うんうんとうなずいてることが多い。本当に害がありそうな話が出てきたら、そこは口を挟んでちゃんと説明する。それ以外は、好きにしゃべってもらってるよ。
16. 名無しのReddit住民
うちの父の話。2型糖尿病をきちんと治療も管理もしてこなかった人が、いざ結果を突きつけられて口にする「何でもします」を聞くのが、とにかくしんどいらしい。
「食事を見直して、運動を始めましょうって、何年も言ってきたんだ。その人が今になって、足を失わずに済むなら何でもします、と言う。こっちは何年も、何年も伝えてきたのに。それでもLサイズの甘いアイスティーを飲みながら診察に来てたんだぞ」って。
17. 名無しのReddit住民(>>16への返信)
その「何でもします」は、「慣れきった今の生活を変えずに済む、楽なことなら何でもします」って意味なんだよな。
18. 名無しのReddit住民
ウェルネス業界には、あなたに嘘をついてる人が大勢いる。本当に、大勢。そして、そう、その人たちは自分が勧める「自然療法」でしっかり儲けてる。
追記:最近、Netflixのドラマ『Apple Cider Vinegar』を見た。すごくおすすめ。ただ、見ていてものすごくつらくもあった。登場する女性たちのうち何人かが、私の患者さんたちとまったく同じ道をたどるから。偽りの治療法が効かないと分かって、「普通の」医療に戻ってくる。そこで、治すための治療はもう受けられないと知って、怯えて、悲しんで、怒る。がんが治せない段階まで進んでしまったからなのに、「先に自然療法を試したせいで、医者に罰を与えられてるんだ」と思ってしまうんだ。
※ 『Apple Cider Vinegar』(原題)は、2025年に配信されたNetflixのドラマ。がんを食事や自然療法で治していると偽っていた、オーストラリアの実在のウェルネス系インフルエンサーの騒動をもとにしている。
19. 名無しのReddit住民(>>18への返信)
医者になりたての頃に診た患者さんがいる。心臓発作を起こす前に、心臓の病気を見つけてあげられた人だ。それから何年もたって、彼は自然療法士のところへ行き、今飲んでる「毒」(要するに薬のことだ)は全部やめて、6000ドルのデトックスプログラムを受けなさい、と言われたらしい。
戻ってきた彼に、こう指摘しておいたよ。私は15年間あなたを生かし続けてきたけど、その間に払ってもらった額は、全部合わせても6000ドルに届いてませんよね、って。※ 自然療法士(ナチュロパス)は、ハーブや食事療法などの自然療法を行う施術者。6000ドルは1ドル150円換算で約90万円。
20. 名無しのReddit住民
心臓の薬について説明してる間、ずっとうなずきながら聞いてくれてた男性がいた。で、説明が終わったとたんに聞かれたんだ。「これ、エッセンシャルオイルに替えてもいいですか?」。
あのとき飲み込んだ怒りで、胃が痛くなった。叫びたかったよ。でも声は落ち着いた「プロらしい」調子のまま。言うべきことと、実際に口から出ることの間には、とてつもない距離がある。
21. 名無しのReddit住民(>>20への返信)
抗がん剤治療を終えたあと、ある女性に言われた。「エッセンシャルオイルのことを先に知っていたらよかったのに、残念ね。あんな“化学物質”を体に入れずに済んだのに」。
だから聞き返したよ。「いい香りのする遺体って、最近の流行りなの?」
22. 名無しのReddit住民
現役の医師です。ある患者さんを助けようと、ひと晩じゅう付きっきりだった。何時間も容体が崩れ続けて、まさに悪夢。ようやく何が起きているのかを突き止めて、状態を落ち着かせた。もう命は大丈夫だ。
その間じゅう、付き添っていた患者さんのお子さんは、私を無視するか、見下した態度を取るかのどちらかだった。信じられなかったよ。私の前に4人の医師が対応を頼まれていたのに、実際に動いたのは私だけ。一睡もできなかったけど、それは構わない。それが自分の仕事で、務めだから。ただ、あの敬意のなさは相当こたえた。
言ってやりたかった。「今はあなたの意見を聞いてる場合じゃないんです。病院の決まりには従ってください。それと、だめです、感染力のとても強いあの病室に、ガウンも着ないで入らないでください!」って。
でも言えなかった。親が生死の境にいる人にそんなことを言えば、自分のプライドのために言ってるようにしか見えないからね。全力を尽くして、その人の親の命をつないでる最中にああいう扱いを受けるのは、正直、はらわたが煮えくり返る。それでも毎日は続いていく。敬意を払ってくれる人は数えきれないほどいるんだ。たった一人のせいで、この仕事への気持ちが揺らぐことはないよ。
23. 名無しのReddit住民
これは患者さんじゃなくて、同業の医師たちに言いたい。若い女性の訴えを、若いというだけで軽くあしらうのはやめてくれ。いつも不安やストレスのせいとは限らないんだ。残念なことに、乳がんや子宮頸がん、それにさまざまな自己免疫の病気と診断される若い女性を、今ほど多く見る時代はなかったと感じてる。深刻な症状と不安を抱えて来た人がいたら、本当に手遅れになる前に、ちゃんと動いてほしい。
24. 名無しのReddit住民(>>23への返信)
ありがとう。こういう見方が命を救うんだよ。それに、患者に本当に不安障害やうつがあっても同じこと。心の病気がある人だって体の病気にもなるのに、なぜかその可能性はほとんど考えてもらえない。
若い女性の一人として書いてる。私の不安は、実は免疫の問題が引き起こしてたんだ。ほかにも原因の分からない、日常生活に差し支える症状が山ほどあったのに、何年も誰にも真剣に取り合ってもらえなかった。20代になって、生まれて初めて「普通の人の不安のレベル」を体験してる。まだ慣れない。
不安だけを治療しても、少しましになる程度だった。でも大もとを治療したら、電気のスイッチを切り替えたみたいに変わったんだ。ああいう状態で生きるのが普通だと思ってたし、不安が消える日が来るなんて期待もしてなかった。自分は根っこから壊れてるんだと思ってたから。薬はもともと慢性の炎症を抑えるためのもので、実際そっちにも効いたんだけど、それにしたって驚いたよ。え、ほぼ一日じゅう怯えていなくてもいいって、どういうこと?!
25. 名無しのReddit住民
麻酔科の研修医として、手術前の準備室で患者さんに言いたかったことがある。「今すぐ帰ってください。この外科医にだけは、体を触らせちゃだめです」。
あともうひとつ。一部の格安の保険会社は、治療に必要な手続きをわざと引き延ばす。そのせいで結果が悪くなった患者さんがいるのは間違いないと思ってる。とくに、がんの治療でね。
※ 民間の医療保険が中心の米国では、検査や治療の前に保険会社の承認が必要になることが多く、承認待ちで治療の開始が遅れる場合がある。
26. 名無しのReddit住民
絶対に口には出さないこと、でいいんだよね?
「それ、ご自分で招いたことですよ」
27. 名無しのReddit住民(>>26への返信)
何年か前、かかりつけの先生に片方の足首が腱の炎症だと診断されたとき、「足首に負担がかかる原因に、何か心当たりは?」と聞かれた。「たぶん、太ってるのと、エレベーターなしの3階に住んでるせいですね」と答えたら、先生の眉毛がおでこのてっぺんめがけて一直線に上がっていったよ。太ってる患者のほとんどは、その事実も、自分の習慣が原因だということも、認めたがらないんだろうな。
28. 名無しのReddit住民
妻に言われて、考え方がすっかり変わったことがある。妻は、ある程度の年になったら自分は必ずDNR(蘇生処置を受けないという意思表示)に署名する、と言うんだ。
もちろん、医師が患者にそう言うべきじゃない。きわめて個人的な選択だし、助かろうとするのをやめろと人に迫るなんてできないからね。それでも妻は、蘇生処置で体をぼろぼろにされたあげく、ひどい苦しみの中で数週間だけ生きる人たちを見てきた。あれは本当にむごい、と。
29. 名無しのReddit住民
人の体は教科書じゃないし、医学は答えがきっちり出る科学でもない。できる検査を全部やって、根拠にもとづく指針に従って、使える治療を片っ端から試しても、症状のはっきりした原因が見つからないことはある。いつもなら効く治療が、その患者さんには効かないこともある。
だからって諦めるわけじゃないよ。ただ、はっきりした言葉では説明できないことがあるんだ。ひと振りで何もかも良くなる魔法の杖は、こっちも持ってない。
30. 名無しのReddit住民
がんの専門医です。人は希望にすがるものだ。私は現実的な見通しを伝えるけれど、その治療が効くかどうかは、自分の中ではそれなりの確度で分かっている。いちばん効果の高い治療をしても助からない、と分かっていることも多い。
とくに患者さんが若くて(10代後半から20代前半を思い浮かべてほしい)、何かを強く試したいと願うとき、私たちはその願いを尊重する。心の奥では、残された時間が長くないと分かっていても。
本人に隠しごとをしてるわけじゃないんだ。希望が、人を少し長く生かすこともあるから。
まとめ
いちばん多かったのは、生活習慣について本人や家族に言いたくても、角が立つので飲み込んでいる話だった。子どもに「ダメ」と言っていい。体が痛むのは年のせいではなく、座りっぱなしだから。食事と運動のことは何年も伝えてきた。重かったのは蘇生や延命をめぐる話で、ICUの責任者やソーシャルワーカーが、治療を続けることが本人のためになっているのかを問いかけていた。高額な自然療法や家族の又聞きのアドバイスなど、診察室の外から入ってくる情報へのもどかしさも並んでいる。
ただ、矛先は患者だけに向いていない。若い女性の訴えを軽く扱う同業者への苦言や、「医学は答えがきっちり出る科学でもない」という告白もあった。言えない理由も、「口コミに低評価を書かれる」「自分のプライドのために言っているように見える」「きわめて個人的な選択だから」とさまざまだ。保険や口コミ評価など、海外の医療事情が背景にある話も含まれるので、日本にそのまま当てはまるとは限らない。どれも現場にいる個人の意見や体験談として読みたい。
日本でも、もしものときに望む医療やケアを元気なうちに家族と話し合っておく取り組みが、「人生会議」の愛称で呼びかけられている。皆さんは、医師に「本当のところ」をはっきり言ってほしいですか? それとも、やんわり伝えてほしいですか?

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